194.秋の実り③
「宜しくお願いします!」
リリーは元気にオリバー様に礼をする。
「リリー様、こちらこそ、宜しくお願いします」
模擬剣を構えて向き合う。
王子ジェイバー戦とは異なり、どちらも動かない。
アシュトンやエルム王子は前陣速攻型の、特攻隊長タイプだ。
自ら切り込みに行ってチャンスを作ろうとする戦法。
反して、オリバー様とリリーは基本守備耐久型の、返り討ちタイプだ。
相手が放ったものを切り返す際にカウンターを狙う戦法。
ふたりとも、相手の出方待ちなので、初動が遅いのだ。
リリーはさてこれでは進まないぞと考え、構えを変えた。
「ヤッ!」
模擬剣(木刀)をレイピアに見立て、オリバー様の手首を一直線に突きに行った。
勿論躱されるが、躱して軌跡がぶれた手を追い、更に払う。
そこで狙いを手首から変え、開いた脇を薙ぎにかかる。
しかしそう簡単に打たれてはくれず、後ろへステップを踏んだオリバー様に上手く避けられ、剣は宙を切った。
「むむぅ」
大柄なジェイバーやアシュトンと比べ、オリバー様は細身で身軽だ。
まるで自分と戦っているような気さえする。
剣術だけではなかなか剣が身体に届かない。
リリーは一度オリバー様から離れた。
深呼吸してから口を結び、助走をつけて間合いを詰める。
大きく踏み切って身体を捻り、空中回し蹴りの構えに入った。
踵から蹴り切るがそれも背を反らして避けられ、片足がまたしても宙を切る。
しかし、身体を起こしたオリバー様に、もう片方の踵が肩に入った。




