176.薬草探し①
その時。
部屋の扉がノックされ、王女達は世話役に呼ばれた。
そろそろ支度をして、国に戻らねばならないのだ。
「リリーさん、ピンゼル様。
お話を伺って、リリー様の領地で蔓延してしまった病は、我が国からもたらされたものである可能性が高いようです。
それにつきまして、大変申し訳なく思っております。
その上で、厚かましいお願いをして本当に申し訳ないのですが…
どうかもし、この熱病に対処する方法が見つかりましたら、我が国にも教えて頂けないでしょうか。
たくさんの人が助かります…」
アン王女が逡巡しながらも、声を絞り出すようにお願いをする。
「私からもお願いよ。家臣の中には、その熱病で家族を亡くした者もいるの。もし治るものなら、そんな人を減らしたいわ」
エールトベール王女からもお願いされる。
もちろんリリーはYes一択!
「任せて下さい! もし、クソニンジンで作ったお薬が、熱病に効いたら、絶対にお伝えします!
お薬も、届けられたら届けます!」
まだ何も解決できてはいないのに、仰け反って胸を張り、自信満々に答えた。
王女達は支度のために部屋に戻ることになり、王子は最後まで見送りをする義務があり、城に残る必要がある。
ピンゼル様はまだ滞在していて良いそうだ。
リリーは3人にお別れを伝え、ジェイバー、ピンゼル様と共に、クソニンジンを探しに出掛けることにした。
王子からは、多分伝染病ではないのだろうが、何事にも絶対はないので、無理をせず、自分を大切にするよう念を押された。
馬車の用意ができ、ジェイバーから合図を受ける。
王城の門まで歩きながら、リリーが尋ねた。
「ピンゼル様、クソニンジンは、どんな場所で育ちますの?
先日のアカネカズラは、水辺の近くでしたが」
「クソニンジンは逆なんだ。日当たりがよく、水はけも良い場所で育つんだったと思う。
そんな場所に心あたりはある?」
ピンゼル様に聞かれて、ウウーンと考えながら思い浮かぶのはやはり、フルフィールの丘だった。
日当たりが良いなら、森よりも丘や林が妥当な気がする。
育ててはいないだろうから、周りの林や丘のふもとに、あれば良いんだけど…
とりあえず、行かないと分からないので、まずはフルフィールの丘に馬車を走らせた。
マラリアは、実は日本でも古くからあったそうです。
マラリアには和名があり、"わらわやみ"と呼ばれていました。
源氏物語でも、光源氏が罹患したという描写があったとか。
歴史上の人物では、平清盛も罹った逸話があるらしいです。
日本で流行ったマラリアは、三日熱タイプのマラリアで、マラリアの中では比較的死亡率が低く、子供がかかりやすかったことから、童病みと名前がついたと言われています。




