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17.SIDE ジェイバー①

『誕生日プレゼントに舞踏ホール、しかもゴロ寝休憩スペースを併設…』



ジェイバーは、一連のやりとりをみながら、甘やかされた公爵令嬢を絵に描いたような話だと思った。

運動したいと言って建てさせる建物と聞いていたのに、横に寝るスペースを作るなど全く理解できない。



しかも、ベッドではなく床にわざわざ布を何枚も貼って。

金持ちのお嬢様のわがままは意味不明だ。

まだリリーと会って数日だが、ジェイバーはリリーが病弱というのは嘘だと思っていた。



重たいドレスを着て一切ふらつかずに、むしろ素早く動ける。

食事も普通の11歳児と同じように食べる。

それなのに病弱なフリをして、他人の入れない更衣室の中にあんな場所を作るのは、怠けたいからだと思った。



11歳の子供ともあれば仕方ないことかもしれなかったが、騎士として志を高く持ち、鍛錬に励んできたジェイバーにはありえない考えであった。



とても心から守りたいとは思えない。

なぜ俺は、こんな子供のおもりを…




※※※


ジェイバーが産まれたルーフス子爵家は国境近くに領地を持ち、肥沃な農地から作られる作物や山での狩猟などで収入を得ていた。

宝石や金銀を生み出す鉱山などが無い土地だから、贅沢な暮らしはしていなかったけれど、特に不自由はなく家族幸せに暮らしていた。


ところがある日、隣国が突然、前触れもなく攻めてきた。

通常戦争の開始には宣言があり、一応の備えができるものだが、全くの奇襲だった。



戦争なんて何年も経験していない穏やかな土地で、農民達は戦力になるわけもなく、田畑は敵兵に踏み荒らされ、山は火矢で焼かれた。

家族を失った領民もいた。

無事だった領民は山の裏側の洞窟に避難させた。



敵兵団は、国境を越えて子爵家領を陥落させても、なぜかすぐ王都には向かわなかった。

これから戦うための食料を、うちの領民から奪うつもりだったようで、逃げ出して空になった家から食料や金目の物を次々と運び出していた。



その時14歳だったジェイバーは、敵兵に一矢報いるため子爵家当主の父と共に村の倉庫から、ありったけの火薬を集めて移動させていた。



子爵家領から王都に行くためには、必ず崖の下を通る場所がある。

上から火をつけた火薬を落とし、目にものみせてやろうと思っていた。

――――もちろん、ほとんど扱ったことのない火薬を、火をつけて落とすことがどういうことかも、よく分かっていた。

手元で爆発するかもしれない、うまく落とせても、爆発の威力や爆風で、今2人が立っている崖が崩落して一緒に落ちるかもしれない。



それでもやるしかないと思っていた。



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