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165.誕生日パーティ④

リリーの余興は大成功のうちに幕を閉じた。

とりあえず、アズール先生や、ヴェルメリオ先生、ヴィオラさんに叩き込まれた極意を、可能な限りに出し尽くせたと思うので、リリーは満足だった。


そもそもはピンゼル様(&トゥシュカ様)のために特訓したことだったので、予定より披露が遅れたものの、喜んで貰えて良かった。





2つ目の催し物は、ケーキバイキングだ。

これは、リリーの提案で、前の世界で友達と時々行って楽しんでいたシステムを、再現したものだ。



「エルム王子様、13歳のお誕生日、おめでとうございます!!  王子様より、お祝いに駆けつけて下さった皆様へ、ケーキのプレゼントでございます!

こちらをご覧下さい」



司会者の指し示す一角には、いちごのショートケーキ、オレンジのタルト、チョコレートケーキ、バナナのミルフィーユ、ティラミス、クリームブリュレ、りんごのタタン、チーズムース、ミルクレープ、かぼちゃやりんごのパイ包み、モンブラン… 等々のケーキがずらりと並んでいた。



「「「わぁぁぁぁあ!!」」」


我先にと、特に女性と子どもが一斉にバイキングのテーブルに集まった。

舌なめずりをしそうな程ギラついた表情でケーキを見渡す。


ほとんどのケーキやスイーツは、見たことがないものばかりだ。

ましてや、バナナは今回、パレット王国から贈られたばかりの珍品。

初めて見る白くて柔らかそうな果物に、皆興味津々といった雰囲気だ。

もちろん、オレンジのタルトも初お目見えである。

(リリーはバナナが無いということは頭になかったので、当然あるものだと思ってリクエストしていた。たまたまパレット王国から手に入ったため実現した)



逆に、パレット王国では、寒冷地で育つりんごは馴染みがなかったので、王女や世話役はりんごのスイーツに釘付けだ。



「たくさんありますから、順番に、押さないでお取り下さい」


あまりのガッツキぷりに、司会者も若干引き気味ではあったが、リリーも王子も、ケーキバイキングが好評なのは嬉しかった。

シェフに無理言った甲斐があったわ。



周囲に目を向けると、エールトベール王女が、皿に山盛りついで、もりもり食べていた。

アングール王女は、アップルパイを頬張って、幸せそうに眉尻を下げている。


ピンゼル様は、ミルクレープやチョコレートケーキなどの粉ものには目もくれず、オレンジやバナナ等の、珍しい果物が乗ったケーキやタルトから果物だけを抜き取ってテイスティングしている。


その姿は、まるで寿司のネタだけめくって食べているようで、リリーとしては残された半身が可哀想になるのだが、それはもう"セレブ食べ"として目をつぶるしかないと思った。



「皆様、喜んでくれていますね」


リリーが王子に耳打ちする。


「あぁ、苦労して準備して良かった」


王子もホッとして喜んだ。


「それにしても、"バナナ"なんて、よく知っていたね。

僕ですら、王国で食べるのは初めてなんだ。

パレット王国では、わりとポビュラーな果物だから、向こうに滞在したら、必ずヨーグルトと一緒に出てくるよ」



「ハイ、あの… いつか本?で見た気がします」

リリーは苦しい言い訳をしたが、王子はさして疑問に思う風でもなく、減りゆくケーキを満足気に眺めていた。




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