153.魔王降臨⑥
走って行った先は、会場後方の、花瓶が飾られたテーブルだ。
白磁の大きな花瓶に真っ赤な薔薇がたくさん挿されていて、どこから見てもわかるほど目立っていた。
少女はその周りをくまなく調べて、テーブルクロスをめくると、
「あったよ〜〜〜〜〜!!」
そこには、宝石で装飾された白銀の剣が静かに横たえられていた。
「き、キレ〜〜〜〜〜」
どれどれ!?
他の子ども達も、一斉に駆け寄る。
リリー少年も、一緒に駆けつけた。
握り手の部分にアクアマリンが嵌め込まれた、針のような細い剣は、子ども達には馴染みがなく、皆しげしげと眺めている。
もちろんこれは、リリーのレイピアだ。
レイピアは、針先こそ危ないが、刀身に触れても他の剣のように手を傷つけることはないから、ある程度の子どもが触れても大丈夫なのだ。
レイピアを見つけた少女が、駆けつけたリリー少年にレイピアを渡す。
そして、子ども達は、勇気の剣を持ったリリー少年を見てみて、気がづいた。
剣に嵌め込まれている宝石と、リリーの瞳の色が同じだということに。
「やっぱり、この勇気の剣は、この子のものだよ」
「よく似合ってる」
「君が勇者さまなんだ」
リリーが剣を捧げ持つと、剣はリリー少年の手にしっくり馴染み、きらりと光った。
やはり、平民なのに本当かと呟く子もいたが、
その姿をみればリリー少年が勇者であると、皆が納得したようだった。
「ねぇねぇ、名前は何ていうの?」
「リズだよ」
「リズ、頑張ってね!」
「ケガ、しないようにね!」
皆に応援され、ステージに近づいていく。
王子とボンボン貴族ズも、しぶしぶ納得をせざるを得ない様子で、リズを見送った。
舞台に座っていた魔王も立ち上がった。
「グフフフフフ…
勇者が見つかったとか言っていたようだが、なんだ、子どもではないか。
子どもをいじめる趣味は無いが、かかってくるなら容赦はしないぞ」
「ちょっと怖いけど、天使さまを信じて、皆を守るために頑張るよ!」
リズが走り出す。
「頑張れー!!」
「リズーー!!」
リズは壇上に続く階段を駆け上がると、壇上に隠していた踏み台で勢い良く踏み切り、宙高く舞い上がった。




