152.魔王降臨⑤
再び舞台は暗転するが、次に現れたのは光り輝く天使だった。
「子ども達よ」
天使は突然、ステージ前に座る子ども達に語りかけた。
子ども達は驚いて、目をぱちくりさせている。
「大丈夫。私の姿は純粋な子どもにしか見えません。
貴方がただけに秘密を伝えますが、実は、伝説の勇者は子どもなのです。
その清らかな心を持つ子どもこそが、魔王を倒す力を持っているのです。
そして、その勇者は、皆様の中にいます」
天使が、いかにも秘密っぽく子ども達にささやきかけたため、子ども達は一気に色めきたった。
自分だろうか!?まさか!?とざわざわし始める。
「勇者には、おでこにこのような、星印の傷があります」
天使が掌を向けると、手に五芒星の痣があった。
この同じ傷が額にある者が勇者なのだそうだ。
「私は皆様を助けたくて天界から降りてきましたが、そろそろ戻らないといけません。
勇気の剣も、この会場のどこかにあります。
ヒントは、『兄は2階にバニラのある場所』です。
皆様で勇者と、勇気の剣を探して、きっと魔王を倒して下さいね。
この鳥を、私の代わりに置いていきます。
きっと、皆様のお役に立てる筈です。
それでは、さようなら。皆様、頑張って下さい」
そう言うと、天使はきらめきながら去っていった。
後にはなぜか、ニワトリの置物が残されていた。
会場は明るくなり、王子とボンボン貴族ズは、次なる候補者を募っている。
誰も挙手は無い。
シエル様でもダメだったのだから、そんじょそこらの素人には到底無理だとよく分かったのだ。
子ども達はとりあえず、勇者を探すべく、自分のおでこと、隣の子のおでこを見たり触ったりして確認していた。
「あー!! いたー!!」
ひとりの子どもが、目があった小さな少年の手を掴んで挙手をするように持ち上げた。
「この子だーー! 見て〜〜!」
「「「本当だ。天使さまと同じ傷だー!」」」
皆わらわらと少年の周りに集まる。
「えっ!? 僕??」
そこには、心底驚いた風の、額に五芒星の傷がある少年、つまりリリーが手を握られて囲まれていた。
「王子さまぁ! 勇者さま、みつけました!」
子ども達の何人かが手を引いて、王子とボンボン貴族ズを連れてきた。
しかし、リリー少年を見たボンボン貴族が、
「こいつがか!?」
「こんな汚い子どもが勇者なはずがないではないか」
「しかも平民じゃないか、平民が勇者なわけはない」
「どうやって潜り込んだか知らないが、ここから早くつまみ出せ」
と口々に罵った。
リリー少年は着古したシャツとズボンを履いている。
確かに、お世辞にも綺麗な格好とは言えないため、俯いて唇を噛む。
「ちがうよ、本当だもん。天使さまが言っていたもん」
「勇者さまは、おでこに星型の傷がある子だって」
子ども達も負けない。
「へー。天使様と本当に話したなら、勇気の剣の在り処も聞いたんだろうな?
それが無いなら、こんな奴、認めないぜ。
剣を見つけたなら、認めてやっても良いけど、まぁ無理だろうな」
ボンボン貴族ズも大人気なく食い下がる。
「確かに、証拠もなく勇者とは認められないし、ましてや子どもには危ないことなんだ」
王子も子ども達の言葉は信じていないようだ。
「さぁ、シエル殿のように、勇敢に魔王に立ち向かって下さる方はいませんか!?」
子ども達を無視して、再度の呼びかけを始めた。
子ども達は、王子&ボンボン貴族ズの説得を諦めて、勇気の剣の在り処を考えることにした。
自分達が天使さまや勇者を証明するためには、なんとしても勇気の剣が必要だからだ。
「うーん…
"兄は2階にバニラ"の場所…
ぜんぜん意味がわからないよ…」
「なぜ、2階にバニラ…」
「兄??」
「にわとり??」
皆、目玉と頭が疲労している。
「うぅ〜〜〜ん…
"あにわにかいにばにら"と"にわとり"の意味…」
にわとり…
に わ と り …
「あぁっ!! 分かった〜〜〜〜!!」
ひとりの少女が、ある花が置かれたテーブルに向かって一目散に駆け出した。




