145.公子達とのお別れ①
翌日は朝食を王城で頂いた後に、公爵家別邸に戻ることになった。
「リリー、トゥシュカ様とピンゼル様は、明後日に公国に戻られることになったよ」
朝のフレンチトーストに、大好きなはちみつをたっぷりかけていたリリーに、王子が言った。
「そうなんですね。 寂しくなります」
フォークを置いてピンゼル様に目をやり、眉を下げる。
「リリー、それなら一緒に帰ろうよぅ」
ピンゼル様が甘えた声で口を尖らせる。
「ふふっ また会えますよ。今度は私達が公国にお邪魔するかもしれません」
リリーが言えば、ピンゼル様はにこにこして
「待ってるよ! 絶対だよ!」
と言った。
「それで、明日の夜は、また晩餐会をするんだ。
初日に催したような、国中の貴族を招く程盛大なものではないけど、城の幹部や上位の貴族達は列席すると思う。
その席で、リリーの歌を歌ってくれないかな。
公子達も聴いてみたいらしい」
「そうだよ、リリー。僕があんな事言ったから…
一生懸命練習してくれてた舞台を台無しにしちゃって、本当にごめんなさい」
ピンゼル様は項垂れて謝る。
リリーは隣に手を伸ばして頭を撫でると、
「いいえ、謝らなくても良いですわ。
あの時積んだ練習は、違う形で私の身になり、力になっています。
ピンゼル様も、これから色んなものに触れて、音楽を楽しめるようになりますから」
と言い、
「でも、エルム王子様、私、お別れの宴の余興は歌よりも、試してみたいことがありますの。
任せて頂けませんか?」
と聞いた。
「えっ? 歌や音楽でなく??」
「ええ。 ダメでしょうか」
「いや、ダメではない…。
リリーのことだから、きっと僕が思いもつかないものなのだろうな。
いいよ、父様に頼んでみるから、後で内容を教えてね。
何か準備するものはある?」
「はい。それも一緒にお伝えしますね」
リリーもにっこり笑って、秘密の作戦を練り始めた。
「何だろ??楽しみ!!」
「そうだね。帰る日を考えるのは少し寂しかったけど、明日が楽しみになったな」
ピンゼル様とトゥシュカ様が顔を見合わせて笑う。
さぁ、2人を盛大に送り出さなくては。
王子に内容と準備と、できれば他に招待して欲しい人を伝えた。
王子は驚いていたが、僕も楽しみにしていると言って、王様の執務室に向かって行った。
公爵家別邸に戻ったリリーは、服を着替えてすぐに出発した。
買い物にも行かなきゃいけないし、忙しくてなりそうだ。
リミットまで1日半あるから、なんとかなるだろう。




