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132.一時帰宅①

「お嬢様、お久しぶりでございますぅぅぅ」


公爵家別邸では、ジニアがすごい表情で出迎えてくれた。

考えてみれば、完全アウェーな場所に2泊3日はかなり鬼畜だったのではと気づき、抱きつくジニアの背を撫ぜる。


「ごめんなさいね…」



「いえいえ、お嬢様は、他国の来賓の方々からどうしてもと請われての滞在と伺っております…

さすがは我がお嬢様で、それはそれは名誉な事だと分かっているのですが、私が勝手に寂しくて…」


ジニアは15歳、まだまだ多感な時期なのだ。




今朝は公爵家の私室で、ジニアも一緒に遅い朝食をとることになった。



話すことがたくさんあり、ジニアは顰めっ面をしたり涙を流したりと百面相をしながら一生懸命聞いてくれた。

悪漢との戦闘シーンは薄く濁し、ほぼトゥシュカ様の活躍ということにした。



「はぁ〜! 本当に、濃い日程でございましたね。

ご無事で何よりでしたが…」


冷めきったスープをやっと口にしたジニアがため息をつく。



「今日は1日、こちらでゆっくりと過ごされるのでしょうか?」



「今日はちょっと、劇団の方に用事があるの。

また、ジェイバーを連れて行くわね」



「またジェイバーですか… 」

ジニアがジト目でジェイバーを一瞥してから、


「ちゃんと仕事をして、お嬢様をしっかり守りなさいよ」

と言った。


さっきの悪漢バトルシーンに、実はジェイバーが登場していなかったことを気づいていたらしいジニアが、口を尖らせた。



ジェイバーはトゥシュカ様からピンゼル様を任されていたのだが、言い訳はせず、黙って頷いた。





「そういえば、もうすぐお嬢様の12歳のお誕生日ですね。

あれから1年経つだなんて、月日が経つのは早いことです」

ジニアが言えば、


「あらま、そうだったかしら。

王子も誕生日が近いように言っていたけど、本当に1年ってあっと言う間だわ」

と驚いた。


リリーはまだ百合子の誕生日の方が記憶に強く、リリーの誕生日がいつなのか、今ひとつ認識が薄い。

加えて、王子の誕生日がいつなのか、実は知らないのだ。





食事が終わってひと休みしてから、出発の準備を始めた。


門の所でふと思いつき、ジニアに声をかける。


「明日は多分、お出かけになるから、ジニア、貴方もいらっしゃいな。

せっかく王都に来たのに、ずっと別邸だけじゃ、つまらないでしょう」



「えっ!! 良いんですか!」

ジニアが目を輝かせる。



「楽しみに、お帰りをお待ちしております」

ジニアに見送られて、劇団の稽古場に向かった。





「本当にするんですか…」

稽古場に近づいてきた所で、ジェイバーが珍しく口を開いた。

いつになく自信が無さそうにうなだれる。



「えぇ、大丈夫。むしろ、貴方にしかできないわ!」



劇団に着くと、アズールさんを始め団長さん、ヴィオラさんと子ども達が、

「待っていたよ! リリー、ジェイバーさん!」

キラキラした瞳で、リリー達を出迎えた。



久々に死んだ魚の目をしているジェイバーが、今回の用事の最重要人物だった。


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