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131.リリーの娯楽作り③

リリーはまず、ババ抜きのルールを説明した。

"ババ抜き"はなんとなく、あらぬ誤解を招きそうなネーミングだったので、"Joker Game"という名前で紹介した。



これなら、7才でも理解しやすい。

はじめは、リリーとピンゼルはチームを組むことにした。


リリー&ピンゼルチーム、エルム王子、オリバー様、ジェイバー、トゥシュカ様でババ抜きを始める。


「なるほど、ペアになったら捨てるんだね」



やりながらピンゼル様もルールを分かってきたようだ。



ジェイバーは、3枚の中で1枚だけ飛び出したトゥシュカ様のカードを引くか悩んでいる。

もう、心理戦は始まっていた。


「ぐっ…!」


どうやら、今はジェイバーがJokerを持っているらしい。




ゲームは進み、エルム王子とオリバー様の一騎打ちになっていた。



「ウゥム… どっちだ!?」


今はエルム王子が、オリバー様に残された2枚のカードから1枚を選ぶ所だ。



とりゃ!


カードを抜き取り、


「やったぁぁぁぁ」


ガッツポーズで咆哮を上げる。

オリバー様に勝てたことが、余程嬉しいらしい。



その様子を生暖かく見ていたら、王様、王妃様が現れた。


「賑やかで楽しそうだな」



次のゲームでは、王様が加わった。

リリーと王妃様は応援に回る。



皆の駆け引きを面白く観戦していると、王妃様が声を掛けてきた。



「本当に、貴方には驚かされます。

晩餐会では軽業や見事な踊りを見せたかと思えば、昨日は悪漢を相手に引けを取らない戦いぶりだったとか。

そして今日は、新しい遊びで、御客様を楽しませてくれています。


小さな頃のイメージとは、全く違う姿なのね。

本当は、病弱な貴方に王子妃が務まるか、ずっと不安に思っていたのだけれど、安心致しました。


王子も、昨日の一件から少し表情が違うようです。

歳が近い2人だから、切磋琢磨してお互いが高められる、良い間柄になられると感じました。


これからも、王子を宜しくお願い致しますね」



王妃様の微笑は鋭くて、リリーは何と返すのが正解か分からず、眉を下げて目を伏せた。



「勿体無いお言葉ですわ。

私は病弱な身体を克服したくてがむしゃらに努力した結果、自分でも変な方向に向かった感は否めません。

淑やかさや教養、思慮の無い私が、王子妃に向いているかどうかの自信は正直な所ございません… 」



「まぁ。 その謙虚な姿勢も好ましいわ。

ローレンスには、感謝をしないとね」


王妃様は、話はこれで終わりね、という雰囲気を出して話を切り上げ、ババ抜きの行方を静かに見守った。





リリーはこの後、他のゲームは無いかと聞かれ、神経衰弱と七並べ、ポーカーを説明することになった。




ピンゼル様を寝かしつけた後は、男性陣だけで夜遅くまでポーカーが盛り上がったらしい。


リリーは翌日に予定があったので、早めに休ませてもらった。



翌日は朝から雨だった。

ジェイバーと久しぶりに公爵家別邸に戻るため、王城の門前でピンゼル様とお別れする。



「今日は雨で外遊びができませんが、明日晴れたらお出かけを致しましょう。

どこに行きたいか、考えていて下さいね」


リリーが不機嫌なピンゼル様を撫でながらそう話すと、



「分かった。

今日は王子が王城の図書館を見せてくれるらしいから、行きたい所とかも調べてみる」



案外すんなりと了承してくれた。

王子とも普通に話せるようになり、だいぶんと、おりこうさんになっているようだ。



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