表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/325

129.リリーの娯楽作り①

朝食を食べ終わってひと息つくと、すかさず


「今日はどこ行く〜?」



ピ、ピンゼル様…!

昨日の今日でどこかへ出掛けようだなんて貴方…

しかも何か天気が怪しいし…



さすがに少しは休みたいリリーが困惑していると、トゥシュカ様が、



「今日は皆も疲れているし、王子は昨日の報告や今後の調整があるだろうから、王城の中でゆっくりしてはどうかな」

と助け舟をくれた。



そういう所…!

リリーは心の中で天を仰いで顔を覆った。



「えー。でも、リリーと一緒ならどこでも良いや。

何して遊ぶ〜?」

ピンゼル様はにこにこしてリリーを見る。



「う、うーん…  トランプ? とか?」



「「トランプ??」」

聞いたことのないらしい皆が聞き返す。



そうか! 

室内遊びの定番だと思ってたけど、ここにはトランプが無いんだ…



リリーはざっくりトランプのカードと遊び方について説明した。

皆は興味津々で、ぜひやってみようという結論に達する。



「リリーは本当に色々知っているねぇ。

僕もだいぶん本を読んでいるけど、リリーが前に作ってくれた料理も、トランプなんていう遊びも、見たことがないよ」

ピンゼル様が感心したように言う。



「私は小さな頃から病弱で、いつも部屋で本ばかり読んでいたので、たまたま珍しいことを知っているだけですわ…」

苦しい言い訳だったが、皆は納得してくれたようだった。





「では、僕はひとまず父様の所に行ってくるから、カードができたらオリバーに連絡を頼む」


エルム王子まで乗り気なので、トランプは何と、カードから手作りをすることになった。



トランプの材質としては、柔らかすぎる薄い紙でなく、ダンボールのように厚すぎる紙でもない、絶妙な紙が向いている。



そういう話をすると、トゥシュカ様が、ラピス公国から持ってきた荷物の中に、宣材用の紙がたくさんあるから、そこから選ぼうと言い出した。




ラピス公国にとって今回の外遊は、ピンゼル様のワガママ旅行が主目的ではあるが、表向きは軍備、警護組織の視察としていた。


だから、その方面に長けたトゥシュカ様が付き添いに選ばれたのだ。



そして、クルール王国としては、自国の軍務組織に関する形態や鍛錬内容、武具や武器の整備等を一部開示する代わりに、

ラピス公国の布や紙を安価に交易できるような取引をしたり、製本技術などの提携を行うことになっていた。


そのために、ラピス公国は紙や布の見本品や試作品をたくさん持参していた。




その余りものの中から、トランプに合った材質の紙を探そうというのだ。




そうと決まれば善は急げとばかりに、ピンゼル様、トゥシュカ様、ジェイバーを連れ立って、紙と布が積まれた宣材資料の倉庫になっている部屋に向かう。



そこには本当にたくさんの種類のものがあった。

中には向こうが透けて見えるような紙があったり、鮮やかな色や模様が印字された紙があって、リリーは見るだけで楽しくなる。



布も、すべすべした生地のものから、もこもこした毛織物まで幅広くあり、素敵な服が仕立てられるんだろうと想像しながら手にとる。



リリーは昨日の衝撃を忘れて、この紙は何から作られて何に使われるのか、この布はどんな服が向いているのか等をトゥシュカ様やピンゼル様に聞いては嘆息していた。



ハッ!!



いけない。

トランプ用の紙を選ばなくては。



リリーは本来の目的を思い出して、紙の束を探し直した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ