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128.リリーの苦悩

リリーは、百合子だった時を含めて、彼氏がいたことはない。

(婚約者は別)


〇〇君カッコイー!!と、友達と騒いだり、目があった、席替えで隣の席になったと言ってキャーキャーするぐらいの、曖昧な状態が心地良く、楽しんでいた。


告白して振られるとか付き合うみたいに、決定的な行動には出なかったし、告白されたことも無かったのだ。




王子と婚約していると知った時、王子妃なんて荷が重いとか、自分が好きになった人と恋愛できないというデメリットを嫌だなぁと思う反面、

定められたまま過ごせば、惚れた腫れたのイザコザや恋愛の駆け引き(?)、万一にも振られる胸の痛みを味わわなくて良いというメリットも、内心感じていた。



そんなリリーに、トゥシュカ様が直球ストレートの告白をしてきたのだ。

全部、リリーの容姿ではなく、中身を大切に思ってくれていた。つまり、百合子丸ごと好きと言われたのだ。

嬉しくない筈がないと言うか、いや大変嬉しくて先程からベッド上をひたすら丸太回転し続けているのだが、立場や王子のことを考えると、どう返答すべきか分からない。




「ぬぉぉおぉぉ… 」



最後に枕を抱いて不気味な呻き声を上げながら、意識を手放した。

(リリーも疲労が限界だった)










コンコンコン…



コンコンコン!



コン!コン!コン!!!




早朝、けたたましいノックで叩き起こされた。



「リ〜リ〜〜〜〜〜〜〜

起きてる〜??

朝だよ、遊ぼう〜〜〜!!」



も… もうちょっと寝かせて…



リリーは久々にそう思ったが、扉の向こうから強大な陽の圧力を感じて、諦める。



瞼が重すぎて開かず、まともに頭も働いていないが、根性だけで起き上がった。





王城にはジニアがいないので、今日の支度は王城の侍女たちがしてくれる。

もともと泊まる予定ではなかったから、服や着替えは持ってきていなかったけれど、今日は身体を締め付けるドレスは着られそうにないと伝えると、サイズピッタリの柔らかなワンピースを着せつけてくれた。


湯浴みも済ませてふわふわの髪は、今日は下ろしてもらった。

これなら、楽に過ごせそうだ。





朝食のためのダイニングホールに着くと、皆はもう揃っていた。

トゥシュカ様の顔は、さすがに見ることができない。




「おはよう、リリー。 体調は大丈夫?」

エルム王子から気遣われて何故か気まずい気持ちになる。


「はい。全然、元気いっぱいです!」

そんなわけないが、空元気をふりまいた。



「今日の朝食は、焼き立てスコーンだよ」


やったー!! スコーン大好き。 ラッキー♫



「今朝、公爵邸(別邸)から届いたんだ」


ブフォッ




父様からの、

"朝食を一緒に食べる筈だったのに"

という無言のメッセージが聞こえる…




せっかく湯殿で温まっていた身体が一気に冷たくなったが、

公爵邸の美味しいスコーンを食べているうちに忘れ、なごやかな朝食となった。



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