122.急襲者②
「トゥシュカ様!」
「ピンゼルは無事に見つかったよ」
トゥシュカ様は小声でリリーにそう言うと、受け止めた棒を掴み、グンッと自身に引き寄せてから向こうにズドンと押しやった。
「ァアッ…!!」
棒芯は胸を突き、男はぱくぱくと口を動かしている。
握る力が弱まった棒を手から引き抜くと、男の肩に勢いよく振り下ろした。
ドグッ!!
「っつ!!!」
バシッッ
肩を押えて蹲る男を、更に箒で掃くように横へ払って薙ぎ倒し、起き上がりかけていた男(リリーに眉間を蹴りつけられた奴)に衝突させる。
「うわっ!!」「ぎゃっ!!」
見事に折り重なって倒れた。
男達がもごもご蠢くが、すぐには起き上がれない。
「リリー! リリー!!」
そこに、涙を流しながらピンゼル様が飛び込み、リリーの所に走り込んできた。
「ピンゼル様! まだ危ないですよ、来てはなりません!」
リリーは言うが、ピンゼル様はリリーに駆け寄り、腰に抱きつく。
同時に、ジェイバーとオリバー様も到着した。
「ジェイバー!」
「リリー様!! これは… 」
2人は状況を把握すると、早速悪漢の片付けに入った。
さすが騎士らしく、まずリリーが1番最初にボディブローを決めた男が逃げ出そうとしていたのに気づいて一閃加えて倒し、他の転がっている悪漢達も死なない程度に斬り伏せて縛り上げた。
オリバー様が座り込んだままのエルム王子に駆け寄る。
「王子! ご無事でしたか!!」
「あ… ぁぁ… 」
王子は護衛に支えられてやっと立ち上がる。
「リリー、 僕は… 」
泣きそうな顔、震える足でリリーに向き直る。
リリーはしがみつくピンゼル様の肩を優しく押して自分から引き離すと、エルム王子の傍に静かに寄り、
王子の震えている手を包み込んで両手で引き寄せた。
そして…
王子から離れた護衛Aの腹にリリーが肘鉄を突き刺すのと、
トゥシュカ様が護衛Bの首に手刀を繰り出したのは、
ほぼ同時だった。
「リリー様!?」「トゥシュカ様!?」
ジェイバーとオリバー様が叫ぶ。
「「あぁ、この2人も、彼らのお仲間なんだ(ですわ)」」
ほぼ同じタイミングで口に出し、お互いに顔を見合わせた。




