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116.エルム王子のお悩み相談

「リリー、待たせたね」


エルム王子の執務室に案内され、対面に座る。

王子はやはり顔色が優れないし、声に元気がない。



何から話そうかとリリーが逡巡していると、先に王子が口を開いた。



「ピンゼル様を任せっきりにしてしまい、本当に済まないと思ってる」

うなだれて謝られた。



「えっ!? いえいえ、そんな、頭など下げてはいけませんわ。 ピンゼル様は、その… 少しワガママな所がありますが、素直で可愛い方ですよ」


慌ててフォローをする。



「僕の何かが気に障ったようで、今朝なんかは目も合わせて貰えなかったよ。

理由が分からないから、どうしたら良いのか分からなくて、本当に困っているんだ」


夕方の朝顔くらい萎れている。


「リリーのことは気に入ってるみたいだから、つい甘えてしまって…   ごめんね」



「私は全然構いませんわ。弟のように思っておりますもの。


えっと、、エルム王子様。ピンゼル様が、王国観光をしたいそうなのです。

その際にはエルム王子様も同行されることは承諾されています。

ご許可は頂けるでしょうか?」



「えっ! 本当? 僕も一緒に行って良いのかい」

王子の顔がパァァァと明るくなった。



「勿論です。私はご存知の通り、ほとんど観光名所などを知りません。

王子に案内して頂くの、楽しみですわ」


リリーが言えば、王子は少し表情を曇らせた。



「多分、外出許可は出るけど、どこに行ったら喜んでくれるのか…」



王子は自信を失っている…


仕方ないなぁ〜



リリーは王子と、観光のしおり作りを手伝うことにした。





そして帰り道、劇団アルビレオの稽古場に顔を出した。


無理をして熱を出し、それこそ観光巡りをすることになってから皆に会えてなかったので、お礼も言えていなかったのだ。



「アズール先生〜! ヴィオラさん!」

リリーの声に、アズール先生とヴィオラさん、子ども達が集まってきた。



「リリーさん、どうだった!?」

心配と期待の入り混じった表情で聞かれる。



「えーっと… 」


どうしよう。

そういえば、あそこまでして貰ったのに、まさか結局歌っていないなんて、非常に言いにくい。



「歌は、残念ながら諸事情で披露できなかったのですけれど、オーケストラの皆様には褒めて頂いたので、多分仕上がりはバッチリですわ」


よく分からないまま強引にまとめ上げた。



「本当に、先生方にはご無理を言いまして、申し訳ありませんでした。お陰様でとても良く歌えるようになりました。

あ、ホールでヴェルメリオ先生にもお褒め頂きましたよ」


とにかくお礼が伝えたかったので、やや無理矢理ながら完遂できて満足だ。

持ってきていたお礼の品と、謝礼をお渡しする。




「あと、これはちょっと相談なのですが… 」


リリーは2人に、突拍子もないことで申し訳ないのですが、協力して欲しいことがあるのです… と、今日もうひとつの用事について話してみることにした。



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