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101.晩餐会の前②

リリーは、というか百合子は、昔からタイプの人は決まっていた。


基本インテリ系、しかし実は隠れ体育会系男子だ。



成績が学年主席のガリ勉君が、クラス対抗スポーツ大会でダンクシュートを決めた時なんか、コロッと落ちてしまう。



とにかくギャップに弱いのだ。

リリーになって、基本見た目通りの周辺人物に囲まれていたからスッカリ忘れていたが、先程は久々の衝撃に、突然雷に打たれたようだった。





しかし、公爵家別邸に戻ったリリーは湯浴み、ハーブオイルマッサージ、爪磨き、ドレスアップ、ヘアアレンジ、化粧… と怒涛の磨き上げ作業の波に飲まれ、とりあえずそれどころではなくなった。



髪型は、幼さを強調するために頭頂部でゆるくまとめたお団子ヘアに後れ毛を下ろす。

チョーカーの代わりに、リボンを首に巻いて、後ろでちょうちょ結びにされた。

ドレスは明るい黄緑で若草色のふんわりとしたものだ。

菜然寶頌は自然が主題であり、木々のイメージ色であるのと、エルム王子の瞳の色に合わせたドレスカラーだった。


耳元でキラキラ揺れるイエローダイヤモンドが、何となく昼間に見た男性の瞳を思い出させる。



「あら、お嬢様、少しばかりお顔が赤いような気が致しますね。お熱がおありでしょうか…」

ジニアが心配してくれるが、体調に問題はないので慌てて否定する。



「あと2時間で始まると思うと緊張して…

この日のために皆を巻き込んで協力して貰って、本当に迷惑をかけているもの。

失敗するわけにはいかないわ」


それは本当にその通りで、顔は熱くても指先はずっと冷たいままだ。

試合や演劇で観客の前に立つことは慣れているはずの百合子だって、国賓を迎える晩餐会なんて出たことがない。


緊張しないなんてことはないのだ。



「いいえお嬢様。失敗なんて、絶対に起こらないとは思いますが、でも万が一、どのような結果になっても、お嬢様が一生懸命取り組まれたこの時が、無駄になることはありません」


ジニアが力づけてくれる。



さあ、迎えの馬車が着いたようだ。

口から出そうな心臓を押さえて、馬車に乗り込む。



まだ空は青く、街の活気もある頃だ。

窓からみる景色で緊張を逸らしながら、王城へ向かった。



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