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いつも誤字報告本当にありがとうございます。
とても助かっております。
Sランクダンジョン80階層で≪同時混合発動≫というスキルを手に入れた。
これは同じ魔法を同時に幾つも発動する事もできるし、違う属性の魔法を混合させて発動する事もできるというスキルだった。
同時発動できる数は今の所はっきり確認できていないが、多分魔力が続く限りって感じ?
それよりも炎と竜巻でファイヤストームかとか、雷と竜巻と雨でテンペストか等と、ゲームでお馴染みの最強魔法を発動したところを思い浮かべてロザリアンヌは興奮していた。
そしてそれと同時に、そんな魔法を使っていったいどんな強敵と戦うのだろうと考えていた。
Sランクダンジョンを踏破した探検家達の情報では、そんな魔法を使わなければならない程の強敵など居ないと思われた。
だとしたらいったい何故こんなスキルが存在するのか、ロザリアンヌには理解しがたかった。
もしかしてテンペストをダンジョンの外で発動させて、この国に災害級の嫌がらせでもさせる気か?
それともこの世界にあれやこれやの魔法で天変地異でも起こさせて、恐怖による支配で神か魔王にでもなれというのか?
「この世界は我が手に有り!」と、ロザリアンヌは敢えて痛い妄想に浸る事で平常心を保ち馬鹿な考えを打ち消そうとしていた。
そして(このゲームを作っただろう製作者出てこい!)と心の中で叫んだ。
ただの乙女ゲームの世界じゃなかったのか?と小一時間問い詰めたかった。
まぁ良く良く考えてみれば、恋愛にダンジョンなんてまったく必要じゃ無いのに存在する時点でどうかと思うけどね。
大賢者様の残した魔導書の魔法も既にすべて覚え、段々と人間離れして行く様なスキルの数々にロザリアンヌは不安もあったが、もうどうにでもなれという心境の方が大きかった。
自分が何処かに向かわされている様な気がしてならないが、考えて立ち止まるよりこのまま突き進むしかないと思っていた。
そして今年もダンジョン攻略が主となってしまった冬季休暇も終わり、魔法学校の卒業が見え始めた頃ロザリアンヌ達はいよいよ90階層のボスに挑む事にした。
勿論キラルとレヴィアスとロザリアンヌの3人でだ。
ここのボスを倒せばSランクダンジョンを踏破した事になる。そう思うと感慨深いものがあった。
ソフィアやアンナだけでなくマリーや探検者達も応援してくれている。
そしてキラルもレヴィアスも一緒に居てくれる。
負ける事など微塵も考えてはいないが、身体が震えて来る様な思いを感じていた。
長い様で短かったここまでの道のりを思い返し、これで何か一つの区切りが付くような気がしていた。
いつもの様に入り口の魔晶石に探検者カードを翳し中へと入る。
この部屋のボスはサイクロプスという一つ目のとても大きな鬼の様な魔物だった。
「ヨクゾココマデタドリツイタ」
驚いた事に喋り始めたサイクロプス。
魔物が喋るなんて思っても居なかったのでロザリアンヌは驚き咄嗟に出遅れた。
しかしキラルもレヴィアスもサイクロプスの話を聞く気など毛頭なく、サイクロプス目掛けて瞬時に飛び出していた。
瞬殺だった。
何が起こったのかロザリアンヌがはっきり確認する事も無く倒されていた。
かなり大きく強そうなサイクロプスも形無しで、あっけないSランクダンジョンの踏破にロザリアンヌの気負っていた気持ちが霧散して行った。
色々あったが強い思いで目指して来たSランクダンジョンの踏破だというのに、まったく実感が湧かないのが本当に残念で、寧ろここへ辿り着くまでの方が大変だったと少し腹立たしかった。
サイクロプスが完全に光の粒へと変わった事で、ロザリアンヌは隠し部屋を探そうとした時だった。
ロザリアンヌとキラルとレヴィアスの身体が光に包まれそして何処かへ転移する感覚があった。
一瞬何があったのかも理解できず、何の抵抗もできないまま転移させられた先はまっ白な世界だった。
小説でよく読んできた異世界転移した時のような何の感覚も無いまっ白な世界。
凄く眩しい所で目を瞑っている様な、意識しか動かせない様なそんなまっ白な世界。
待っていれば神様が現れて、あれこれと説明した後にチート能力くれる様なそんな妄想をさせる場所だった。
この先にまだダンジョンが続くというのだろうか?
ロザリアンヌが主人公だったとして、主人公特典の様な特別なイベントでもあるのだろうか?
ロザリアンヌは訳も分からないまま、次の展開をただ待つ事しかできなかった。




