神頼み
アリエル様の動きがぴたりと止まる。
坊主頭は最初それに気付かなかったようで、数歩進んでしまったが、気付けばふと振り返ってアリエル様の顔を見た。
「五分だけ待っててあげる」
パタパタとアリエル様の羽が動く。しかし風も起こらないその不思議な動きで、宙に浮いているアリエル様が動くこともなく身体自体は空中に留まったままだった。
言葉には目的語もなく、その対象が誰だかも分からない。
けれども、何故だか分かった。
その言葉は、僕に向けたものだと。
「アリエル様? どうされたのです?」
「あんた自分で気付かない? この街に入っただけであんたの目つきが変わったわ。それに、今の音、……あんたの思い出見ててわかってたことだけどね?」
坊主頭を無視して振り返ったアリエル様の視線に、未だ固まっているソラリックが肩を震わせる。だがその視線の先が自分ではないとわかり、その代わりに冷や汗を流しつつ実際の対象の僕に目を向けた。
それからアリエル様が指さすのは、先ほどの音が聞こえてきた群衆の中。ぼんやりとこの辺り、という感じではあるが、明確に。
「あたしに恥をかかせないよう、落とし前をつけさせてきなさい」
指を差された先のおそらく探索者の一団に困惑と動揺が広がる。
その彼らに向けた、言葉が聞こえていたのか、という不思議な感慨。それを胸に視線を向ければ、感じられていた困惑と動揺に何故だか怒りが混じった気がした。
僕は一応とばかりに弁護をするべく口を開く。弁護というのも嫌だけど。
「……実害はないでしょう」
「あたしが嫌よ」
それに今回の原因は、おそらくアリエル様だ。
光り輝く尊い妖精アリエル様の後ろに、僕のような彼らにとって卑小な者が控えていたということからの。要するに、僕が気に入らなかったというだけではあるが。
そしていつものことだ。
ちらりと目を向けた群衆の中には、困惑している人間がいる。
そしてその中には、多分大きく分けて二つの種類。本当に意味が分からず困惑している者と、そしてなんとなしの理不尽さを感じつつ困惑している者と。
アリエル様が無言で頬を膨らませ、『早く』と促す。
しょうがない。
僕は背を押されるように一歩踏み出し、そちらの一団の前に立つ。周囲に大きく聞こえる声で、……本当はそんなの聞こえるようにも言いたくないが、口を開く。
「どなたでも、私がここにいること、気に入らないのであれば前へどうぞ」
先ほどの舌打ちをしていた誰かがいた辺り。一通り視線を巡らせるが、視線が交わることはほとんどない。交わったのは、きょとんとした顔でこちらを見返している探索者……どこかで見たことがある気がするので、どこかの戦場で一緒になったのだろう。
だが、その誰かを含めて誰も名乗り出ることはない。視線を向けた群衆のところだけ静寂が広がり、ざわざわとした声がその周りでやけに大きく聞こえてきた。
「アリエル様、その、小姓殿に何をご命じに? 落とし前とは?」
「……あ、そ、あの、高等治療師様……!」
「小姓じゃないわよ?」
小姓。対外的にはそう見えるのかもしれないし、そう言われても仕方がないのか、とどこか納得する思いで背後の声を僕は無視する。
だが視界の届かない場所で、あわあわとソラリックが慌てて、そしてアリエル様が否定した。
「つまり、その?」
「相手をするのも面倒な意気地なしだったわね。もういいわ。カラス、行きましょ」
名乗り出ることもなく、何かしらの悪意を更に続けることもしなくなった探索者の誰か。もはや興味はなくしたようで、アリエル様は振り返りまた進み出す。
「でしょう」
「だから、早く戻ろうって言ったのよ」
僕が軽口混じりにアリエル様を追っていくと、ソラリックも慌ててついてくる。更に遅れて坊主頭が走り縋るが、そちらにはアリエル様は目もくれなかった。
「あたしがいたときにはまだこの辺ミーティアのものだったけど、時代ってのは変わるわね」
「今から三百年ほど前にミーティアからエッセンがネルグ南側を奪取したそうです。この繁栄はそれからですかね」
はー、とアリエル様が周囲を見回しながら溜息をつく。変わってしまった街、というか地形。ミーティア人のアントルやサーロが記憶しているこの辺りの様子の方が、やはりアリエル様の記憶には近いのだろう。
「食べ物屋はない、というか閉まってる。これは戦争のせいかしら?」
「だと思います。僕がここを出る前にはもう少し盛況だったので」
僕も街を見回すが、やはり街の様子は変わっている。
戦争前にあった活気がなくなっているといえばいいのだろうか。それが戦争が始まったからなのか、今押し返されているからなのかはわからないが。
それでも人通りは前よりも明らかに少ない。出入り口には木戸が下ろされている商店も多く、木戸どころかバリケードのように出入り口が塞いであるところまである。
そういった場所はおそらく店主一家が逃げたというか避難したのだろう。それが賢い選択というものではないだろうか。
ただ、僕たちが見回した光景も、今この街では『活気がある』という区分には入ってしまうのだろう。
アリエル様を一目見ようという数十人の野次馬。それが、入れ替わりつつも追跡するように僕たちの動向をずっと見ている。
「ああ、アリエル様、こちらに宿をご用意してございます!」
「あんたまだいたの?」
食い下がるように着いてきていた坊主頭が、突然のように道を指し示す。アリエル様にどうにかして好かれようとするその姿勢は好感が持てないでもないが、仕事を放り出してここにいるということは僕は嫌いでもある。
今現在も、イラインには続々と傷痍兵たちが到着していることだろう。その対応に聖教会は治療院を開放して当たっているはず。上等治療師一人がいれば、どれだけの人命が助かり、また傷痍兵の苦痛も長引かずに済むだろうか。
「もちろん! 我らが聖教会の英雄たるアリエル様になんのもてなしも出来なかったともなれば、私の沽券に関わります」
「じゃあ、褒めてあげるからこれで終わり。解散しましょ。解散よ」
「そのようなことは……」
「解散って言ってるの。わかる?」
視線を外していたアリエル様が、苛立つように坊主頭に目を向ける。近くにいた僕の髪の毛がわずかにちりちりと浮かび上がり、それよりも遠いはずのソラリックの髪の毛が、むしろ僕よりも激しくぶわりと広がった。
「…………っ!?」
何で? と驚愕しながらソラリックが両手で髪の毛を押さえる。その手が押さえた瞬間に一度パチンと音が鳴り、ソラリックもその力の正体に気が付いたらしい。
「ソラリックと申しましたか、その方も下げてよろしいかと、私が、せ、聖教会からの特使として、私マクスウェルがアリエル様のお側に……」
「かーいさーんー!!」
間延びした声で、アリエル様がそう口にすると同時に、バチバチと雷が緩く放出される。濡れてもおらず、そもそも導電性もないはずの石畳の上を同心円状に紫電が走った。
届いていないはずの野次馬から、悲鳴のような声が上がる。
「お……」
「行きましょ、二人とも。カラス、宿はどうするの? しばらくこの街に留まるんでしょ?」
呆気にとられたように固まる坊主頭を置いて、またアリエル様が動き出す。
「一応、ミルラ王女殿下……はまあ用意してくれていないでしょうし、先ほどのクロード・ベルレアン閣下に頼って宿を用意してもらう予定でしたね」
「面倒ね。友達の一人二人いないの?」
「いますけど、まだこの街に残っているかはわかりませんし」
リコとモスク、あと頼れるとしたらスティーブンくらいだろうか。
モスクはまだこの街にいるかもしれないが、リコは分からない。スティーブンは道場を守るために残ると言っていたからいるだろうけれども。
それに、一応女性のソラリックもつれていくともなれば、モスクの部屋は手狭だ。リコの部屋はわからないが、……そうすると、多分どちらかというと僕が邪魔になる。
「あと、お腹空いたわ!」
言うが早いが、アリエル様のお腹が盛大に音を鳴らした。
「……では、……」
どうしようかな。この戦時下でもまだ残っていそうで、まだ食事が出来そうな場所。
やはり一番は兵舎での配給を受けるのが簡単だろうがアリエル様も納得はしまい。後は自炊か、……それでも材料に不安が残る。
今歩いてきただけでも感じる、この街の変化。流通がほとんど止まっているのだ。まだぽつぽつ開いている商店もあるが、新鮮な野菜はほとんど見当たらない。人参や大根、芋などは並んでいたものの、在庫処分的な意味で安売りされているようなものくらい。
飲食店なども推して知るべし、というかそもそも開いていない。こういうときに開いていそうな店などはレシッドが詳しそうなものだが。彼はいないので仕方がない。
民間人も大変そうだ。歩いている中でも、一応家々に気配はある。しかし一般市民は息を潜めて暮らしているようで、炊事の気配すらほとんどしない有様だった。
あの、とソラリックが小さく手を上げる。
「その……、どこかの治療院で配給を受けられては? 軒先ですが、宿泊も出来ますよ」
「え、嫌よ。あたしまた動物園の猿見るような目で見られちゃうじゃない」
アリエル様の言葉に、「どうぶつえん?」と呟きながらソラリックが首を傾げる。
「さっきの治療師とかもね、なーんか嫌な感じがすんのよ、なーんかね」
アリエル様が振り返った先は、ぽつんと残され立ち尽くす坊主頭。
もはや遠くで聞こえてはいないようだが、視線を向けられて彼も首を僅かに傾げた。
「ではまあ、僕の知り合いの中で一番迷惑になりそうでなくて、食事も出そうなところに行きましょうか」
集るようで申し訳ないが、そうしようか。
本人もアリエル様に会いたいだろうし。
その『家』で僕たちを迎えたのは、悲鳴のような叫びだった。
「ラチャンス先生ー!! 大先生ー!!!?」
玉砂利の敷かれた玄関先。道場生なども来ていないだろうに、律儀にも年配の女中が箒で掃除をしていた屋敷の前。
僕たちを見て、来訪の目的を聞いて、箒を放り出すようにして目を剥いて屋敷の中に走り去っていったのには僕も面食らった。
「敷居内御免蒙りやす! ってやつよね!!」
「ちょっと違いますね」
アリエル様がその対応にどちらかというと喜んでいるのは不思議なものだったが、しばらくすると落ち着いたようで全く落ち着いていない先ほどの女中が姿を見せる。
草履の鼻緒に上手く指を通せずに、それを気付いていないように顔面蒼白のまま現れた女中は、「どうぞ中へ」と笑顔で表情を固めたまま震える手で中を示した。
「親分様でございますか?」
「へ、あの、……」
「行きますよ」
どこからか取り出した手拭いを手に、仁義を切るように女中に絡み始めたアリエル様を促し、僕は一歩敷地内に足を踏み入れる。
「申し訳ありません、案内よろしくお願いします」
それから頭を下げると、女中さんは「へ、へえ」と以前見たときのような落ち着きはすっかりとなくなった様子でもう一度中を指し示した。
「いやいや、よくぞ訪ねてきてくださったのう! カラス殿に……」
いつもの応接室のような板張りの部屋に通された僕たちは、スティーブンの前で座る。
僕もソラリックも脱いだ外套を横に置いて正座。アリエル様は一人真ん中の座布団を悠々と使い、足を投げ出して座っていた。
前に座るスティーブンは健在。……だが、何故だろうか。少しだけ窶れたように頬がこけ、目の周りが窪んでいる。顔色も優れない。まるでどこかに重い病気でも患っているように。
鷹揚に腕を組んで、ハハハと笑い、その上で冷や汗を流すスティーブンは言葉を止めて僕を見る。
「なんとお呼びすればよいのかのう。のう、カラス殿、のう」
「こちら、ご存じの通り、アリエル様。それとそちらが治療師のコルネア・ソラリック様です、面識がありますよね?」
ソラリックが会釈し、慌ててスティーブンが応えた。
スティーブン的には、重要なのは前者一人なのだろうが。震える小声で名前を口の中で呟いて、スティーブンは咳をする。
それから白茶の入った湯飲みを手に取ると、水面が揺れて縁から零れる。更に飲もうとして咽せていた。
「大丈夫かしらこのお爺さん」
「いやいや、人生楽しからずや。こういう出会いもあるとはいえ、あるとはいえ、のう……」
「何か?」
責めるように目を細めたスティーブンに、僕が問いかける。スティーブンはそれでも怯まずに大きな咳をした。
「びっくりするわい! せめて先触れに手紙でも出さんか!!」
「それは失礼しました」
「ごめんなさいね。あたしが、どっか泊まれる場所とかないの? って急に言ったからよ」
「いやいや、アリエル様にそのような文句など……ふお、ふぉ、ふぉ」
愛想笑いをしようとして、笑えずに詰まるスティーブン。悪く思っているわけではないだろう。ただ、……まあ対応に困っているだけで。
「貴方との思い出も見させてもらったわ。息子が世話になったみたいでね。そんな緊張しなくてもいいわよ。街の子供にでも接してるようにしてくれないかしら」
「そのようなこと、出来る……わけがないと思いつつも続けるのも無礼ですな。徐々に崩していくので、少しだけご寛恕下さらんか」
「OK」
ふふふ、とアリエル様が笑う。パタタと動かした羽が、先ほどまでよりも優しく動いた。
「それでアリエル様たちは、泊まる場所がないとか」
「そうなのよ。息子にも聞いたけど、こいつ知り合いが少なくてね。頼れるのがここぐらいしかないっていうから」
「僕の分はなくても構わないので、明日か明後日までこの二人を泊めていただけませんか」
よく考えてみれば、僕の分は野宿でも構わないのだ。そうすると、リコのところでも良かったかもしれない。リコがこの街にいて了承してくれるのならば。
スティーブンは頷く。僕の言葉にでもないだろうが。
「そうですのう。何のお構いも出来ませぬが、部屋は空いておりますし泊まる程度でしたらば」
「かまわないわ。屋根があって風も吹き込んでこない。最高じゃない」
「ははは、あばら屋ですがそこは保障しましょうぞ」
ぱんぱん、とスティーブンが手を叩く。その音に応えて、木戸が開いて外に待機していた女中が姿を見せる。
「聞こえておったじゃろう。すまんが、客人を三人逗留させたい」
「かしこまりまして」
「それとお腹が空いているのよ。何か食べ物あるかしら?」
「……では……?」
「おう。儂はいいから三人にな」
「三人?」
スティーブンの言葉に僕は聞き返す。儂はいいから、ということはスティーブンは食べないということだろうか。
「……ああ、中途半端な時間にお訪ねして、申し訳ないです」
スティーブンとしては食事の時間ではなかった、ということだろう。もう食べたのか、またはまだ早いのか。
そう思ったが、スティーブンは力なく首を横に振る。
「いやいや、儂は今絶食行の最中でな。朝に一杯の白粥しか食べないことにしとるんじゃ」
「それで」
ああ、と僕は内心納得する。
痩せこけた身体はそのせいか。さすがに何も取らなければ死んでしまうので、絶食としても粥を一杯は食べているのだろうが。
だが、何故?
「弟子共が戻ってくるまでは」
「なるほど。そういう意味での苦行でしたか」
いわゆる神頼み、というやつだろうか。離れている誰かの安全を祈り、冷たい水を被ったり、夜間も立ったままで過ごしたり、などの苦行。
「昼餐も共に出来ないのは申し訳ないが……儂の自制心が鈍ってしまうので、な」
「……その……」
しみじみと口にしたスティーブンに、ソラリックが小さく声を上げる。
注目がソラリックに集まる。アリエル様の視線がソラリックを向いたと同時に僅かに怯んだようにも見えたが、最初の頃と比べると何事もなかったかのようなわずかな動作で前を向いていた。
「飢餓となって苦しむことで神に身の証を立てようとしているのかもしれませんが、……治療師の立場としては、お勧めできません。滋養ある食事を取っていただいて、ご自分の身体のことをお考えください。その……、そのようなことをしても……」
「まあそうじゃろうな! 儂とてこんなもん意味ないと思うとるわ」
スティーブンが、ソラリックの言葉を遮りケタケタと笑う。骨と皮だけ、でもないがそれに近づいているスティーブンの頭部が、何となく骸骨にすら見えた。
「じゃが、娘さん、儂とて必死なんじゃよ。……儂のことは知っとるわな?」
「いいえ、その、以前リドニックで道場を開いてらっしゃった……」
「そうじゃの。……そうじゃ、儂の方から名乗ってなかったのう。これは失礼した」
スティーブンが威勢よく咳払いをする。
「儂こそは天下無双の最強剣士、〈不触銀〉のスティーブン・ラチャンスと申す者」
どん、と威勢よく、スティーブンが作務衣のような着流しのような藍色の胴着の胸を叩く。
それからウインクをするように、片目を瞑って半身になって身を乗り出す。
「知らんかの?」
「ええと、ごめんなさい、名前しか。剣術には疎くて」
「はははは、構わん構わん!」
ソラリックは当然知らないようで、その言葉をスティーブンは怒りもせず笑い飛ばした。
「詳しいことはまたカラス殿にでも聞くがいいわな。じゃが……簡単に言えば、儂が祈っとるのは、儂がいなくなった後の道場のことなんじゃよ。今儂の弟子たちが戦場に出ててな、まだ安否も戦果もわからん。それでも奴らが戦場で活躍してくれていることを祈っとるし、その結果この道場が繁栄することも祈っとる。全部、祈っとるのは儂が手出ししちゃあいかんことでな」
「う……」
ソラリックが言葉を詰まらせる。その後、ちらりと何故だかこちらを見た気がした。
「何も手出しが出来ん、助けてもやれん。どうなってるのかもなにもわからん。……じゃから、それ以外で出来ることがあるならば何でもやりたい。そんな老いぼれの悲しい自己満足じゃよ」
身を正し、またスティーブンが腕を組む。
「もっとも、アリエル様などという奇跡と相見えることが出来た今、祈る先を変えるべきかもしれませんがのう。神なんぞよりももっと確かなものが目の前にある」
「あたしに祈られてもね。強ければ勝手に帰ってくるんじゃない?」
「違いない。そしてならば、弟子共に心配は要りませんな!」
ハハハと明るくスティーブンが冗談のように笑い飛ばす。
それからしばらく話した後、僕らが案内された食堂には、この戦時下では望むべくもない豪華な食事が並べられていた。
香草で臭みを取り除き、蓮の葉で包み丸焼きにした鶏肉。自家栽培であろう新鮮な野菜を豚肉と一緒に炒めた甘辛いもの。焼いた魚は燻した風味がつけられ、サラダらしき野菜には彩りと味に花が混じる。
申し訳なく思いつつも、アリエル様の相伴に与るように楽しみ、夜までは思い思いに過ごした。
僕はクロードたちとの連絡とレシッドたちの確認。ソラリックは近隣の治療院へと手伝いに出かけ、アリエル様は道場へ来ていた子供たちとの追いかけっこやかくれんぼの遊戯。
そうやっているうちに日が沈み、夜が来た。
夜、月野流の道場が多くの人に取り囲まれていたことに気が付いたのは、僕が最初だった。




