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百一年の孤独 いけにえ令嬢と皇帝の恋  作者: ねここ


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あれから

ソニアが島に来て一年が経った。月に一度リリが会いに来てくれる。その時にジェラルドからの手紙と一本のバラが届く。色はいつもローズピンクだ。ジェラルドにあげたあのリボンと同じ色。きっとジェラルドはリボンの色と同じ色の薔薇を選んで送ってくれている。ソニアは薔薇を見つめあの日のジェラルドを思い出しフフっと幸せに笑った。

 城にいるころ庭園にローズピンクのバラが咲くとそれを一輪切って部屋に飾っていた。その頃からその色が大好きだった。これはどのジェラルドも知らない事。この時代出会ったばかりのジェラルドがプレゼントしてくれたピンクのワンピースは偶然私の大好きな色だった。本当に本当に嬉しかったけれど、その後ジェラルドの態度が急変し、悲しかった。でもすぐに謝ってくれて。このジェラルドは喜怒哀楽がストレートで毎回心乱され振り回されてる。だけど、いつから私を愛してくれていたんだろう?ソニアはソファーでくつろぐリリにお茶を出しジェラルドから送られた薔薇を花瓶に挿した。

 この時代のジェラルドは分からないことばかり。何を考えているのかさっぱりわからない。いつ私を好きになったのか、私の何が好きなのか。思い出すのは怒っているジェラルドや謝るジェラルド、楽しそうに笑うジェラルド。このジェラルドは感情が豊。本音を言わなかったジェラルド一世、弱音を吐かなかったジェラルド三世、二人は帝国を背負って生きていた。今のジェラルドはあのジェラルドとは全く違う。でもそれが嬉しい。帝国や責務に縛られる事なく自由に自分の意思を貫いて生きている今のジェラルド。ジェラルド一世もジェラルド三世も幸せな立場ではなかったと今なら理解できる。だから今のジェラルドが一番ジェラルドらしいと思っている。

 

 リリからジェラルドの話を聞いた。ジェラルドは相変わらず忙しく飛び回っている。会えなくて寂しいが元気でいると聞くだけで幸せだ。

 この世界には便利なものがあって離れていても会話ができたり会えたりする。リリは使ってみるかと聞いてくれたが断った。ジェラルドを待つ日々の中で感じる不安や寂しさ、想像する喜びや悲しみ、日々変化してゆく自分の心を大切にしたいと思っている。この感情は自分だけのもの。人生の大半を眠っていたソニアはジェラルドの事を想うこの人間らしい感情が全てが愛おしいと感じている。だから会えなくても、声が聞けなくても、こうしてリリからジェラルドの様子を聞き、想像力を膨らませ再会できる日を夢見て満足している。ジェラルドもソニアを気持を尊重し手紙のやりとりだけで昔の恋人のようなもどかしい時間を楽しんでいると言ってくれる。

 

  「ソニア、もう少しだけボスを待ってあげて」リリはいつもそう言う。「リリさん、私は待つことは平気です。ジェラルド様が元気ならそれで幸せですから」そう言うとリリはまるで自分のことのように嬉しそうな笑顔を浮かべ「ボスが愛しているソニアはやっぱ世界一よ」といって抱きしめてくれる。それを一年繰り返した。


 それから半年が過ぎた頃リリが言った。「ニ,三ヶ月位ここに来れないと思う。だけど絶対にボスのことまってて欲しい。」リリはジェラルドからの薔薇と手紙をソニアに渡しその手を握った。「リリさん、私はジェラルド様に信じて待っていてと言われ、約束したんです。だから心配しないでね」ソニアもリリの手を握りしめた。


 それからさらに半年が過ぎた。あの日から二年、あっという間だった。ソニアは千百年の時間を過ごしてきた。数年など瞬きの速さに感じている。時間の感覚が無い。本当に二年なのか二千年なのかわからないが何万年経とうとジェラルドを待つ。


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