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百一年の孤独 いけにえ令嬢と皇帝の恋  作者: ねここ


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ソニアを知らないジェラルド


「出来ると、思う?ソニアはお茶を入れたことがないのか?」ジェラルドはまさかソニアはお茶の淹れ方も知らないと思っていなかった。ソニアが滞在するエクゼクティブクラスの客室では全て専用のスタッフが行うが、それでもお茶くらいは入れた事があるだろう。そう思ったのが間違えだった。「、、はい。メイドが、いえ、、あの、お役に立てず申し訳ありません」ソニアは自分が何一つジェラルドの役に立てない事がわかり悲しくなった。ジェラルドに呆れられてしまう。ソニアは俯いた。落ち込むソニアを見てジェラルドは内心慌てた。自分の常識で接したのが間違いだった。彼女は浮世離れしたところが魅力的だ。こんなことに落ち込んでもう二度と手伝いはしたく無いと言われるのが怖くなりジェラルドは落ち込むソニアに笑顔を向け言った。「よし、私が入れよう」そう言いながらも俺は何をやっているのだと我ながら呆れるし笑える。「覚えます!教えて下さい!」ソニアはジェラルドの言葉に喜んだ。ジェラルドに呆れられると思っていたが優しく受け止めてくれた。嬉しい。ちゃんと覚えてこれからは私が入れよう!

「え、っと、ここに茶葉があって、お湯はここで、、、」ジェラルドは一通り教えてくれ二人はジェラルドの入れたお茶を飲んだ。

「美味しいです。ジェラルド様は何をされても素晴らしいのですね!」ソニアは感動した。

 「アハハハ。ソニアは本当に不思議な人だな。、、俺は一体何をしているんだか。」ジェラルドは自分の行動に呆れつつもソニアと一緒にお茶を飲み気分転換出来た。「仕方がない、行くか」ジェラルドはそう言ってリリに連絡をし、出かける準備をはじめた。「あの、私は何をしたら、、」ソニアはスーツの上着を手にするジェラルドに声をかけた。ジェラルドはソニアを見てニコリと笑い歩み寄り言った。「ソニア、俺が帰ってきたらお茶を入れてくれ。夜十時には戻れると思う。それまではここでも隣でもゆっくりしてくれ。あ、これでここと隣入れるから」そう言ってソニアの首にカードキーをかけた。「これはあのホテルと同じように使えば良いのですね。わかりました。」

ジェラルドはソニアの頬に触れ「後で!」と言って出かけて行った。 ソニアはジェラルドの行動に心臓が飛び出すほど驚いた。ジェラルド三世の頃と同じように優しく頬に触れたくれたジェラルド。懐かしさと喜びが入り混じる。だけど今のソニアはジェラルドの恋愛対象では無い。ソニアはため息をついた。ジェラルドは女性にモテる人だから頬に触れた事など何気ない動作で全く意味はないはず。勘違いしてはダメ。この気持ちはしまっておこう。再び出会えただけで充分よ。


 ソニアはジェラルドの仕事部屋で出来る事はないかとオフィスの中を見て回った。けれど綺麗に整頓されており出来る事が何一つ見当たらない。ふと出入り口のドアを見ると先程ジェラルドが投げたナイフがドアに刺さったままだった。ソニアはそれを引き抜こうとドアに近づいた。よく見るところどころナイフの跡がある。今回のジェラルドは血の気が多いのかしら?ソニアは動揺したジェラルドを思い出しクスッと笑った。可愛いところもあるのね。ソニアはとりあえずナイフを引っこ抜きもう一度クスっと笑った。昔のジェラルドは皇帝らしく個人的な感情を表さなかった。ただ、ジェラルド三世はソニアにだけ様々な感情を見せてくれた。今のジェラルドは、、わからない。ソニアはナイフをテーブルに置き海を見た。その海は昔と変わらない美しさだった。ジェラルドは部屋に戻っても良いと言ったが、ジェラルドを感じるこの部屋にいたかった。そのままソファに腰をかけ何も考えず海を見つめそのまま寝てしまった。目が覚めた時日が沈んで暗くなっていた。暗い部屋の中で電気がどうしたらつくのかわからなくて考えていたが、きっと前のホテルと同じ仕組みなんだと思い手元のボタンを押した。案の定電気はついた。ちょっと嬉しくて一人で拍手をした。ソニアはこの時代に慣れてきたのだ。時計を見たら八時半だった。あと一時間半でジェラルドは戻る。長いのか短いのかわからなかったが、ジェラルドが帰って来たらお茶が淹れられるように準備をした。


 ソニアはまたソファーに腰をかけ昔のことを思い出していた。ジェラルド一世、ジェラルド三世、そして今のジェラルド。どのジェラルドも多くの女性から好かれていた。最初のジェラルドにはルアーナがいた。ジェラルド三世はソニアだけを愛してくれた。今のジェラルドはソニアの知らないジェラルドであり、ソニアを知らないジェラルドだ。ソニアを覚えていないジェラルドは言い換えたらソニアという存在を求めなくていいジェラルド。だからこのジェラルドは本当のジェラルドなのかもしれないと思った。ジェラルドにとってソニアは特別でもなんでもない。知り合いになった素朴な女性。それ以上も以下もない。わかっているが、考えると悲しくなる。だけどこれが運命で仕方のない事。だから出来ることを一生懸命やり静かに生きれば良い。そう思った。


 十時を過ぎてもジェラルドは帰ってこない。ソニアは十一時、十二まで起きていたがそのまま寝てしまった。

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