生きる世界が違う
ジェラルドはソニアが気になって仕方がなかった。何故だかわからないが目で追ってしまう。
少しズレたところも自分を避けているところも全部気になっている。ソニアに初めて会った時、どこかで会ったことがあるような既視感があった。けれど出会った記憶は無い。そもそも自分が相手にするタイプの女性では無い。彼女は今付き合っている女性たちと比べ華やかさなど全く無い。だけどなぜか誰よりも輝いて見える。ジェラルドはため息を吐いた。馬鹿馬鹿しい。単純にソニアが自分になびかないから気になるだけだ。だけどこの腕の中で泣いているソニアを放っておけない。「ソニア、この本は濡れてしまった。新しいものを用意するから」ジェラルドは腕の中で涙を拭うソニアに優しく声をかけた。「ありがとうございます。あ、いえ、大丈夫です。干せば乾きますし、違う本もありますから」ソニアは優しく話しかけてくれるジェラルドに甘えそうになったが、気持ちを止めた。「じゃあ、俺がソニアに出来ることはある?」ジェラルドはまたソニアの素気ない返事に苛立った。「と、特にありません。お構いなく」そう言ってジェラルドの腕から離れた。その言葉を聞いたジェラルドは大きなため息をはいた。「はぁ、君は俺のこと避けてるの?こんな扱いされたことないな」ジェラルドは無性に腹が立った。なぜソニアは毎回俺の助けを拒否する?そんなに関わりたくないのか?「え、あの、」ソニアはなぜジェラルドが不機嫌になったのかわからない。どうしようやっぱりジェラルドと噛み合わない。謝ればいいの?ソニアがジェラルドを見てあたふたし始めた。「もういい」ジェラルドはソッポを向いて「失礼」といって去って行った。ソニアはまたジェラルドを不快にさせてしまったと落ち込んだ。
ソニアは部屋に戻りランチを部屋で食べその後ソファーの座りテレビをつけた。
なんとテレビの画面にジェラルドと自分が映っていた。マリアーナとのトラブルがスクープされていたのだ。ソニアはジェラルドの人気を身をもって知った。そしてマリアーナは女優だとわかった。
ジェラルドがマリアーナを振ったと報道されていた。ソニアはその現場を目撃しジェラルドが口止めの為にハグをしたのではないかと言われている。コメンテーターの一人が新しい彼女とか?と言うと皆大笑いし、モデルや女優と付き合うジェラルドがこんな素朴な女の子を相手にする訳が無いと言った。でもいつも美しい人ばかりだから遊びで声をかけたかもしれませんね。と笑っていた。ソニアはテレビを消した。この世界の暮らしに一切馴染めずこのホテルに籠っている事は苦痛ではないがジェラルドのことを考えると悲しくなった。この世界のジェラルドはどのジェラルドとも違うが,やはりジェラルドだとソニアにはわかる。美しい髪と完璧な顔、優しく抱きしめる懐かしい手、あの瞳の奥に宿る強い意志の光。やはりジェラルドは生まれ変わっても変わらない魅力でソニアを惹きつける。だけど生きる世界が違う。昔は身分差がその対象になるが今は生きる環境を指すのかもしれない。




