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百一年の孤独 いけにえ令嬢と皇帝の恋  作者: ねここ


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その晩テレビというものを見ていたらジェラルドが出ていた。ジェラルドはものすごくお金持ちの人らしい。昔と変わらぬ美貌を持ち昔と同じように人気があり、昔と違い一人を愛するのではなく十人ほどの女優や、モデルと呼ばれる美しい女性達と付き合っているそうだ。今のジェラルドはソニアにとって雲の上の人。相手にされないことはソニアにもわかる。華やかなジェラルドと昔のままの時代遅れのソニア。やっと同じ世界で生きられる様になったのに生きる世界が違うのだ。


 ジェラルドの周りにいる人達は特別な人ばかりで世間知らずなソニアが魅力のないつまらない人間に見えたのだろう。人生のほとんどを眠っていたからその通りだし否定も出来ない。テレビで見たジェラルドの周りにいる女性達は自信に満ち溢れとても綺麗に見えた。ジェラルドの周りには人が集まりそこにソニアの知らない世界がある。初代ジェラルドの時もジェラルド三世の時も時々感じていた孤独感。ソニアはこの世界でも一人だと思った。だが、やっと終わりがある人生を得た。それだけが希望でこのまま穏やかにできれば早く終わりたいと願った。

 


 ある日ソニアは部屋を出てプールサイドを歩いていた。ソニアは泳げないのでプールに近づかない。幼い頃から高い場所と水が苦手だったが長く生きている間にそれも克服しつつあった。プールの水面は太陽の光を反射しダイヤモンドを散らした様にキラキラと輝いている。プーサイドに居心地よさそうな場所を見つけた。ソニアは本を持って静かに過ごそうその場所に座ろうとした。「邪魔よ!」目の覚めるような美しい女性がソニアを押しのけその場所に座ってしまった。「あ、本が、、」その女性に押された勢いでソニアは手に持っていた本をプールの中に落としてしまった。

「どうしよう、、」本はあっという間に底に沈んだ。ソニアは仕方なく近くにいたスタッフにお願いした。スタッフはザブンとプールに入り本を拾いあげソニアに渡した。「ありがとうございます」ソニアは礼を言い濡れた本を持って部屋に帰ろうとした。「ソニア」その時突然ジェラルドが現れた。美しい女性はジェラルドを見るとすぐに立ち上がりジェラルドの方に駆け寄った「ジェラルド、私に会いにきたの?」そう言ってジェラルドに抱きつきキスをしようとした。ソニアは反射的に見たくない!と顔を背けその場から立ち去ろうとした。ジェラルドはその女を押し退け去ろうとしたソニアの目の前に立った。ソニアは突然ジェラルドが来たので本当に驚いたが、女もすぐにジェラルドを追ってきた。ソニアは邪魔をしてはいけないと思い濡れた本を胸に「ジェラルド様、こんにちは」と笑顔で挨拶をしすぐに去ろうとした。「ソニア、待って」ジェラルドは去ろうとするソニアに声をかけた。その様子を見ていた女はソニアを見下すように「ジェラルド、この場違いな方はこのホテルに合わないわ」と鼻でわらった。「マリアーナいい加減にしろ!」

ジェラルドは表情を硬くし低い声で言った。「え?どうしたの?ジェラルド?」女はジェラルドの態度に驚き首をを傾げた。ソニアは二人のやり取りを聞きどうして良いかわからず下を向いていた。「ソニア、その本を貸して」ジェラルドは女を無視し優しくソニアに言った。女はジェラルドに無視されたことが許せないようで「ジェラルド、そんな子を気にかけるなんてらしくないわ」そう言ってジェラルドの袖を掴んだ。「触るな」ジェラルドは怒って女の手を振り払い言った。

「アリアーナ!ソニアを見下すのは止めろ、彼女はスカイグロットに住んでいる」女は驚いた顔をしてソニアを見た。この冴えない女がこのホテルで一番高い部屋に住んでいる?「それに、俺の友達だ。俺の友達を見下したお前とはもう付き合えない。出て行ってくれ,顔も見たくない」ジェラルドは冷めた目を女に向けた。女の態度が一変し泣きながらジェラルドに謝ったがジェラルドは一切聞かなかった。その様子を見ていたソニアはとても気まずかった。


「ソニア、すみませんでした。」マリアーナが去った後ジェラルドはソニアに謝った。「ジェラルド様、やめて下さい。何もされていないですから、、」ソニアは気まずそうに言った。ジェラルドはため息をついて「何故あなたはこうなんだ?」と呆れた顔をした。あ、またジェラルドの地雷を踏んだ?何がダメだったの?ソニアはまた失敗したと思い悲しくなった。どうしてジェラルドとうまく話せないんだろう。何がそんなにダメなんだろう?黙って下を向いていたら涙が溢れてきた。

ジェラルドは本当に驚いた顔をし「ソニア、泣かせるつもりは無かった、すまない、どうか泣かないで」そう言ってジェラルドはポケットからハンカチを取り出してソニアの涙を拭いた。私を覚えていないジェラルドがこんな事をしてくれるなんて、、ソニアは余計に涙が溢れてしまった。


 ジェラルドはソニアの涙を見て反射的に腕をに伸ばしソニアを抱きしめた。自分は一体何をしているんだと思いつつなぜかこの人を放って置けない、涙を見たくない気持ちが大きくなる。「すみません、大丈夫です。ごめんなさい」ソニアは突然ジェラルドに抱きしめられ焦った。久しぶりの抱擁に切なさで胸が一杯になった。変わらない暖かさ。この腕の中が大好きだった。どうしよう涙が止まらない。ソニアは先程の悲しさよりも切なさで涙が溢れ出る。ジェラルドは泣き続けるソニアを見て心臓を鷲掴みされた様な苦しさを感じた。彼女を悲しませたくない。「ソニア、どうか泣かないで」そう言ってソニアを強く抱きしめた。

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