そして千百一年の孤独 現代へ
夢を見た。
千年の眠りが明けるとき、死のある人生が歩めるときだ。
次こそ掴むのだ。
誰かがソニアに言った。
ソニアは千百一年の時を超え目覚めた。ようやく普通の人生が送れる時が来た。ジェラルドを失い帝国を滅亡させたソニアの心は死んでしまった。だから淡々と今の状況を受け入れた。
ソニアは生贄になったときに装飾品として一緒に入れられた金や宝石を持って洞窟を出た。
外の世界は真夜中だった、が様子がおかしい。世界が一変していた。見たことのない格好をした若者が海辺にいた。ソニアは驚いたが自分の格好をジロジロと見る人がいなかったので普通に歩いた。どれくらい眠っていたのかわからない。けれど、辛い思い出は全部忘れ静かに生きようと思った。愛したジェラルドがこの世界にいようがいまいが、ソニアは関わらず生きてゆこうと思った。
どんなに愛していても結ばれないこともある。この世界にジェラルドがいるのならどうか幸せに、そう願った。
「ちょっとあんた危ないじゃない」ソニアは突然怒られた。
驚いて声の方を見ると何かわからない鉄でできたものに乗っている女性に怒られたのだ。「すみません」ソニアは謝りすぐに避けた。よく見るとそんな乗り物が沢山走っていた。おっかなびっくりしながらもソニアはその様子を眺めていた。蝋燭でないなにか強い光が町を照らし夜なのにまるで昼間のように輝いていた。その様子が不思議で美しくずっと眺めていた。
バサバサっと後ろで音がしてソニアは振り返った。美しい女性が沢山の書類を落としたのだ。
ソニアはその散らばった書類を一緒に拾い集めた。「あなた今時間ある?暇?」女性は突然そう言った。「はい」その迫力に押されてはい。と言ってしまった。「じゃあ来て」その女性はソニアの手を引っ張り先程の鉄の乗り物にソニアを押し込み自分も乗り込んで「ブルームハウスに急いで」と言った。その鉄の乗り物はすごいスピードで走りソニアは驚いていた。そんなソニアをみて「まさか、、あなた車は初めて?」と言った。「はい」これは車というのか。そう答えながら過ぎゆく景色を見つめた。程なく大きな大きな建物についた。「あなた名前は?私はリリ」「ソニアです」
「よろしくソニア!」そう言ってリリはソニアに先程の書類を持たせて「こっち」と言って手招きした。ソニアはリリについて行った。リリについて行くと大きな広間に着いた。そこではパーティーが開催されていたが、いる人間は貴族ではない。このリリのような美しい女性やスーツを着た男性が沢山いた。 皆ドレスではないがこの時代の美しい装いだと言うことはわかった。「ソニアこちらに」リリは壇上近くのテーブルにその書類を置くように言った。ソニアはわからないなりにテーブルに置いた。「これとこれを一緒に留めて」そう言ってクリップを取り出しソニアに渡した。
「はい」「ソニア私はボスの支度があるからごめん。やっておいて」そう言ってリリはどこかに行ってしまった。ソニアはわからないなりに言われたことをやっていた。突然会場が暗くなり大きな拍手が起こった。ソニアは急に暗くなり驚いたがまだ書類が終わっていなかったので手探りで書類を留めていた。そんな中ひとりの男性が壇上に上がった。
その男性は金色の長い髪に青い瞳、ソニアにはその男が生まれ変わったジェラルドだとわかった。
心臓が止まるほど驚き涙が溢れてきたが、ソニアは思い出した。もう遠い過去のことでこのジェラルドはあのジェラルドとは違う人で、彼はかれの幸せがある人だ。ソニアが関わってはいけない人なのだ。ソニアは黙々と書類をとめていた。そこにリリが戻ってきてソニアがとめた書類を持ってまたどこかに行ってしまった。ソニアはここにはいてはいけないと思いそっと会場を出て町を歩き始めた。
行く当てはないがジェラルドがいるこの場所から離れなくてはいけないと思った。




