次は死ねる人生を
ソニアに対する不満を持った貴族が使用人を買収しソニアを殺そうと計画をした。その貴族はソフィアの公爵家と懇意にしていた貴族で、元々ソニアに敵意を持っていた。今回の予言を聞き、
やはりソニアを殺さなければ断罪された公爵家も浮かばれないと決意し犯行を計画したのだ。
城で働く使用人を買収し、ソニアの近くに潜り込ませていた。使用人も予言通りになると帝国が滅亡し、自分達も死ぬかもしれないと不安になっていた。自分達を守るためだとソニアを殺すことを正当化し、その日のために信頼を得てソニアの近くにいたのだ。そして決行の日がやってきた。その日は城で舞踏会が開催されていた。ソニアはジェラルドに連れられ皇帝専用のテラスに待機していた。その日は青く大きな月が出ていた。 あの日以来ジェラルドとまともに話をしていない。
けれどジェラルドは何一つ変わらずソニアを愛し、誰よりも大切にしていてくれた。満月の夜、皇帝のテラス、あの日もこんな夜だった。ソニアはジェラルド一世と別れたあの日を思い出していた。どんなに愛し合っていてもどうにもできない運命があるのかもしれない。そう思える夜だった。
ソニアはテラスの先端で月を見つめていたが、ソファーに戻ろうと振り返った時、信頼していた使用人がナイフをソニアに向けて立っていた。ソニアは驚き後退りをした。その時ジェラルドがテラスに入って来てその様子を目にした。「ソニア!!」ジェラルドはすぐに腰の剣を抜き使用人を斬ろうとした。使用人は一瞬止まったがすぐにソニアに襲いかかった。ジェラルドは使用人を背後から斬りつけ、ソニアの方に倒れてゆく使用人からソニアを守るためジェラルドはソニアの手を掴んだ。その瞬間使用人はソニアに向けてナイフを振り下ろし、そのナイフはジェラルドの腕をかすめていった。ジェラルドの怪我は大した怪我ではなかった。しかしそのナイフには強力な毒が塗ってあり一瞬でジェラルドの命を奪った。ソニアは倒れてゆくジェラルドの身体を掴み、一緒に床に倒れた。ジェラルドは口から血を流しソニアを見つめ「愛している」と言って目を閉じた。ソニアはすぐにジェラルドを追って死のうとジェラルドの命を奪ったそのナイフで自分の首を切った。が強い光が現れソニアは死ぬことが出来なかった。それでも何度も何度も死のうとしたが全て阻止されてしまった。
それからソニアの記憶がなくなった。
結局、皇帝ジェラルドを失った帝国は存続することができず、滅亡した。
一度歪んだ運命を正す事は出来なかった。
ソニアは全てを失った。そして死ねないソニアは帝国も無くなり何のために自分は生贄になったのかわからなくなった。しかし死ねないということはまだやらなければいけないことがあるのだと思った。ソニアは初めてジェラルドを失った。悶え苦しみ、絶望した。 血の誓いがあってもソニアが生きている限り発動できない。その絶望は耐え難いものだった。自分のせいで帝国が滅亡し、愛する人が死に一人残された。もう涙も枯れ果てて真っ白になった。
そしてソニアはあの洞窟に向かった。
ジェラルド一世に起こされた時に投げつけたものが散乱しこの場所だけ時が止まっているように思えた。まるでそれが昨日起きたことのように感じた。どんなに悲しくても辛くても寂しくてもソニアはただただ受け入れるしか選択肢がない。もうお許しください。そう呟きソニアは目を閉じた。
もう誰にも求められていない今、次目覚める時は恐らく死ねる時だ。




