届かぬ恋
「最初はなんとも思っていなかったはずなのに、いつからかあなたを目で追うようになっていました。性別問わず、あなたのことを好きな人はたくさんいます。あなたはいつも明るくて、笑顔で、誰のどんな話でも聞いて受け止めることができるから、そうなるのも頷けます。そんなあなたが時折、誰にも気づかれないように見せるどこか寂しそうな顔に、私は気づいてしまいました。寂しそうというか、ずっと遠くを見ているというか、うまく言えないのが申し訳ないけれど、それを上手に隠すあなたの優しさと、消えてしまいそうな笑顔を見るたびになぜか私の心まで苦しくなりました。あなたは優しいから、飲み会の雰囲気が苦手で、友だちの決して多くない私のところによく話しかけに来てくれましたね。そういうさりげない優しさにみんな、救われていました。あなたはいつも誰かのことばかり考えていました。どんなにくだらないことで悩んでいても、真剣に聞いてくれました。すごく温かくて、本当に、本当にみんな、あなたのことが大好きでした。
だからこそ、悩みがあったなら言って欲しかった。私たち一人一人じゃ力になれないかもしれないけど、あなたが『助けて』と一言言えば、全員飛んで駆けつけたのに。どれだけ辛いことが重なれば、どれだけ孤独に絶望すれば、あなたみたいな人が首を吊ってしまうのでしょう。私には到底、想像もできません。私たちのこと、相談するに値しない人間だと思っていたんでしょうか。それならせめてそう言って欲しかった。『役立たずだ』って言って欲しかった。何度も何度も助けてもらったはずなのに、私は何も返せていません。私たち全員が、あなたの幸せを願っていたのに、そのあなたはもうここにいません。あなたの苦しみを思うと、とても眠れません。あなたはいつも笑顔でした。けれど本当はもっと泣いて欲しかった。怒って欲しかった。呆れて欲しかったし、うんざりして欲しかった。ちょっとくらい愚痴もこぼして欲しかった。ちょっとくらい、誰かに甘えてほしかった。
もしかしたらあなたは私たちのこと、心底軽蔑していたのかもしれません。それでも、申し訳ないけれど、あなたの最期をお見送りさせてほしいです。全く、あなたがいなくなってしまったという実感がないのです。涙も出ません。明日には、ふらっとまた会いに来てくれるのではないかと、そんな気がしてなりません。」




