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 このままでは二人とも死んでしまう。

 なんとしてもエイリーンだけでも助けないと。



「ソルト……」


 エイリーンの震えが僕の背に伝わって来る。

 僕はそんな震えを少しでも和らげてあげようと強く抱き寄せた。



「大丈夫……。絶対守ってみせる」

 エイリーンの瞳を見つめ、力強く宣言する。


「見てて」

 僕はエイリーンを少しでも安心させようと微笑んで見せるとイフリーゴンへ向き直った。



 そして目一杯魔力を練りこみ塩を噴き出し続ける。


 炎の勢いに負けないよう、限界まで噴き出す。




「しーおしおしおしおしおしおしおしおしおしおしおしおしおしおしおッッ!!!」



 僕はなんとか炎を押し返そうと塩の勢いを強めた。


(クッ、勢いを強めただけではダメか……)


 だが、炎が高温のせいかいくらだしても一定距離を進むと融けてしまう。



(もっと堅く、もっと頑丈に……。塩を密集させるんだ……)


 粉状に噴出するから融けるんだと考え、なるべく密集、密着させるようにして噴出する。だが、やはり結果は同じでイフリーゴンの吐き出す炎の前に融けてしまう。



『なにをやろうとも無駄なことだ。この魔力を帯びた炎は全てを灰に変える。そのような粉をいくら固めようと無駄なあがきだ』

 自身の炎に絶対の自信を覗かせるイフリーゴン。


 だが僕の耳にはイフリーゴンの言葉は届いていなかった。


 ひたすら塩をコントロールしながら噴き出し続ける。



「しーおしおしお……しおしおッ! しおしおッ! しおしおしおッ! しおしおしおしおッッ!!!」


(もっと堅く、もっと……。魔力を操って……、異能を操って……)


 僕は集中する。


 限界まで集中する。


 ここさえ凌げれば倒れたってかまわない。


 なんとしてもエイリーンを助ける。


 そのため、ひたすらに集中する。



 もっと堅く。


 もっと魔力を操って。


 もっと異能を微細に操って。


 堅く、堅く、堅く、堅く、堅く。



『ぐ……。なんだ、どうなっている? ただの粉のはずなのに……』


 イフリーゴンが焦りの色を見せる。


 そう、塩が融けにくくなってきたのだ。

 だんだんと融けるまでに時間がかかり、塩の勢いが増している分こちらの防壁が堅牢になっていく。


 僕はさらに塩の強度を高めようと集中する。


 硬くなるとイメージしながら魔力を込め、塩をしっかりと隙間無く密着させる。


 そのために魔力制御のスキルを使い極小レベルで密着させる。


 もっと小さく、もっと細かく、もっと複雑に……、炎など容易く跳ね返す塩をイメージする。



 魔力制御スキルのお陰でとても微細かつ精密に塩を感じ取れる。


 どこまででも細かく精密に集中できてしまう。


 どこまでも細かく、どこまでも小さく、どこまでも正確に。



 そう、世界最大の分解能を得られる電子顕微鏡の一極倍を遥かに超えるくらい精密に――。



「はぁぁあああああっっ! しおしおッ! しおしおッ! しおッ! しおッ! しおッ! しおッ! しおおおぉぉぉッッ!!!」


 魔力制御スキルを限界まで発動し最小単位で精密に操る。


 塩の粒から分子、分子から原子、原子から量子、量子で限界………………いや……もっともっと小さななにかを見つけ出す。


 すべてのもの、あらゆるものの原点となる一つ。


 たった一つの何か。



 ……僕はそれをSIO……、シオと名付けた。


 異能を操り、シオの配列をより硬く、より魔力が通るように並び替えていく。


 シオの配列を替えて作り出した新たな量子で配列を組み直し、新たな原子を作り出して配列を組み直し、新たな分子を構成する。


 シオを調整して塩を限界まで硬くしていく――。



 いや、むしろシオの配列を替えたため、もはや塩ではない。



 塩のシオの配列を組み変え、構造を再編し新たな物質へと変える。


 ただただひたすらに硬くて魔力の通りが良い物へと昇化させていく。


 参考にしたのは鍛冶屋で触らせてもらったオリハルコンの剣だ。


 その効果は歴然だった――




『炎が通らない……だと……!?』



 驚愕するイフリーゴンの声が木霊する。


 そう、完全に炎をせき止める事に成功したのだ。


 僕はそこで止まらず、眼前で塊状になった塩のオリハルコンで壁を構築する。



「しーーーおしおしおしおしおしおしおしおッ! しおしおッ! しおしおッ! しおッッッ!」


 炎をせき止めたの確認した瞬間、さらに僕は同じ物質で剣と盾を作り出す。

 白く輝くシオの剣と盾を装備した僕は壁から一気に飛び出した。


『おのれぇっ!』

 イフリーゴンが炎を吐くのを止め、僕に殴りかかってくる。


「ハアアアアアアッッ!」


 僕はイフリーゴンの拳を盾で防ぐと、超剣術を用いて剣を振るった。


 目にも留まらぬ剣裁きはイフリーゴンをいとも容易く両断する。



『魔物を統べる魔神四天王の頂点に立ち、魔神中最大の攻撃力を誇る我が炎を防ぎ、あまつさえ! あまつさえ我が身を切り刻む……だ、だとおおおおおっっっ!』


 無残に切り刻まれたイフリーゴンが目を見開く。



「フ……、ちょっと塩気が足りなったようだね」


 イフリーゴンを斬った僕は肩で息をしながら剣を床に刺し、なんとか踏みとどまる。



『こ、このような小僧に……、バ、バカナァアアアアアアアアアアアッッッ!!!』



 イフリーゴンは断末魔の悲鳴を上げ、爆発四散した。




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