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【旧】転生先が現代日本人ってふざけんなっ! って思ったけどそれが普通だし案外充実してる  作者: せん
幼稚園年少

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#060 誕生日の主役

遅くなり申し訳ございません。

ノリで書いていたら色々と長くなってしまいまして…

 母上からの思わぬ誕生日プレゼントに学習意欲が高まる中。


 僕とは違う意味でうずうずしている人物が約一名。

 ミオさんに抱き止められながら、準備したプレゼントを大切そうに手にしたスズカが今か今かと待ち構えていた。


 その髪にはスズカの誕生日に贈ったバレッタも留められている。

 普段は汚したり失くしたりするのが怖くて大切に保管しているらしいが、今日は僕の誕生日と言うことで特別に着けてくれているみたいだ。


 そんなスズカがあまりにも可愛らしくてずっと眺めていられそうだったが、ミオさんから視線で「早く」と急かさせるので、母上からのプレゼントを一旦置く。


 もちろんスズカからの誕生日プレゼントも楽しみだ。

 去年はメッセージカードとチークキスだった。


 思い出してにやけそうになる表情をキリっと引き締めて準備万端。

 居住まいを正してトテテと小走りで近寄ってくるスズカを待ち受けるが――


――クルッ


「「――えっ!?」」


 スズカの予想外の行動に、僕もミオさんも呆気にとられる。

 華麗なUターンを決めたスズカは、ミオさんのお腹へと顔をうずめている。


「どうしたのすーちゃん?」

「……まーくんかっこいい………………むふぅ」


 ……どうやら僕が原因だったようだ。

 にやけ顔を隠すために無駄に表情を作って見つめてしまったせいで、スズカが照れてしまった。


 これが世のイケメンたちの見ている世界なのかもしれない。うん、何だろうこの優越感というか満足感というか。勘違いしてしまいそうになるね。


――キリッ


「……むふぅ」


――キリッ


「…………むふぅ」


――キ……


「こらまーくん、すーちゃんで遊ばないの」


 チラチラと振り返って見て来るスズカを決め顔?で見つめ返していると、ミオさんに怒られてしまった。……照れるスズカが可愛いのが悪いよね。


 とりあえず、普段通りの表情……普段通りって何よりも難しいんじゃ……と思ったけど、僕の場合はぼけーっとした表情すればいいだけだ。


「……まーくんの表情が死んでる」

「いつも通りだけど、誕生日にする表情ではないわよね……」

「難儀なやつだな……」


 なにやら大人たちが失礼なことをおっしゃっているが、これ以上どうしろと……




 気を取り直して。


 今度こそスズカが僕の前にやってくる。

 先ほどの余韻が残っているのか、まだ口元がもにゅもにゅとしている。


「まーくん、おたんじょうびおめでと。これからも、すーといっしょにいてね」


 両手で差し出された二つ折りのメッセージカードをありがたく頂戴する。

 なんだか告白されているみたいだ。さすがにこの年齢なので、男女の仲とかではなく単純に一緒に遊ぶ相手とかそういう意味だろうけど、それでも嬉しいことには変わりない。


 そして「これからも、すーと一緒にいてね」という言葉が、僕の心へと深く刺さる。


「ありがと、すーちゃん」

「………………むふぅ」


 僕は受け取ったメッセージカードを開く。


 そこには『4さいのおたんじょうびおめでとう』という文字と共に、絵が描かれていた。

 スズカと僕が真ん中で手を繋いでいて、その周りに母上とミオさん、ミツヒサさん。そしてフウカとキョウカの双子の妹もちゃんといる。隅っこにはちゃしぶも。


 なんとも心温まる絵だった。


 子どもの描くそれではあったけど、家族に囲まれて、みんなが笑顔で楽しそうだ。愛情に満ち溢れる良い人たちに恵まれたとしみじみと実感して、思わず目頭が熱くなってしまう。


 字も去年より断然上手になっている。スズカの成長を実感して、なんだか嬉しくもありながら寂しくもあり……


 子どもからの手紙を読んで、思わず泣いてしまう親の気持ちが非常によくわかる。まさかこの年で経験することになるとは思わなかったが。


 だが残念ながら涙は流せそうにない。


 別に僕に感情が無いとか薄情だとか我慢しているとかそういった事ではない。




『すずかをぎゅうできるけん』


 


 これや。


 感動の余韻に浸りたいのに、この存在がどうにも僕をしんみりとさせてくれない。

 

 メッセージカードに挟まれていた三枚の紙きれ。

 クレジットカードほどの大きさだ。


 ナニコレ?


 肩叩き券とかではなく?


 すずかをぎゅう?


 ……ぎゅう?


 スズカが牛さん?


 いやそんな現実逃避なボケはいらん。

 ハグの方の”ぎゅう”だ。


 スズカをギュッとできる券。

 つまり、スズカに抱き着く権利を行使できるチケット。


 右下に小さく『まーくんせんよう』とも書いてある。

 ミツヒサさんに奪われそうにでもなったのだろうか。そんな気がしなくもない。


 ずっと取っておけばスズカが大きくなってからでも使えるのかな。

 高校生や大学生、社会人になってからとか……


 ミオさんの遺伝子を引き継いでいるスズカのことだ。

 それはもう……


 ……


 夢があるね!

 使いどころを見極めねば!


 なんて妄想を膨らませていたのだが、何気なく見た裏面で一気に現実へと引き戻される。


 ()()()()あるんかーい。


 しかもそれぞれに別々の日付が書かれていた。


 一番長い一枚は今日から一年間。来年の僕の誕生日の前日まで。

 もう一枚は半年後まで。


 そしてラスト一枚は今日中。


 ……。


 別に文句は無いんだけどね?

 夢が夢で終わっただけだし?

 もしかしたら来年もまた貰えるかもしれないし?

 今のスズカだって可愛くて魅力的だし?

 決してロリコンというわけではないよ?


「……まーくん?」

「素敵なプレゼントありがとね」

「……むふぅ」


 固まっていた僕をつんつんするスズカに感謝の言葉を伝え、ついでに頭を撫でて気持ちよさそうに表情を緩めるスズカに癒されておく。


 しかし、どうすべきか。


 使わないといけないんだよね。今日中が期限のチケットはそういう意図だろうから。誕生日プレゼントとして記念にずっと持っておくとかはさせてくれないんだね。


 僕は『すずかをぎゅうできるけん』を考えたと思われる()()()を見やる。


 いくらスズカが賢い子とはいえ幼稚園児の域を出ることは(たぶん)ない。

 字はスズカのものであるから、きっとミオさん――ミオ(プロデューサー)が入れ知恵をしたんだろう。


 それにほら――


『Use now』


 ――カンペ出してる。


 もうどこからツッコめば良いのかわからい。

 スケッチブック自体は不思議じゃない。お絵描きをするのに便利だから僕たちもよくお世話になっている。


 英語なのは、スズカに意味を読み取られないようにするためだろうか。


 というか準備が良すぎるんだって。

 ビデオカメラを回す母上。それに加えて定点カメラも動いている。ちなみにミツヒサさんは双子の様子を見ているため、ちょっと距離が離れている。


「……じゃあすーちゃん、早速これ使っていい?」

「うん!」


 ミオPの指示に従い、今日が有効期限となっているチケットを一枚スズカに渡す。


 そして改めてスズカと向き合う。

 相変わらず眠たげな目をしているけど顔立ちは両親に似て整っていて、将来が楽しみな子だ。


 そう考えると、ちょっと照れくさい。


 思えばスズカから抱き着かれることは多々あったけど、僕から抱き着いたことは記憶にない。もしかして僕から抱き着いて欲しかったから、この『すずかをぎゅうできるけん』を作ることになったのだろうか……。


「…………むふぅ」


 なんとなしに見つめているとスズカはほんのりと頬を染めて、クルッと後ろを向いてしまう。


 どうしたものかとミオPへと視線を移すと――


『Back hug chance!』


 どこぞのドラマのように、このまま後ろから行けという指示が出たので、スズカを肩越しに手をまわして軽く抱きしめる。ただ、僕よりもスズカの方がほんの少し身長が高いせいで格好が付かないのが悲しい。座ってもらえば良かった。背伸びが辛い……


「…………みゅ、みゅ、ッ!」


 ピクリとスズカが驚くと共に座り込む。

 体勢が楽になったので、もう少し強く抱きしめてみる。スズカからシャンプーのいい匂いがする。……まぁ我が家のと一緒だけど。


「……みゅふぅ! みゅッ?」


 スズカが可笑しな鳴き声を上げながらもじもじとしだす。


 それに追い打ちをかけるかのように、ミオPからの指令が来る。


『Whisper in Japanese → "I love SU-CHAN!"』


 ……正気か?


 しばし固まっていると、ミオPが僕の視界のど真ん中にスケッチブックを移動させ、ゆらゆらと強調して見せつけて来る。別に見えてない訳じゃないし、意味を理解していないわけでもない。


 ここまで来たらやるけどさ。


「………………すーちゃん、大好き」

「みゅッ!? ふぇッ!?」


 ミオPの指示通りに囁くと、スズカは聞いたこともない鳴き声と共にハグから抜け出す。そして悶えるように床をゴロゴロと転がり、ちゃしぶを見つけて抱き着いては再び悶えだす。


 なんというか、ここまで明確に反応されると楽しくなってくるね。


 ちゃしぶを抱きしめくねくねとする珍しい姿を見せるスズカに、ミオPが近寄り声をかける(インタビュー)


「すーちゃん、どうだった?」

「まーくんのせめ………………むふぅ」

「満足?」

「(コクリ)」

「もう一回やる?」

「(フルフル)」

「また明日やる?」

「(コクリ)」


 どうやら会心の一撃だったようだ。


 今までは父親目線というか、兄目線でスズカを可愛がっていたつもりだったけど、こうも嬉しい反応をされると意識せざるを得ない。それでも庇護欲の方が()()圧倒的に強いけど……


 子どもの体に加えて、子ども扱いだったり子どもに囲まれて生活しているうちに、精神的にも若返ってしまっているのだろうか? それともただ単にミオPの演出が上手いだけなのか。はたまたスズカが成長しているのか……




 そんな感じで、()()四歳の誕生日は充実したものとなった。

 一番楽しんでいたのは戸塚母娘だったのかもしれないが。



 ちなみに戸塚夫婦からはお古のデジカメをいただいた。

 スズカはミオさんを始め大人たちがよく撮ってるから、逆に大人たちを撮っていけたらいいかなと思う。大切な人たちだからね。


読んでいただきありがとうございます。


次回は誕生日の後日談?裏側?とクリスマスの前日談?になる予定です。


改稿履歴

2021/01/10 20:42 スズカからプレゼントを受け取った際の描写を修正しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なろうで殺伐とした作品が多い中、ほっこりする作品は貴重で、最新話まで一気に読みすすめることができました。 [気になる点] 58話でアカリさんが、誕生日プレゼントにロボット掃除機の2台目…
[良い点] いつにもましてすーちゃんがかわいい… すずかのUターンと、ミオさんの「Use now」で笑わせて貰いました! まーくんがすーちゃんで遊ぶシーン個人的にすごく好きです!大人たちに窘められるの…
[一言] 年長さんまでに、周りの女子を巻き込んでマークンの取り合いが勃発ですね。モテる男は辛いです。
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