第1楽章 はじまりの指揮棒 前編
ここはユメミノ高校。音楽家を輩出する名門の音楽学校だ。
特に吹奏楽部にはかなりの力を入れている。
とは言っても顧問の浅見大介先生は失敗しても決して怒らず、その場の空気を悪くさせない雰囲気を徹している。
そんなふうに思っている、僕の名前は古城ケイスケだ。
今日も仲間と演奏をする。僕はこう見えて、エリートって呼ばれている。
もっとも僕はそんなことは全く思ってないが…………下手くそと言われるよりも…………マシだ。
「おーい! ケイスケ!」
僕を呼んでいるのは流川マコト。
「もう。遅いじゃない! 全く…………。」
僕を怒るのが、住野エミリ。
「ごめんごめん。今度から気をつけるからさ。」
「そう言って…………こないだも遅刻したじゃない!」
「まぁまぁ、良いじゃないか。先生まだ来てないんだし。」
「ああ、このくらいなら問題ないだろう。」
そう言う彼は、小東カイ。
「ええ、そうですわ。エミリさん。落ち着きなさい。」
そう言うのは、阿宮シズク。
僕たち5人は吹奏楽部の中でかなりの技術を持っているらしい。
僕たち5人のことを学校中の人間はおろか、吹奏楽をやっている人はみんな僕たちのことを知っている。
「さて…………俺たちも音楽室に入るか…………。」
「ええ、そうですわね。練習しましょうか。今日は確か、自主練でしたわよね。」
「よーし! みんな行こう!」
僕たちは早速練習をしようとしたその時……僕たちの運命が変わった。
♪〜〜
「なんだ? この曲? 聞いたことのない音楽だな…………。」
マコトがそういうと、周りのクラスメイトたちが次々と倒れていく。
「え!? ちょっと大丈夫!? ケイスケ!! みんなが倒れてる!!」
「何だって!? 一体何があったの!?」
「おい! 窓の外を見るんだ!」
カイがそう言い、僕たちは外を見ると、街中の人たちが倒れていた。
僕たちは慌てて外に出た。
「一体どうなっているのかしら…………!?」
「あ、マコト!」
「もしもし!大丈夫ですか!?」
マコトが倒れている人にそう聞くも返事がない。一体何があったのだろう…………?
「ふん…………まだ生き残りがいるとはな…………」
「え…………うわあ!!」
僕は声の聞こえる方を向くと、化け物が2体いた。
「ば…………化け物…………!?」
「化け物だと! 人間の分際で生意気な! 我が名は怨怪七人衆……ドロイ!」
「怨怪七人衆…………!?それって何なのよ!!」
「ふん、何度でも言うがいい!ゆけ!オルゴ!そして、ミューク達よ!!」
「オルオル!!仰せのままに!!」
オルゴという化け物とミュークという大量の同じ容姿をした化け物は僕たちにジリジリと迫ってくる。
「おい…………ケイスケ…………どうする…………!?」
「カイ…………そんなの決まってる…………逃げるぞ!!」
僕たちは学校の中に逃げ込んだ。
逃げて、音楽室に入った僕たちは追いかけてくるミュークたちが来てないか確認し、そのまま座り込んだ。
「はぁ…………はぁ…………何だったんだ一体…………?」
僕がそういうと、シズクがあることに気づく。
「あら…………? ここ…………開かずの扉だったはずですわ。どうして空いているのかしら?」
「待って、シズクちゃん! 誰かが……来るわ!」
エミリの言う通り、開かずの扉から何かがやってくる。
僕たちはただ動くこともできずに、扉が開くのを見るだけだった。
そして…………開かずの扉が開くと、そこには…………。
「ああ! みんな! 無事だったのか!!」
「「「「「浅見先生!!」」」」」
僕たちは顧問の浅見先生を見て、ホッとした。
「先生も無事だったんですね。」
「ああ。カイ。みんな。君たちはあの音楽を聴いても平気だったのかい?」
「はい。特に異変は…………。」
「そうか…………やはり君たちには、素質があるようだね。」
「素質ですか…………? 私にはわかりません。」
「それはそうだ。今すぐこの扉に入るんだ。さ、入って!」
「…………わかりました。」
僕はそう言うと、開かずの扉の向こうに入る。みんなもそれについてきた。
扉の向こうは大量の楽器と、ハイテクな機器で一面中埋まっていた。
「ねえ、これは一体どこなの!?」
「マコト! 先生よ! そんな口に聞き方はないじゃない!」
「だって、叔父さんだよ。叔父さんもこれで良いって言っているし。」
「…………それなら良いけど…………。」
「先生、こちらは一体どんな場所なんでしょうか?」
「ああ、この場所はね…………さっきの怪人を倒すための研究が行われている場所なんだ。」
「研究を行う場所? 一体、どう言うことですか?」
「怪人は色々なものを怪奇音でものを怪人化させて、地球を支配しようとしているんだ。」
「何ですって!? それを止めるのにはどうすれば良いのですか!?」
「そのためにこれを君たちにあげよう。」
浅見先生は僕たちにあるものを渡した。
「叔父さん。これは…………?」
「これはマジックタクト。これを使えば、さっきの怪人達と戦うことができる。」
「怪人達と…………? 一体誰が?」
「君たちだ。」
「僕たちが!?」
「ああ、君たちにはネイロンジャーとして、怨怪七人衆と戦って欲しい! エリートと呼ばれる君たちならネイロンジャーとしての素質がある! 戦ってくれないだろうか…………?」
僕たちは…………誰も賛同しなかった。
「どうしてだい? 君たちならきっと…………!!」
「私…………怖い…………! あんな化け物と戦うなんて…………!」
「先生。俺もです。俺に素質だなんて…………。」
「私も賛同できませんわ。」
「叔父さんの頼みでもそれはできないよ…………。」
「…………ケイスケ…………君はどうなんだい?」
「僕は…………。」
僕も断ろうかと思った時、学校の外で音楽が鳴る。
「何だ!? まさか…………!!」
僕たちは音楽室の窓から見ると、さっきの化け物が暴れていた。
「オルオル!! 音楽で人々を眠らせて、一生動けないようにするオル!!」
その様子を僕たちは音楽室で見ると先生は真剣な表情で問いかける。
「このままだとみんな死んでしまう!! それでも良いのかい!」
僕以外の4人は、まだ戸惑っている…………。僕は…………僕は…………。
「僕…………戦います。」
「ケイスケ!? …………本気なの……!?」
「僕がやらなきゃ誰がやるんだ!!」
僕はマジックタクトを持って外に出た。




