おくりもの
────斯くして、更に十数分後。
「…………………………どうっすか?」
操作感が違うと言えども、全く応用が利かないとまではいかず。
〝水〟よりも早くに〝雷〟を従えて……「じゃあ次は無意識に放出してる不可視魔力だ」とかなんとか、第三の訓練を強いられるまま半ギレで努力を重ねた結果。
「……まあ及第点だ。目障りってほどじゃなくなった」
「ふぅーぃ……」
ようやっと俺の魔力弁とやらは落ち着きを見せたらしく、バイオレンス教師に『合格』と頷かせる程度まで垂れ流し状態はマシになったようだ。
いや疲れた。
《顕幻》によって可視化される魔力に関しては俺にも視えるから感覚も掴み易かったのだが、無意識に放出しているらしいモノは当然ながら目に見えない。
それどころか《感識》で知覚することさえできない。いや知覚自体はできるのだが、そこに在るのがわかっても動きが見えるわけではないので……ってな具合に。
しかしまあ、将来を鑑みれば必須の修練事項だったのであろう。ゆらの言う『魔力任意受動視覚化』云々のセンスを修得する者が増えてきた場合、これまた言う通り思いもよらぬ無様を晒していた可能性がなくもなかったわけで────
……ん? あれ、いや、ってか、
「ゆらって、あれだよな。センスなしでも魔力視える勢だよな」
「なんだそりゃ……まあ、そうだが」
言い様からして、おそらく件のセンスは結構な〝上〟の方にあるのだろう。だからまあソレは『将来的な話』でヨシとして、だ。
「参考までに、俺の身近に他どんくらい視える勢います?」
「あぁ?」
ゆらのように視えるプレイヤーには、まず間違いなく俺の魔力洪水状態は見られていたわけだ────然らば俺、昨日の時点で結構な知人友人と顔を合わせて回ったのだけれども……と、思いながら問うてみれば。
「知るかよ……」
とかなんとか言って、面倒臭そうな顔をしながらも。
「…………序列持ちなら東陣営のチビ二人。西は現トップ三人に岩寿とOz-爺。南は『城』と『糸』と『杖』。北はルーの奴とサヤカのアホだ」
これこの通り、しっかり答えてはくれる辺りコイツやはり律儀な不良だ。さておき聖女様に『アホ』て……と、どんな繋がりが在るのやら想像しつつ。
「半数に会ってんなぁ昨日……。なんも言ってくれなかったのは…………」
「っは、内心で笑われてたんだろうぜ」
「覚えとけよ、どいつもこいつも……」
まあサヤカさんに関しては微笑ましく見守られていたのだろうという予感があるので、悪気ナシだろうから恥ずかしながらも呑み込むとしてだ。
チビ二人は百パー面白がっての放置だろうから有罪。カグラさん&サヤカさんと一緒に会った【灼腕】殿に関しても『そういう性格』と知っているので同上。
それから『糸』こと【糸巻】白猫子猫なっちゃん先輩に至っては、二百パーセント後で揶揄ってやろうという意図が透けて見える。これは仕返し必定だろう。
……いやしかし他の面子はともかく、なっちゃん先輩も視える勢だったのか。つくづく『天才』の呼び名が相応しい才能豊かな子猫様だこって。
それであんだけ努力してんだから、そりゃ序列持ちにもなるわなって話────
まあ、つまるところ。
「スルーせずに忠告してくれた【銀幕】様の、なんとおやさしいことか……」
「ぶっ殺すぞ」
難儀な奴だぜ我が友よ……と生暖かい目を向けたら即座に飛んでくる極冷気。次いで、ゆらは何度目かになる溜息を長く細く一つ。
それと共に『付き合ってたらキリがない』とばかり首を振り、言う。
「随分と遠回りになったが……さっきの石ころ、出せ」
「うん?」
忘れていたわけではないが、既に流れたと思っていた話題の種を。然らば、言われる通りインベントリから【外星ヨリ来ル物】を取り出した俺に、
「魔力を籠めてみろ。今なら簡単だろ」
「お、おう……」
まさしく、簡単なオーダーを提示。
慣れ親しんだ『内』と『外』とは、また少々異なる感覚の『魔力』操作。先程までの俺なら無理です知らんと首を横に振ったが、今の俺なら容易なこと。
ゆえに、いざと。掌に載せた石ころへ魔力を撚り集めてみた────
「ずぇっ……ッ!?」
────瞬間、爆増。
何が増えたか、単純だ。
意識しなければ感じることさえないほど僅かばかりだった、小さな石ころの『重量』が。途方もなく巨大な岩石が如く、急速に急激に。
然して、思わず声を上げて取り落としてしまった俺が視線で追った先。
「………………おぉ?」
コツン、コロン、と。訓練所の床に落ちた【外星ヨリ来ル物】は、俺が感じた超重量など知らぬ存ぜぬと言わんばかり軽い音を立てて転がった。
「……………………え、なにこ」
「次。〝雷〟で試してみろ」
「れ……ぁー、はいはい」
我が道を行く先生に疑問を遮られ、問いは先送りにして石ころを拾い上げた。
先に感じた重さは既に霧散済み。また外見が不思議なだけの軽くて小さな石に逆戻り……しているソレへ、今度はセンスを用いた属性魔力を────籠める。
その結果は、
「おー…………………いや、うん」
バチバチと、予想に違わず帯電した【外星ヨリ来ル物】に対する感想は……まあそんなもの。正直なとこ先程の衝撃に比べればインパクトは薄い────
「ハル」
「はい?」
と、首を捻った俺に。
「それ、投げてみろ。軽くな」
「…………ははーん?」
先生様が、面白そうなことを言うもんだから。
そりゃもう面白そうな気配を感じ取った俺は、魔力を籠めるまま掌の上にある石ころを握り締めて────言われた通り、軽く、水平に投げ飛ばしてみた。
その瞬間。
まさしく、文字通り、その瞬間。
「────……………………うっおぉ……」
雷光一閃。だだっ広い真っ白な訓練場の空間を迸るように飛翔した石ころは、俺の目でギリギリ視認できるような速度で部屋の外壁へと到達した。
「……まあ、そういうもんらしい」
それを眺めて、ゆらは一言。
「気に入ったか?」
「………………は、はは」
果たして、俺が何と答えたか。
そんなものは、言うまでもないことだろう。
【紅より赫き杓獄の種火】の元になった【猛り狂い輝く電気石】と似たアレ?
と思うでしょうが割かし別物。そりゃもう、起源も過程も結果も別物。




