予測可能回避不能
そうこうして、十数分の後。
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◇Status◇
Name:Sora
Lv:108【0】
STR(筋力):50
AGI(敏捷):150
DEX(器用):50
VIT(頑強):100
MID(精神):700(+200)
LUC(幸運):100
Lv.1《速考》
Lv.1《感識》Lv.1《無幻》Lv.1《謀律》Lv.2《泉誓》Lv.1《環架》
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「……こんな感じ、でしょうか」
「いいんじゃないか?」
ある程度の知識でフォローした俺の意見も取り入れつつ、続いてソラさんも自分の『竝枝界拓』ツリーを現状の限界点まで伸ばし終えた。
俺と同じく「とりあえず取っとけ」の『AGI』ツリー《速考》から始まり、これまた同じく『MID』ツリーへと移り第一段階センスの《感識》までは同様。
そして、そこからは別の枝へ。第二段階から《顕幻》というセンスの方へ進んだ俺とは違い、ソラは《無幻》という対となるセンス方向へと登った形だ。
然して、二人分を合わせれば結構な種類の能力を獲得したわけだが……聞くところによると、癖が強いセンスは十段階目の辺りから現れ始めるらしい。
つまるところ、俺たちの取得したアレコレは割かし単純かつ素直なものばかり。
たとえば、読んで字の如くである《速考》は置いとくとして────
「………………感じます、ね」
「感じるなぁ」
『MID』樹の第一段階《感識》とか。
何を感じるのかといえば、互いの気配……──正しくは、互いの魔力。
俺はソラを膝上に乗っけたまま、ソラは俺の膝上に乗っかったままで気配感知も何もないだろうとは思うが、確かに『これまでの常に』プラスされた新たな知覚。
魔力感知能力の常態化。それが《感識》の恩恵だ。
「これは、その……なんと言いますか」
「あぁ。慣れるまで時間が掛かりそうだなー」
これまでも特定のタイミング……それこそソラさんが気合いを入れている時などに魔力の圧を肌で感じる時はあったが、それとは根本から異なる感覚。
あれは『魔力の具現化』という仮想世界でも少数の者が備え持つ才能を物理的に感じ取っていただけであり、真の意味で〝魔力〟を捉えていたわけではない。
────正直、すっっっげぇ変な感覚。視覚の存在しない『眼』が実装されたというか、謎のレーダーが思考の中に生えたというか……。
とにかく、
「あの、外に出るのが怖いんですけど……」
「それな」
わかる。視える。そこに魔力を持った何者か、あるいは何物かが在るのが。
ソラの言葉は全くもってその通り。これでプレイヤーひしめく街にでも繰り出したら、一体どうなってしまうのやらと普通に心配が勝つ。
人酔い、もとい魔力酔いを起こして下手すりゃ倒れるのではあるまいかと。
決して不快な感覚というわけではないが、今までにない知覚能力の追加というのは割かし多大なアップデートだ。口でも言ったが慣れるまで暫し掛かりそう。
────と、
「お。消した?」
「消してみました」
フッと、突如として知覚の内からソラの魔力が忽然消失。
「バッチリ消えてる。流石ソラさん」
「いえ、あの、単純な思考操作だけで簡単、でしたから……えへへ」
俺が選択した《顕幻》の対となる、第二段階《無幻》の力。これはまあ名前からイメージするのも難しくはないだろう、己が放つ魔力を抑え込む能力だ。
《感識》を取得したプレイヤーのみならず、エネミーの敵愾心関連にも干渉可能。自在にON・OFFできる点も含めて、普通に有能なセンスである。
Lv.1でも、平常時であればソラさんでも完全に抑えられるらしい。おそらく戦闘時に諸々を解放したら駄々洩れになるのだろうが、それでもコスパは良く見える。
これ俺も、次にポイントを稼げたら即取得した方がいいだろうな。
てか、この《感識》と《無幻》は余裕があれば取得推奨の定番セットになりそうな気がしないでもない。いろんな意味で、深く考えずとも有用としか思えん。
俺……『序列持ち』なんかの顔が知れているプレイヤーなら、猶更のこと。
────さて、といったところで。
「んではでは……ソラさんや」
「はい?」
至極のんびりと、時間を使ったところで、だ。
「そろそろ、お外へ出ようかなー……なんて」
「…………」
別にね。別に俺としては、もうこのまま今日はグダーっと過ごしてしまうでも構わない。えぇ全く本当に全然さっぱり構わないんだけども……と、
「お、っとと……」
ご機嫌伺いは果たして、お気に召さなかったのか否か。
ジトリ……とまではいかない冗談めかした半眼で振り返ったソラは、俺の鳩尾へ頭を押し付けグリグリと。じゃれるような強さで攻撃を試みた後。
「……ダメです。皆さん、心配させてしまったでしょうから」
スイっと膝の上から立ち上がると共に、手を。
「ちゃんと、ご挨拶に行かないとですよ」
「ん、だな」
差し伸べて、グイっと。俺を力強く引っ張り上げた。
眺める表情に、涙の痕跡は見られない。穏やかな表情のどこにも、陰りや違和感は見つけられない────ならば、大丈夫と安心して良いのだろう。
他ならぬ、俺が見つけらんないんだから。んじゃまあ、大丈夫だってことで。
「ぃよっし。そしたら順に────」
引っ張り上げられて立ち上がり……最初の、やり直し。今度こそ相棒の手を引いて、俺はクランホーム自室の扉に手を掛けると共に、
「挨拶回りを、開始…………」
…………と、共に。
「かい………………………………………………」
「……? ぇ、あの……ど、どうかしましたか?」
………………………………………………………………えー、なんだ。その、
扉に手を掛けると共に……あの、あれ。封印を、解放した結果。
小一時間前に『記憶』した数より、更に跳ね上がった未読メッセージの着信件数。そして、うぉっ……と思いながら取り急ぎサラッと開封した、まず一通目。
つまるところ、無数のメッセージの一番上に積まれていた最新のソレに目を通した結果。それはもう、目を、通してしまった、その結果。
「…………ソラさん」
「はい……?」
「やっぱ、もう暫く引き籠もってちゃダメすかね……」
「…………よくわかりませんけど、多分ダメです」
「そ、そっ……かー…………多分、ダメかぁ」
「はい。多分……────」
────【Ri-na】:居留守。いい度胸。覚悟して、ね。────
「ハルが、悪いので」
「悪いの俺かなぁコレ……」
そういやノックもミュートにしてたなぁと思い出した扉を開けるのに、多大な勇気という謎の要求リソースが無事発生。そりゃもう空いた片手には余る巨大さだ。
斯くして、ゆっっっくりと扉を開いてみれば……。
「────…………………………………………………………………………」
「…………ご、ごめんて」
果たして、いつからそこで待っていたのやら。
完全無欠な膨れっ面の青色こと自称妹が、言葉なく俺を出迎えた。
まあ状況の流れからしても情状酌量の余地は大いにアリと見て、
とりあえず有罪でいいんじゃないすかね。
ソラさんの取得アレコレも近く説明されます。おそらく多分きっと。




