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魔法の道具、治します!~小物好きOL、異世界でもふもふライフを過ごす~  作者: ユーリアル


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MIN-096「伝説の槍」



 何事にも準備は必要だ。

 ましてや、普段やらないことをやろうというのなら、当然の事。


「このあたりは、大した価値がないとされているものになるね」


「それでも庶民にはいいお値段な気も……」


 以前、倉庫で片づけをした時に色々見つけたり治したけど、それ以外にもある。

 備蓄としてとってはあるけど、使わないだろう物とか色々だ。

 例えば、ライターぐらいしか火の起こせない道具、とかね。


(これはこれで便利な気がするけれど?)


 無事に終わったら、売り出してお金にしてもいいように思う。

 でも、売る先がこの場合、冒険者じゃないからかもね。

 貴族相手には、派手な物、はっきり有用性がわかる物の方がいいのだ。


 こういうマッチングの不具合も、儲けの元だと思うけど、うーん。


「ユリウス、こっちにいたのか」


「アルトさん! どうしたんですか?って私のせいですよね」


 この街近辺で、ユリウス様を呼び捨てにできるほぼ唯一と言っていい人、それがアルトさん。

 たぶん、昔現役だったころとかに色々あったんだろうなあ。


「ああ。精霊をどうにかするなら、魔法使いがいなくてはな。一通り声をかけてある」


「トレントの時のように、素材は採れないと思うけどねえ?」


 言葉の裏に感じるのは、打算。

 巨大な動く木、トレントをどうにかした時もそうだった。

 個人的には、それが逆に頼もしいと思う。


 逆に言えば、儲かるなら人が集まるからだ。


「古来より、精霊が眠った土地は、祝福を受けるという。良くも悪くも、な。ダンジョンの中で、精霊だろう相手を撃破した時に魔法の道具が手に入りやすいようなものだ」


「そんなことが……あれ、その槍どうしたんですか?」


 アルトさんは大荷物なのだけど、その中に見覚えのある槍が。

 冬の、湖にいたくじらの精霊。

 その口の中に刺さっていた不思議な槍だ。


(使い道がないから、武器としては預けておいたんだっけ……?)


「精霊をどうにかすると聞いたときに、これが浮かんでな。使い手の問題かもしれないが、精霊に刺さってた武器だ」


「言われてみれば……何か謂れとか伝説とか実はあったり?」


 アルトさんがわざわざ両手で持つ槍。持ってみろと言われ、恐る恐る槍を手に。

 持てなくはないけど、振り回すのは少し難しい。

 そう告げると、なぜかアルトさんの表情が苦笑になる。


「やはり、な。俺からすると、かなりの重さなんだ。恐らく、魔力を使うか、相性のようなものがある」


「となると、ユキ専用ってことかな? ふうむ」


 なんだか考え込む2人。

 私の方は、重さが違うと言われても困ってしまう訳で。

 ゲームとかだと、こういう場合は魔法の武器ってことに……ん?


「何かここに押せる場所が……」


 ちょうど持ち手の付近に、スイッチみたいなのを感じた。

 見た目は何もない、金属質の柄なんだけど……。

 そっと魔力を込めて押し込むと、なんと穂先に光が走った。


「おお……美しいね」


「状況的には、対精霊……か」


 ビームなんたらという言葉が似あう、不思議な姿だ。

 さらに不思議なことに、軽さがさらに変わった。

 最初は鉄パイプより重いな、ぐらいだったのに……。


(塩化ビニールのパイプみたい……投げられそう)


「ちょっと投げて見ていいですか?」


「鍛錬場に向かおう。アルトも来るといい」


「言われずとも」


 そうして、護衛の人も引き連れて鍛錬を普段している場所に。

 人形もあるので、ちょうどいいかなと思った。


 槍投げを見様見真似で思い出しつつ、助走をつけて投擲っ!


「嘘……」


「ユキはこういう鍛錬でもしていたのか?」


「いや……彼女には文官の仕事しか振らないつもりだったよ……」


 3人とも、呆然としている。

 兵士の人たちもそうだと思う。


 なにせ、小娘な私の投げた槍が、すごい勢いで人形に突き刺さったからだ。

 一応、本人としては理由がわかる。


「あの、魔法というか、精霊の補助があるみたいで……小さい甲冑がこう投げろって感じで」


「なるほど。ひとまずこれは後回しにして、誘導する作戦を練るとしようか」


「ああ、間違いない」


 私としても、切り札私!は出来れば遠慮したい。

 部屋に戻り、魔法の道具をかき集めつつ、大トカゲな精霊に呼びかけることが決まった。

 これは、私の役目だ。


(こっちに飛ばして―!って訴える感じでいいよね)


 飛ばすのは、治した海鳥の精霊。

 あの時、見た物を伝えて来た力はたぶん精霊にも有効。

 だから、私たちの考えとかを伝えるのだ。


 火山の噴火がいつあるかわからない中、準備は進む。


「では、頼むぞユキ」


「はいっ!」


 数日後、準備を終えた私は護衛の人たちや討伐のための冒険者たちを引き連れ、火山へと進むのだった。


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