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魔法の道具、治します!~小物好きOL、異世界でもふもふライフを過ごす~  作者: ユーリアル


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MIN-093「陳情、その理由」


「……ユキって、役人をやっていたとかではないのよね?」


「え? 普通のOL、わかんないか。ええっと、事務とか色々かな?」


 決して、お偉いさんではなかった。間違いない。

 書類だって別に重要書類を触っていたことはないのだ。


「手つきが慣れてるなあと思って。分けるのも早いじゃない?」


「あー、これは本当に似たようなことをしてただけだよ。書式が統一されてなくてさあ……」


 思い出してしまうのは、色んな請求書や報告書なんかをまとめてたシーン。

 大体、自由記入欄が良く読めないんだよねえ……。

 こっちほどじゃないっていえばないんだけど。


「教育が行き届いてるのね。羨ましい話だわ……ほんと」


「お疲れだね、一息いれよっか」


 執務室には、私とルーナだけ。

 別室では他の文官さんも絶賛お仕事中である。

 私みたいなぽっと出が、重要書類に接してていいのかなあと思ってしまう。


 ついでにと聞いてみたら「仕事が出来ればいいのよ」だって。


「氷で冷やした水に、暖めた濡れ布……贅沢だわ」


「これは効くんだよねー。どう、文官さんたちの福利厚生に買わない?」


「フクリコーセーってのはわからないけど、あって損はないかぁ……」


 大きな椅子に、深々と座る姿も綺麗なルーナ。

 イケメンと美少女は、それだけで絵になるのがズルイと思う。


 最近では、自分も見た目が悪いわけじゃないのかなあと思わせてくれるのだけど。


「よし、このぐらいで。次はっと……あら?」


「どうしたの? 陳情……って奴かな」


 たどたどしい字で書かれているのは、長めの文章。

 なんとか読み取ってみると……郊外に仮設住宅を建てて住んでいる人たちの物。


(生活を良くしてほしいって話……でもない?)


 最初は、支援を求める物かと思った。

 でも、微妙に違う……うん、ただ助けて、じゃあないねこれ。


「正式な移住許可……って、これまずくない?」


「まずくはないけど……はいともいいえとも、言いにくいわね。なにせ、税金の問題が」


 ルーナが考え込んでしまうぐらいには、ややこしい話みたいだ。

 詳しくは聞いてないけど、地球のそれとは税金1つとっても違う。

 何かの授業で、人1人に税金がとか聞いたことがあるようなないような?


「隣に、税金が入らなくなってこっちには入るというのは……ねえ」


「そういうことかー……でも、放置は無理だよね」


 頷きも、ちょっと弱気。

 実際問題、何かしてあげないといけない相手だ。

 冒険者になるのは、自由だからそっちはいいとして……。


(普通にしか暮らせない人たちには土地と仕事が必要……)


 そう、一般人は塀の内側じゃないと危なくて暮らせない。

 このあたりには、危険な怪物は多くないけど……無理がある。


「壁、広げるしかないかな?」


「それしかないわね……。一時受け入れにせよ、移住を許可するにせよ。この前の川攫いみたいに参加してもらおうかしら?」


 真面目な顔で、美少女が悩んでいる……御馳走様です。

 ってふざけてる場合じゃないよね。

 私にできることは、魔法の道具を治したりするぐらいだ。


 護衛をつけて、ダンジョンの浅い場所で探検を……無理だね。

 せいぜい、薬草採取ぐらいだろうか。


「ユキ、安く便利に使える護衛の道具なんてないかしら?」


「便利な何でも屋じゃないよ? とはいえ……何か考えないとねー」


 使い捨てじゃない……でも、便利な道具……。

 ふっと外を見れば、羽虫が窓にぶつかっている。

 地球だと、青白いライトでばちって言いそうな……ん?


「ちょーっと気を付けないといけないけど、やってみよっか」


「あまりお金がかからないといいんだけど」


「やってみないとわからないけど、畑を守るとかはできるかな?」


 必要な物を色々と考えつつ、まずは自分でなんとかしないとだ。

 一番重要なのは、ばちっとなるための、精霊さん。

 電気柵みたいなのを、作ろうと思うのだ。


「ばしってびりっと……電気鰻?」


 まだ治していない魔法の道具がある倉庫へと向かい、漁り始める私。

 上手く見つかれば良し、なければまたお願いするしかないだろうか?


 怪物に効くのかなーなんて考えつつ、倉庫を漁り続ける私だった。



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