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魔法の道具、治します!~小物好きOL、異世界でもふもふライフを過ごす~  作者: ユーリアル


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MIN-090「川底から」



「どこで拾ったか? どうしようっかなーってうそうそ。ユキたちならいいかな」


 いたずらめいた表情で、ビエラが笑う。

 懐から取り出したのは、このあたりの簡単な地図。

 指が向かう先は……川?


「潜ったの?」


「いや、釣った。直接じゃなくて、魚の腹ん中にあったのさ」


 手で表現される大きさは50センチほどってかなり大きいなあ。

 魚は、流されないようにとかで小石を食べることがあるって聞いたことがあるけど……。


「うわー、キラキラしてますっ」


「アンナにはまだ早いかな? どう、何か感じる?」


 カウンターに飛びつくような勢いで、アンナの視線は魔石に釘付けだ。

 確かに、こういうキラキラしたのって見ていて楽しいよね。


(小物を売ってる店とかって、こういうのもあったりするよね)


 有名どころだと、ヒスイかなあ?

 ああいうのも楽しいけど、お金がね…おっと。


「んー、なんだかおいしそうです」


「おいしそう? なるほど……」


「ははっ、チビは食いしん坊だな。これやるよ」


「ありがとうございますっ」


 アンナの表現に感心する私。

 ビエラは笑いながら、アンナに焼き菓子をあげている。


 微笑みつつ、そんな2人を見ながらうずら卵ぐらいの石を手にする。

 まだ角ばってるから、最近流れて来たものだと思う。


「もしかして…あ、やっぱりそうだ」


「何かわかったのか!?」


 答えずに、地図を指さす。

 それは川。さっきビエラが示した川だ。

 そこからつつっと移動し……行きつく先は、山。


「そこ、どかーんってなったお山ですか?」


「うん。今回の噴火そのものじゃないと思うけどね。私の国でも、同じような話はあるんだよ」


 光で透かしていくと、ただの石じゃなく宝石に近いような気もする。

 一番の問題は、魔石と同じ感じだってことだ。


 魔石、魔晶石とか呼ばれる不思議な石。

 ベースは普通の石で、魔力のこもった石のことを言うんだよね。 

 魔法使いが、補助というか触媒に使うのが一般的。


 私の場合は魔法の道具を治すのに使うのだけど……。


「噴火まではいかなくても、山が崩れて川に……で、ずっと流れてくるんだよ」


 自然の力は偉大だよねーと言いながら、鑑定を続ける。

 見た限りでは、ものすごい力ってわけじゃない。

 でも、その価値は別にある。


「これ1個で、大体このぐらいかなー」


「うっ、わたしのお給金が安く感じます……」


 ショックをアンナが受けるぐらいには、高価だ。

 魔法の道具の補修材と考えると妥当だけどね。

 使い捨てとしては確かに、少し高いかも。


「魔法使いの先輩冒険者が、念のために持ってるけど、使いたくないって言ってたのはこのせいか……」


「そういうことだね。私も、道具を治す金額が安かったら使えないよ」


 すごく貴重、ではないけど気軽にはどうかなあ?というレベル。

 っとと、話が逸れた。この魔石があった場所が問題だ。


「川底にあって、それを魚が食べたんだと思う。うーん、温かくなったらさらいにいく?」


「それで溺れたらまずいよなあ……」


「水場は一人で行ったらだめってお母さんに言われてます」


 そう、問題は色々だ。

 といっても、放っておくには惜しい。

 惜しいのだけど……危ない。


「正直、下手に漏れて喧嘩が起きたり、現場で争いがあると怖いんだよねえ」


「あー、そういうことかぁ……」


 しばらく悩んだのち、私が導いた結論はいつもと言えばいつものだった。

 そう、力のある人に投げるのだ、丸ごと。


「ユリウス様に丸投げしよう! 買い上げをお願いして、作業の主導もしてもらう。後、兵士じゃなく冒険者にも参加してもらう形で」


「それだと喧嘩が……ああ、さすがに兵士と一緒だと自重するか」


 そうそう、大体の人はそんな悪い人じゃないのだ。

 日々の生活が大切で、そのために必死になる。

 それが担保されてるなら、よっぽど無理はしないのだ。


「問題は、どれだけ川底にあるかだねえ……」


 完全に未知数だけど、案外あるような気がするのだ。

 火山が、あの精霊のおかげで定期的に溶岩を吹き出しているのなら……。

 周囲の土地が富むように、川にも色々流れてると思うんだよね……。



 そんなことを考えた数日後、あっという間にユリウス様は動き出した。

 試しにと兵士数名が川に向かい、目立つ川底をさらった。

 結果は、大量。予想以上に、たっぷりだ。


「でさー、ひどいんだぜ? 避難民を優先にして、生活できるようにしてやれだって」


「仕方ないよ。あの人たちは暮らす場所にも困ってるんだし。参加できない訳じゃないんでしょ?」


「そうだけどよぉ。大儲けできるところだったのになあ……」


 稼ぎ時を逃したビエラの愚痴を、苦笑しながら聞く私だった。



 



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