表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の道具、治します!~小物好きOL、異世界でもふもふライフを過ごす~  作者: ユーリアル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/126

MIN-074「果たされたかつての願い」



 精霊は、不思議な存在だ。

 精霊が宿る条件も、実際のところしっかりとわかっていない。

 自然に魔力が集まることで、精霊になるという感じではあるのだけど、魔力そのものとは違う。


 そんな状況で自分は魔法の道具、精霊が宿っているあれこれを治すことができる。

 さらに、力を込めると精霊を生む、つまりは魔法の道具にできる。


 かなりのレアな人材だという自覚もある、あるけれど……。


「国中探せば、他にもいそうな気はするんだけど」


「いたらいたで、囲われてる可能性は大きいわね。自覚、あるでしょう?」


 うっっと呻きつつ、ごまかすべく指輪に視線を戻した。

 うずらの卵ほどの大きさの石がはまった指輪だ。

 いかにも高そうだけど、石の中央に大きなヒビが入っている。


(さて、そのまま力を込めて、だと何か違う気がするんだよねえ)


 なんというか、名誉の負傷、やり遂げた証、そんな印象を受けるのだ。

 事故で割れたんじゃなく、自分自身で……ああ、そうか。


 望んで、こうなったんだ。


「お守り……身代わり?」


「そうと知らせずに、普段身に付けてる物の中に忍ばせるのは王族では聞く噂ね」


 思い付きのつぶやきを、ルーナに拾われた。

 その言葉で、感じていた違和感のようなものがカチリとはまる。


 道理で、きれいすぎる壊れ方のわけだ。


「そっか。これ、昔ユリウス様が身に着けていたって言ってた……そうなると……」


 裏のない献上品ということであれば、相当この家に恩義のある人だと思う。

 人知れずに装着者を守る魔法の道具とか、ロマンだし、素敵だ。

 もしかしたらユリウス様のお爺さんにも、細かく説明はしてない可能性もある。


(ささやかな安らぎを大事にできるものです、とか言ってそう)


 そうなると、この指輪は、指輪に宿った子は頑張ったということだ。

 壊れるだけの事件を、乗り越えてきたのだ。


「お疲れ様、かな。よかったら教えてね」


 石を撫で、そんなことを呟いていく。

 指先に魔力を流し、毛並みを整えるかのように優しく……。


「っ! 嘘……」


「わぁ……!」


 突然、指輪が震えた。

 正確には、何かが揺れながら浮かび上がってきたのだ。


 それは、騎士。人形サイズの、騎士型の精霊だ!

 目深に被った兜の隙間からは、力ある瞳の輝き。

 白いおひげの、お爺ちゃん騎士。


「私にはこのぐらいの騎士に見えるけど、ルーナは?」


「こちらでもそう見えるわ……装飾的に、ウチの物で間違いないわね。紋様に特徴がある」


 ビシっと敬礼する姿は、小さいけれど威風堂々。

 その兜、肩、盾には確かに綺麗な文様が。

 小さいながらも、しっかりとした力、意志を感じる。


「お話は聞こえるかな? 私はこの家の家系じゃないんですけど、また頑張ってもらえますか?」


「騎士が主以外の、戦友と共に、という時にする敬礼よ。元々そのつもりみたいだわ」


 見よう見まねで、こちらも同じポーズをしてみる。

 私は騎士じゃないけど、誰かを守れるなら大歓迎だ。


 おひげで見えない口元が笑顔になった気がした。


「じゃあ力を込めてっと……」


 精霊が指輪に戻ると、真っ二つだった石は微妙に融合を始めている。

 接着剤でくっつけたような断面に力を注ぐと、見る間に滑らかに溶けていくヒビ。


 綺麗になった指輪は、見事に輝いている。


「ふう……人型の精霊もいるんだね?」


「初めて見たわ。ユキ、残念そうね……」


 鋭い彼女には、見抜かれてしまった。

 個人的には、もふもふした動物型だったらベストだったんだけど……うん。


 これはこれで、とは思うんだけどね。

 私が男性だったら、大喜びだったかもしれない。


「あはは。明日は他のも見てみようかな」


 夢中になっていたから、思ったより時間が過ぎていた。

 半ば自由な役柄と言っても、ズボラな生活をしていいという訳ではないだろう。


「午前は勉強があるから、午後はまた会いましょう。さ、行きましょ」


「行くってどこへ?」


 ぐいぐいと手を引かれて向かった先は、湯あみ場だった。

 お風呂なんてなくて、沸かしたお湯をタライみたいなのに入れて、体を洗う場所だ。


 土地を考えると、これだけでも結構すごい事なんだけどね。


「私も一緒に!?」


「ええ、お湯がもったいないじゃない。メイドの手も節約できるわ」


 そう言われては、嫌だとは言いにくい。

 よく考えると、この世界に来てから誰かと一緒に裸になることがなかった。


 なんだか恥ずかしい私の前で、ルーナはそそくさと脱衣。

 こうなってくると、躊躇してるほうが恥ずかしい。


「……ユキ、今度大きくする秘訣を教えてちょうだい」


「そこまでは私、知らないよ!?」


 暴走気味のルーナの発言に、周囲のメイドさんが苦笑するのを感じた気がした。

 そんな彼女をどうにかなだめつつ、豪華な館での湯あみという時間は過ぎていく。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ