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魔法の道具、治します!~小物好きOL、異世界でもふもふライフを過ごす~  作者: ユーリアル


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MIN-052「共存を目指す・前」



「よく考えたら、あまり町の外に出てなかったな……」


「危険は多いもの。その方が安全ではあるわね」


 問題が起きているという村への旅路。

 私とルーナ、冒険者に扮した女性騎士さんは馬車の幌の中だ。

 周囲を囲むのは剣士風の男性たち。中身は兵士さん。


 一応、この地方だとちょくちょくある編成……荷物と魔法使いを中心とした冒険者、らしい。

 馬車も、ぱっと見は豪華じゃないものになってるのが細かい。


「あの時は、もうだめかと思った。アルトさんやルーナがいなかったら、どうなってたか」


「ふふ。恩を感じてくれるならそれでいいわ。それより、どう?」


 言われ、周囲を見渡す。地球ではなかなかお目にかかれないだろう光景。

 のどかな光景で、すぐそばを川が流れ……うーん、自然の力に満ち満ちてってとこだね。

 今回の目的がなければ、どこかに療養にでもいくのかなって感じだ。


「今のところは……ルーナ、髪の色変えたんだ。それも魔法?」


「どうかしら?」


 手でさらりと流れる髪の色は、青銀といったところ。

 ガラッと変えることもできるらしいけど、それだと逆に違和感が目立つだろうとのこと。

 確かに、例えば急に黒や赤とかになっても、変に思うかも。


 よく見れば、兵士さんたちも紋章とかはないものになっていた。

 考えてるんだなあと思いながら、前を向くと……遠くに壁が見えて来た。


「あれは町の壁じゃないわよ。獣避けの壁で、ああいうのを何個も作ることで、街道や中に獣が入りにくくなるの」


「へー……! あ、精霊がいる」


 壁の上に、ちょこんといった感じで鳥さんが一羽。

 鳩にも似た、かなりもふっというか、膨らんでいる。

 目が合ったと思うと、羽ばたいて馬車のそばに。


「こんにちは。何か御用?」


 優しく問いかけると、鳴き声が聞こえたような、聞こえなかったような。

 試しに指先に魔力を集めてみると、豆を食べるかのようについばまれる。

 くすぐったいような感覚に体をもじもじさせつつ、観察するけど変なところはない。


 どこかに飛んでいくかと思いきや、そのまま私のお膝の上だ。


「呼びかけたら、鳥型の精霊が集まってきたりして」


「やだ……嬉しいけど、困っちゃうな」


 くすくすと、笑いあいながらそんなことを言っていると鳩精霊がきょろきょろしだした。

 予想以上にふわもこしているその子を抱えつつ、幌から外に顔を出し……んんん?


「そこの林に何かいるような……」


「っ! 警戒! 怪物が出るかもしれないわ」


 見えないけど、何かあるという圧迫。

 そしてそれは正しかったようで、騎士が2人ほど林に向かうと何かが飛び出て来た。


 それは、アニメなんかでしか見たことのない、犬の頭の怪物。

 怒った顔で襲い掛かってくるそれらを、兵士さんたちは返り討ちにした。

 かなりあっさりしたものだけど、そのための兵士だと言われたら納得もする。


「村の近くで、あのぐらいのコボルトが出るとなると……うーん」


「あ、見て。伐採したり、焼き釜があるのはあのあたりじゃない?」


 手元でまた鳩が動き出したので、そちらを見ると……目的の場所が見つかった。

 山が切り開かれて、いかにもといった場所だ。


 直接はいかず、まずは村で話を聞いてからということになった。


「うーん……」


 村に近づき、さらに中に入ると……確かに、何かが変だ。

 すっきりしないというか、なんというのか。

 いつの間にか、鳩精霊も飛んで行ってしまった。


 ルーナたちと一緒に、村の酒場へと足を運ぶ。

 雑談をしつつ、情報収集だ。


「一見すると、平和なのだけどね」


「水瓶が倒れている……道具が違う場所にある……」


 集まった情報、不思議なことはいたずらのような次元。

 日本だと、こういう時は……そう、警告だ。

 気づいて!って言ってるような感じ。


 最初から強い手段には出ない分、ラインを超えるととんでもないことになりそうだ。


「なるほど、十分あり得るわね」


 休息もそこそこに、私たちは焼き物の現場周辺を見回りに行くことにした。

 一応、怪物退治の見回りという名目で、おでかけだ。


 馬車を宿に置き、徒歩で進む。


「ユキの土地だと、色んな焼き物があるのかしら?」


「うん、たくさんあるよ。私の名前とかしか知らないのも……色んな土地の土が違いを産むみたい。後はなんだったかな、そう、骨とかを入れると焼け方が違うとか見た気がするなあ」


 そんなことをしゃべりながら進んでいると、周囲の気配が変わった気がした。

 手にしていた、雷を打ち出す杖を握りしめ、警戒の姿勢を取る。


(視線を感じる……どこ?)


 じっと気配を探ると、何かを感じる。

 これは、精霊の気配だ。


「いた……黒い子だ」


「え? あら……」


 遅れてルーナも見えたらしい。

 私はゆっくりと黒い精霊に向かい……あ、逃げた。


「追おう」


「ええ、行くわよ」


 ウサギのような姿の黒い精霊が駆けていく。

 木々の間を抜け、さらに追いかける。


「これは……」


「思ったよりばっさりやってるわね」


 急に視界が開けたかと思うと、目の前には一面伐採された林が出て来た。

 すぐそばを流れる川面には、今は空しか写っていない。

 かつては、木々も写っていただろう光景だ。


「姫様」


「先に手は出さないように」


 珍しく、女性騎士が声を発したかと思うと……私たちの前には、たくさんの黒い子が集まってきていた。

 みんな、泣いている。黒い、精霊たちが、泣いている。


「お話を、聞かせて?」


 どきどきする気持ちを抑えつつ、そう声を絞り出すのだった。






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