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魔法の道具、治します!~小物好きOL、異世界でもふもふライフを過ごす~  作者: ユーリアル


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MIN-023「食生活も、治します?・前」


「ユキちゃん、こっちも頼むわ!」


「はいはーい。どいててくださいね」


 私は今、アイドルやってます。

 というのはまあ、冗談で。


 ちょっとだけ、高いところ……屋根の上にいます。


「あまり吹き飛ばないように、優しくお願いね」


 跨った竹ぼうきに、小さくつぶやいた。

 茶色の天馬は、いななくとそのまま滑るように飛んでいく。

 移動速度は、床で動く掃除機ぐらい。


「おーおー? うん、問題ないかな」


 そんな感想を呟く私の吐く息は、白い。

 天馬と私、そして竹ぼうきが進むとそれに押しのけられるように屋根から雪が飛んでいく。

 本当は、空を飛ぶ時の防御というか、風よけらしいんだけどね。


「このぐらいかな? 降りまーす」


 粗方屋根から雪が消えたのを確認し、軽く屋根を蹴って横に動く。

 すると、ゆっくりと地面に下がっていくのが感じられた。


 このほうきでの飛び方には2つある。

 1つが、文字通り飛んでいく状態。

 もう1つが、地面から一定だけ浮く、というものだ。


「ふう、お疲れ様でした」


「助かったよ。腰をやっちまってね」


「気を付けてくださいよー。じゃ、戻ります」


 お礼を、なんて言われる前にそそくさとお店に戻る。

 お互い様だし、対価をっていうとややこしくなる。

 どうせ、何かを買いに来てくれるだろうからそれでいいのだ。


「戻りましたー」


「お帰りなさい。他所もやってたのかしら?」


 そんな感じです、と答えつつ竹ぼうきをカウンター横に立てかける。

 竹ぼうき、とは自分は呼んでるけど、実際何が材料なんだろうか?

 結局、折れた部分は同じ木材がなく、ちょっと色違い。


「お前も、毛並みが変わったもんねえ?」


「ユキぐらいなものよ。精霊のそういうことを気にするのは」


 呆れたようなベリーナさんの声を聞き流しつつ、天馬を撫でる。

 純白、いわゆるユニコーンな天馬だと問題らしい。

 茶色なら、それなりに数がいるらしいとこの前聞いた。


 それはそれとして、やっぱり彼を見ると頬が緩むのが自分でもわかる。


「どうです? 浮くベッドの調子は」


「上々ね。色々一緒に移動できるのが便利だわ」


 カウンター裏では、すやすやと眠るウィルくん。

 ベビーバスケット、クーファンとか呼んだりするアレ。

 それが乗ったテーブル状の板には、他にも赤ちゃん用のあれこれも一緒。


 色々と実験した結果、絨毯と同じサイズまでなら浮かすことができることが判明。

 しかも、一度補給するとほぼ丸1日は浮いてるからコスト的にも十分。


 あ、そうそう。結局、私の提案した名前が採用されました。

 私からも愛してあげてほしい、なんて言われて、泣いちゃった。


「一見すると、何に使おうっていうのを何かに使うのは楽しいですけど、お金がかかりますよね」


「普通は、ね。ユキにはその力があるんだし、色々試してみると良いわ。売れるなら売ってもいいのだし」


 確かに、私の手で治されて、誰かに買われていった道具はそこそこ増えて来た。

 目立つのは、わかりやすく使い方がわかるものだけどね。

 魔力をこめると、鳥の鳴き声がする指輪なんかは、どうして売れたのかがわからない。


「あまり高くなると、取り扱いが怖いんですよね。あ、いらっしゃいませー」


 やってきたお客さんは、兵士さんだった。

 町に駐留していて、プレケースの護衛みたいなことをしてくれてる人。

 直接顔を出すのは、珍しいと言えば珍しい。


「ユリウス様より、呼び出しの連絡が来た。アルト殿が戻ってからでいいそうだが」


「わかりました。私1人ですか?」


 念のために聞いてみると、兵士さんが付いてきてくれるみたい。

 急ぎではなさそうだし、何かすごい困ったことがということでもなさそう。

 じゃあなんでだろう?と思いつつ、アルトさんの帰りを待つ。


 しばらくして帰ってきたアルトさんは、驚いたけど特についてくることはなく私はおでかけだ。


「何の用かは、教えてくれないんですか?」


「相談事がある、と聞いている」


 馬に乗せてもらい、カッポカッポと領主様であるユリウス様のお屋敷へ。

 お城ってほどではないし、砦って言葉が一番近いかな?


 門が見えてきたところで聞いてみたけど、そっけない返事。

 案外、兵士さんも細かく聞かされていないから応えられないのかも。


「えっと……お呼び出しということで」


「堅苦しいのはいい。まあ、まずは茶でも」


 見張りの兵士がいるわけでもなく、案内された先はユリウス様の私室。

 鈴の合図で、メイドさんがどこからかやってきてお茶の用意がされた。

 戸惑いつつ、座った私は一口飲んだだけでその値段を感じ、内心驚くのだった。


「茶葉の違いが判るなら、十分そうだな」


「確かに庶民ですけれど、このぐらいはわかるかと……それで、一体……」


 問いかけに、ユリウス様はしばらくの間、無言だった。

 言っていいものかどうか、悩んでる様子。


「戦いなお話であれば、アルトさんたちを……」


「そうではないから、安心してほしい。うむ……ユキ、だったな。料理は得意か?」


「はい?」


 予想外の言葉に、思わずユリウス様を見てしまう。

 こうしてみると、かなりのイケメン……じゃなくって。


 料理、料理か……つまり。


「その、落とし子として、珍しい料理が欲しい、と」


「うむ。頼めるだろうか?」


 まったくの予想外だったけど、このぐらいなら問題ない。

 庶民のものなので、お口に合うかどうかは……そう告げて了承した。


 さっそくと、厨房に案内される私だった。










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