表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の道具、治します!~小物好きOL、異世界でもふもふライフを過ごす~  作者: ユーリアル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/126

MIN-108「暑さから避難」



 その日は、朝から暑かった。

 日差しは強く、元の世界の暑さを思い出す物だった。


「ひとまず試作はこのぐらいかなあ……」


 実験用に与えられた一室で、一人つぶやく。

 答えてくれるのは、テーブルの上にいるオットセイ?だ。

 見た目は文鎮で、精霊としてぬいぐるみサイズのかわいい子がいる。


(拍手をすると、氷が出るとかどこの芸だろうね?)


 深皿に、カランコロンと音を立て、氷が産まれる。

 1つ1つは、リンゴぐらいだからかなりの物。

 木桶とかに指定したら、きっと大きい氷が産まれることだろう。


「風は、君に任せた!」


 指差すのは、壁際の棚に止まる鳥さん。

 こちらは、青い鳥でどこかでみたような……いや、やめておこう。

 単純に、強弱をつけて風を産める精霊で、本体の見た目はただの置物。


「どっちも道具そのものとしては普通で、上手く能力を絞れたなあ……」


 長老の言葉をヒントに、氷を産む魚で桶に氷を出して、試したのだ。

 結果、5個精霊を宿らせて、3つが氷を作れるものになった。

 風の方も、同じように、だ。


「この氷、空気中の水分を凍らせてるのかな? うーん、機材がないからわからないなあ」


 なんとなく、部屋の中は乾燥しているような気がする。

 今のところ、道具としての消耗もあまり多くないから、大丈夫だとは思う。

 むしろ、一度氷を作ったらそれが溶けた分で大丈夫かも?


「ま、試そうかな。ユリウス様たちの部屋なら、造りがいいからあまり隙間風もないだろうし」


 一人つぶやき、置物と文鎮を持って外へ。

 試作した道具たちは、一応網籠に入れて一緒に連れて行こう。


「魔石や魔晶石で交換式にするか……修理前提にするか、悩むなあ」


 もし、他の場所に売るなら、交換式の方がいいだろうとは思う。

 魔石とかならどこでも手に入るけど、直接治すのは近くないとね。

 もっとも、売るつもりがあるかどうか微妙なところだ。


 ユリウス様の執務室前にやってきた。

 入る前には一応、ノックだ。

 薄着だろうし、もしかしたら人払いして裸に近いかもしれない。


「どうぞ」


「ユキです。入ります」


 そっと扉を開くと、思ったよりは温い部屋の空気。

 思ったよりはしっかりした服装で、緩めている首元がセクシーっと。

 この天候だと、暑そうなんだけど…あっ。


「それ、ルーナが?」


「ああ、一応ね。閉め切るわけにはいかないから、結局微妙なんだけど」


 窓の空いた部屋の中央に、溶けかけた氷の彫像。

 廊下とかに置いてあるのを、凍らせたもののようだ。


「じゃあさっそく試しましょう。作ってみたんですよ」


「おお、それは最優先だ」


 そそくさと窓を閉め始めるユリウス様。

 私はその間に、事前に用意してもらった木桶に氷を出し始める。

 オットセイが木桶の中で過ごす間に、どんどん氷が出てくる。


 そして、近くに鳥にとまってもらい、送風開始だ。


「おお……おおお……なるほど」


「思ったより冷えますね。氷も普通じゃないのかもしれません」


 試作中、寒いぐらいだったのは気のせいではなかったようだ。

 想像以上に、部屋が冷え始める。

 気のせいか、あまり氷が溶けないような?


(君たちも何かしたのかな?)


 楽しそうに木桶の中で遊ぶオットセイ、そして踊るように風を産む鳥。

 まあ、楽しそうだからなんでもいいか……。


「これはいいね。弱くするにはどうしたらいいんだい?」


「こっちの鳥の置物がそのままずばり、です」


 ユリウス様が指先で触れ、少し弱くとつぶやくと、実際に風も弱くなった。

 細かいことに、鳥の踊りも少し変わってる。

 オットセイのほうも調整し、これで夜も冷えすぎるということはないだろう。


「出来れば屋敷の人間には、これを味わってほしいね」


「他に、見張りの兵士さんにも、冷えたタオルとか用意出来たらいいと思うんですよね」


 他の部屋にもというのは想定内なので、頷く。

 そのついでに、外でいつも頑張ってる人たち向けの提案をしてみる。

 セレスティアに戻る時とかに、よく馬に乗せてもらうから、ね。


「皆も喜ぶだろうね。許可しよう、しっかり頼むよ」


「はいっ! でも、涼しいからって引きこもっちゃいけませんからね」


 一応心配してそういうと、きょとんとした後にユリウス様は笑い始めた。

 こっそり、自分が経験済みの事だから少し怖いのだ。

 ずっと部屋にいると、外に出た時に温度差でやられちゃうんだよね。


「そういうことか……なるほど。忠告には感謝しよう」


 きりっと真面目な顔になり、そう告げる姿は領主そのもの。

 だから、見惚れたって仕方がないのだ、うん。


「ルーナたちの部屋にも設置するんだろう? そろそろ行ってあげたらどうかな」


「そうしますね。ではっ」


 廊下が暑いことを思い出し、少しげんなりするけど仕方ない。

 出来るだけ急いでという形で文官さんやルーナたちのいる部屋へ。


 そうして、粗方設置し終えた私が、みんなから神様のようにあがめられたのは別の日のお話だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ