MIN-107「行け! もふもふ精霊軍団!」
「またいたっ、そっちかっ!」
「ユキ? 一体何の……どうしたの、この状況は」
心配そうなルーナの声。
しかし、今日の私はいつもの私と違うのだ。
あいつらを、抹殺しないといけない!
「あれがいたの。おぞましい、黒いあいつらが!」
「ユキ様。ここは厨房が近いですから、仕方ないですよ」
一緒に見つけて、叫んだメイドさんもあきらめ顔。
確かに、この食料置き場な倉庫は、厨房のそば。
でも私としては、あきらめたくはない……。
だから、取れる手段を取る!
「大丈夫。私にはみんながいるから!」
気合い一発、ローズにお願いをして力を発揮してもらう。
ポンっと音がしたかと思うと、部屋の隅に一瞬火が。
(さすがローズ、やったね!)
驚くルーナやメイドさんの前を堂々と通り、焼かれたあいつ……Gの元へ。
うん、しっかり仕留めてる。ばっちりだ。
「呆れた……貴女ぐらいよ、もう……」
「いいじゃん。ルーナも嫌でしょ? みんなも好きじゃないと思う」
「それはそうですけどぉ……」
出来れば巣を見つけておきたい。
日本のソレと違って、あちこちから入ってこれるんだろうけど。
せっかく、ユリウス様からも敷地内での精霊の活動、もっと言えば道具の利用許可があるのだ。
訓練ついでに、色々やってみようと思う。
ということで、手持ちの魔法の道具をフル動員だ。
「よし、行くぞ皆の衆ー!」
「よっぽど嫌いなのかしら……」
背中に、ルーナのつぶやきを聞きながら、私はみんなと歩き出す。
ただし、人間は私一人だ。他は、ぜーんぶ精霊さん。
ずらずらと、精霊たちを引き連れて練り歩く。
どこでも潜れる精霊の力と、それぞれの持つ力を駆使して退治をお願いしている。
思ったより反応は良く、次々と仕留めているのがわかる。
(ネズミ駆除とかもありかなあ?)
調理場そばの倉庫を終え、次の部屋へ。
私に賛同してくれた料理人の一人が、声をあげつつも屍骸を回収してくれている。
「病気の元ですからね、駆除できるに越したことはないです」
「そうそう。そういうことよ」
ちょっと暴走気味の自覚はある。
でも、寝てるときに顔に、とかは絶対嫌だ。
結局、半日かけて館中のめぼしい場所をやり終えた。
その数は……あまり言いたくはない。
「ふー、終わったよ。ルーナ、何か仕事ある?」
「ピンピンしてるわね、あれだけ精霊を行使して……。魔力の方も、増えたんじゃない?」
「かな? 前よりは、道具を治してても疲れないよ」
そのまま誘われて、昼食後のティータイム。
優雅にお茶を飲む姿は、ルーナらしいというか、すごい。
何度見ても、真似できない、うん。
「それはいいことね。それこそ、領内のトラブルに魔法の道具、精霊の力を借りるかもしれない」
「出来ることなら、ね。なんでもは無理だよ」
「どうかしらね? 思ってるより、無理が効くようだけど……」
そうなんだろうか? 自分ではイマイチよくわからない。
でも、確かに精霊の反応が前より良いというのは事実だ。
お互いに言いたいことがわかるというか、お話できている感じ?
「目下の問題は、夏の暑さね。慣れているといえば慣れているけれど」
「涼しい方が仕事がはかどるよねー」
声を出して悩む私と、静かに悩むルーナ。
対照的だなあと我ながら思う光景だ。
私も、顔が悪いわけじゃないようだけど……。
(それはそれとして、冷房器具かぁ)
クーラー的な物は、直接は多分無理。
出来るとしたら、再現した通りに氷に風を当ててとなるのだろうか。
もうちょっと、うまいことやりたいよね。
「何かで覆う……うーん」
部屋や机に、精霊たちは出たままだ。
そんなもこもこたちを眺めつつ……。
ふと、木箱に入り込んだ子を別の子がつつこうとして、失敗していた。
箱に、中の子が障壁を張ったのだ。
簡易的な結界として……おお、これだ!
「障壁で、暑さも遮断する……」
「応用ができそうね、色々と」
頭のいいルーナは、つぶやきを拾って何を狙ってるかに気が付いたようだった。
涼しい生活のため、今回は彼女も協力してくれるだろう予感がした。




