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塩湖の再調査に出向く日は、生憎の曇り空だった。でも、今にも雨が振り出しそう、というほどには暗くないので、快晴よりも逆に行動しやすくていいかもしれない。
今回の調査は、前回、ディンベル邸へ調査に行ったときと違って結構な大所帯である。二倍、三倍どころの人数ではない。
「今回は結構人がいるんだね」
「前回、塩湖に行ったときの調査の続きみたいなものですから」
前回の塩湖の調査のときの調査員が、自分も、と結構な人数が希望したらしい。イエリオほど前文明に入れ込んでいる人はいなくとも、やっぱり自分の手で解明したい、という人は多いようだ。
人員が増えれば、自然と警護の人間も増える。
「――ん、あれ」
イエリオのように車内で荷物を確認できるわけじゃないので、外で作業していると、ふと、そこに見知った顔を見つける。ウィルフにお弁当を届けに行ったとき、ウィルフに話しかけていた、熊っぽい獣人の男の人だ。警護団の人なのに、どうしてここにいるんだろう。
不思議に思って見ていると、パッとこちらを振り向いた。目が合う。じっと見すぎたかな。
わたしに気が付いたウィルフの先輩が、こっちにやってきた。
「奇遇だな! あんたも調査員なのか?」
「付き添いみたいなものです。ええと……」
彼の名前が分からない。ウィルフと一緒に呼ばれてはいたけれど、自己紹介をしあった仲じゃないので、記憶に残っていない。
わたしが名前を思い出しているのに気が付いたのか、「ベイカーだ」と教えてくれた。そうだ、そんな風に呼ばれていたっけ。
「ありがとうございます、わたしはマレーゼっていいます。……ベイカーさんは警護、なんですか?」
「ああ、丁度警護依頼を受ける冒険者が集まらなくてな。たまにいるぞ、副業で冒険者業をやる奴」
なんでも、ある程度勤続年数が経ってくると、冒険者ギルドに声をかけられて、冒険者ギルドの依頼をこなす人もいるらしい。勿論、民間警護団の仕事優先らしいが。
ウィルフも何年かすれば、また冒険者の仕事するようになるのかな、なんて思ったり。いや、でも、もうやる必要がないから、戻らないのかな。
そんな会話をしていると、支度が終わったようで、先頭の車が動き出す。わたしも自分の荷車に戻らないと。
「お知り合いでしたか?」
車内に戻ると、ちょうどこちらも支度を終えたイエリオが、わたしに気が付いて声をかけてくる。どうやら車内からでも見えていたらしい。
「うん、ちょっとね。ウィルフの先輩だって」
「そうでしたか。私も後で挨拶に行きましょうかね」
少し考えた素振りを見せるイエリオ。たぶん、調査地に着いた途端、そっちに夢中になって忘れると思うけどなあ、とは言えなかった。




