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「ボクにはトゥージャって二つ上の兄がいるんだけどさ」
トゥージャ。確か、工務店に行ったとき、そんな感じの名前の人と、親し気に話していた気がする。
「トゥージャ、すごくかっこいいじゃない。同じ親から生まれたとは、思えないくらいでさ」
「……え、そう? 似てると思うけど……」
そっくりで瓜二つ! ってわけじゃないけど、兄弟の中では似ている方だと思う。わたしがそういうと、フィジャはびっくりしたように目を丸くしていた。
「全然似てないよぉ」
「うーん、フィジャが一重になったらあんな感じの顔になると思うけど」
「ああ、そういう……。そっか、マレーゼには似てるように見えるんだ」
……獣人的には、似ている、っていうのは、顔の造形とかではなく、髪の質や色、耳やしっぽの形など、そういうところで判断するんだろうか。
そういう視点で見るなら、確かに似ていないかもしれない。フィジャと違って彼の髪は赤一食だった。フィジャも髪が赤く見える部分があるけれど、あれよりはだいぶ派手な赤。
「で、まあ、話戻すけど。獣人から見ると、トゥージャはすっごくかっこよくて、皆の人気者で……でも、ボクは正反対なんだ」
つまりは不細工で嫌われ者。いや、こうしてイエリオさんたちみたいに、仲のいい友人がいるあたり、嫌われ者は言いすぎか。
「まあ、ボクは比較的早くに『料理』っていう外見とは関係ない評価基準を手に入れたから、そこまでひねくれた性格には育たなかったけどさ。でも、ボクだって、全部気にしないでいられるほど能天気でもないんだ」
周りから評価される兄を持っていたら、自然と比較対象になってしまうのだろう。そう考えると、卑屈になったり、攻撃的になったりしてもおかしくはない。
「だから、ずっと考えてたんだ。ボクは一生独り身で生きて、恋をしても報われることはなくて、もし報われたらきっとそれは騙されてるんだろうな、って」
「だ、騙されてる?」
「ほら、結婚詐欺とか、お金目当てとか」
うーん、わたしからしたら、そんな話が逆に信じられない……。だって、フィジャはどちらかというと結婚詐欺、するほうじゃない? いや、彼の性格からしてやりはしないだろうけど。
価値観の違いって、凄いな。
「正直、こうしてマレーゼが、ボクに向き合おうって頭を悩ませているのを見ると、それだけで嬉しいんだ。……なんか凄い、性格悪い言い方になっちゃったね」
ごめん、とちょっと意地悪そうにフィジャが笑う。
でも、言いたいことは分かる。
「だから、本当にいつまでも待てるよ。マレーゼがボクの――ボクたちのことで頭を悩ませるなら、好きなだけ悩んで。……まあ、流石に、ボクが死んだ後に、ボクの墓石に告白するのはやめてほしいけど」
「縁起でもないこと言わないでよ」
それは本当にそう。だって、今回の件だって、運が悪ければ死んでいたわけだし。




