第十三話
アベルを医者のところへ連れて行くと、アベルの容態はワイルドウルフに跳ね飛ばされた打撲とすり傷だけだと分かった。念のため今日一日は医者の所に泊まってから帰る事になっている。
跳ね飛ばされて脳震盪を起こしていたようだが、意外と体は頑丈だったようだ。
オレは孤児院へ行ってシスターに謝ったあと、明日アベルを迎えに行くと伝えてからギルドへと向かった。
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「ワイルドウルフですか!」
ギルドの職員に緊張が走る、あまり見ることのないワイルドウルフが比較的森の浅い場所で見つかったのだ、もし群でもいたら大変な事になる。オレは居合わせた冒険者とギルド職員を連れてワイルドウルフと出会った場所へと向かった。
ワイルドウルフの死体はそのままの状態ですぐに見つかった。ギルド職員もワイルドウルフである事を確認し死体を回収してギルドへと戻る。
ギルドマスターが状況をはなす。
「まずは他の個体がいないか調べる、暫くは森に入る事を規制しないと、もし群れがいて迂闊に森に入ったら大変な事になる。ハグレであれば良いんだが」
それから三日ほど冒険者と元冒険者で森を調べた結果、他にワイルドウルフやウルフ系の魔物は近くには居ないだろうと判断された。今回のワイルドウルフはハグレの番いだったようだ。
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「コイツは……」
俺は防具屋に来ていた、昨日ワイルドウルフに襲われた時の左腕の防具を見てもらうためだ。
「どうだい?」
防具屋は、革の破れた腕当てと俺の腕を見比べながら。
「コイツは凄いな、確かに革の方には穴が空いているのにココで完全に止めている、ゴウの腕も赤くなっている以外にケガ一つないとは」
俺は、隠れて作っていたある物を防具屋に教える事にしたのだ。
ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン
ゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロゴロ
ギューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
規則正しく聞こえる様々な音。
個人的に使っている水車小屋に来た俺は、三人を案内して小屋に入った。入り口だけから入る明かりで中はかなり暗い。
「ちょっと待っててくれ」
そう言って小屋の窓を開ける。
「よっ!」
ガタガタッ!
幾つかの窓を開け小屋の中に光が入って来ると、薄らと見えていた物がだんだんハッキリ見えて来た。
「何だ、コレは?」
ソレの一番近くに居た鍛冶屋のバルトがソレを手に取る、A5サイズ程の半透明な板。
何となく見覚えがあったのか、大工のジーンが気づいて窓に近寄った。
「何だこの窓?」
コン、コン
「ガラス…… じゃねえな?」
防具屋のギルが、バルトから板を受け取り触っていて気が付いたようだ。
「これは、アレか? ゴウの腕当てに仕込まれてた堅い板か?」
「そう、コレがあの堅いワイルドウルフの牙も通さない板の正体だよ」
「ワイルドウルフの牙を通さない?」
鍛冶屋のバルトが反応する
「バルトさん、それ割ってみて」
「いいのか?」
オレは黙って頷き肯定する。
「フンッ!」
バルトさんは板を両手に持って曲げようとするが、僅かにしなる程度でビクともしなかった。膝に当てて力を入れても変わらず、遂には足で踏んで曲げる事で何とか割る事が出来た。
「何だこりゃあ!? とんでもなく堅いぞ!」
「そこまでして割らなくても」
オレは少々呆れながら割れた板を拾い上げるとテーブルに戻し。
「これを、三人に作って貰おうと思ってる」
驚く三人に、俺は一人ほくそ笑むのであった。
アベルの怪我は大した事なくて良かった。
そして、ゴウの知識チート発動です。
次回は、二ヶ月ぶりにあの人が帰って来ます!




