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【悪逆の翼】  作者: 渦目のらりく
第三十七章 終の別れは無念では無く、野望の為に
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第376話 ニクヅメ


 体を捩りながらショーテルを引き絞っていったジル・ド・レは、(おぞ)ましい霊気と共に声を上げて突っ込んで来る羅刹(らせつ)の群れに小首を傾げる。


獅子(しし)ニ出来るからト、ソレガ(うさぎ)にも可能ダと?」


 怨霊の風がジル・ド・レを包囲したその瞬間、彼は(まぶた)をカッと見開いて魔力を解放していった――


「『ねじれ(ツィィスト)』――ッ!!」


 ジル・ド・レの周囲にまだらに開いた“捻れ”の空間。


「ひ……ィィ……ィィイイ」

「ぁ……ぅア……ィ……っ!」


 迫り飛び込んで来る怨霊の風と共に、ジャクラの肉体が捻られ、肉を千切られる。


「なニ……?」


 ――しかし、ジル・ド・レは、そう声を上げて眉をしかめる事になった。


「ぃい……っぃいいイイっ!!」

「ひぃぃぃ……ぁぁ゛ぁぁ゛――!!」

「ワタしの“捻れ”に……抗ッて……イル?」


 複数本の腕が絡まって極太になったジャクラの剛腕。肉が捻れ弾け飛んでいくのも構わず、僅かに原型を残した巨人の拳がジル・ド・レの頭上に迫る――


「なんト強引な……っ!」

「ひっ……ぃぃいいアッ!?」


 後方へと飛び退きながらショーテルを振り抜いたジル・ド・レ。そこより飛んだ斬撃がジャクラの拳を切り落とし、その背後に控えていた“捻れ”に侵入して軌道を変えると、ジャクラの全体を細切れにする。


「れロ――――ッ?!」


 ――してやったりと目を剥いたジル・ド・レ。だがすぐに覆い被さって来たのは、怨霊達の醜い叫声であった。


「オぅろろろ゛ろ――!!!」

「ぃいい……ひぃぃぃイイイ――!!」

「ここで魔力ヲ使い果タす気か、人でナシッ!!」


 ジル・ド・レを包囲した羅刹の群れが、我が身を省みずに捻れに突っ込みながら、四方八方より攻撃を加えてくる――


「……ッオノレ!!」


 残った魔力を盛大に散らすシクス捨て身の賭けに、流石に狼狽(ろうばい)したジル・ド・レは、ショーテルを振るいながら新たな“捻れ”を巻き起こそうとした――


「『ねジ(ツイす)――ッがハァ!!」

「ヒィィイイイッ!!!」

「ア゛ァァァ!! アッアッぁぁあ゛!!!」


 激しい血飛沫の歪む“捻れ”の中で、揉みくちゃになりながら渦より這い出したジャクラの拳がジル・ド・レを打った!

 ――全身を捩りながら血を噴き出し、宙を舞い上がった暗黒騎士。更には追い討ちをかける様にして、白目を剝いた男に怨霊の群れが取り巻く――


「「ぁぁぁぁ……ぅぼろ、おろろろ」」

「ク――っくィィいいッ!! コ……このッ!」


 邪気に纏われたジル・ド・レが、不透明なる生気を吸い上げられていく。失神しそうな酩酊(めいてい)感が彼を襲うが、強く歯軋りをしてしかと気を留める。

 

「こんナ無茶な無策デっワタしを仕留めラレると――ッ!!」


 振るわれた斬撃が怨霊を叩き落とし、地に墜落したジル・ド・レへと、四肢を欠損したジャクラが追撃を仕掛ける――


「――オモッタのカ!!!」


 苦痛に唸りながら眼光を上げたジル・ド・レ。彼の纏う暗黒の妖気が爆ぜる様にして力を強めると、八方より迫る悪鬼の群れが一瞬にして()()()()()――


「『渦巻き(スパイラル)』――ッ!!」


 ここに来て秘策を放った邪悪の騎士――彼を中心にして周囲一体に巻き起こった巨大な“捻れ”。それが幾重にも重なって強烈なる回転を巻き起こす“渦”となり、強引な抵抗を示していた鬼をも一呑みにしてしまった。


「勝負所ヲ……見誤っタな、愚図ョ! 貴様の悪夢ハ消滅したゾ、もう貴様に魔力は残サレていまい!」


 残る余力を振り絞り、シクス最後の策を打ち破ったジル・ド・レ。しかし彼もまた魔力をほとんど使い果たし、その全身を軋ませながら暴走する力の反動を受けて血を吐いた――

 悪鬼が悲鳴を上げて渦へと消えて肉塊となる。


「レ――――っッ!!!?」


 そう“捻れの異形”が声を上げていた。それは彼が見上げた視線の先、何処を捜しても()()()()姿()()()()()()()()()()からだった――


「ドコだ……っえフッ、く……! 何処に隠れた人でなし!」


 強烈なる大気の渦巻き。触れるものを微塵(みじん)に変えて、消え去る事も無く回転が回転を強めていく“歪み”の極みの中心で、ジル・ド・レは血走った視線を必死に周囲に向かわせた。


「何処に潜もうとムダでアルっ! コノ『渦巻き(スパイラル)』が発動スレば、キサマら“歪み”はスベテ無に修正サれるのだ!」


 怒りに震えたジル・ド・レが地団駄踏んで絶叫する。すると回転を強めていった渦巻きが、景観を全て変え去ってしまう程に強く吹き荒れていった。


「アァァああ゛ッッ!! ナニヲシヨウト無駄デアルッ!! 醜く穢らわしい下民はスベテッ! 愛しきジャンヌの為ニ、この渦巻き(スパイラル)に改変サれるのだ!! 死ねッシネッッ(LOVE)のタメニッ! このっ、ワタしノッ!! (LOVE)の為にぃイイ!!」


 ――狂乱したジル・ド・レが血の涙と共に空を見上げていくと、赤く変貌した天に現れた()が、シクスの声を垂れ落とす。


「絵に描いた様な高慢ちきだぁ……それでこそ踏み潰しがいがあるってもんだ」

「愚図メぇッ、姿を現せっ!!」

「はぁ? 俺は自分の姿を偽れねぇ、自分の周りを良く見てみろよ」


 ジル・ド・レから見えるのは、強烈なる渦によって歪み切った雑多な景観のみである。そう、彼は周囲一体を呑み込む自らの『渦巻き(スパイラル)』によって、周囲を満足に見渡せなくなっていたのであった。

 それはシクスによる目論見でも何でも無く、狂乱したジル・ド・レが引き起こした自滅であった。


「ア――――!!!?」


 そしてジル・ド・レが気付くのは、乱心した将より逃げ惑い、群れとなった騎士達を包み上げたボンヤリとした()()()()()。それは余りにも巨大で、千の白き騎士達の甲冑が忽然(こつぜん)と姿を消した様に彼には知覚された――


「転移マホ――――ッ!!?」


 ――それは未だ地に伏せたセイルが引き起こした、()()()()()()()()()であった。


 すると空に開いた夢の口が、涎を垂らして舌舐めずりをし始めた――


「ヒヒ……ヒっひひひ、どれだけ巨大なプロペラも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……?」


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↑の☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂けると意欲が湧きます。 続々とスピンオフ、続編展開中。 シリーズ化していますのでチェック宜しくお願い致します。 ブクマ、評価、レビュー、感想等お気軽に
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