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【悪逆の翼】  作者: 渦目のらりく
第三十七章 終の別れは無念では無く、野望の為に
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第371話 愛《LOVE》


「わタしはジャンヌを取り戻ス……れろ、愛し、愛されアッタ奇跡のしょうジョ……ヒょ」


 首をグルリと一周捻ったジル・ド・レが、足元をフラフラとさせながら体躯を捻っていく。その指先や眼球までもがぐるぐると捻れ、僅かに保った意識が魔力を暴走させていく。


「疑ウまでも……無い、淑女ハ私をアいしていた。うん、あレは……(LOVE)であっタニ違いない、ヒシヒシとカンじた、……アノ視線、ヮたしへの……(LOVE)


 何やらぶつくさと呟き始めた男に向けて、先ずはセイルが空へと舞い上がっていく炎の大弓を構えた。


「『烈火(れっか)の雨』――!」


 横向きに構えられ、引き絞られた大弓の弦。セイルの手に握られた漆黒の矢じりが無数に分裂し、天より注ぐ灼熱の豪雨となる。


「ギーの事ハ好キでは無かった……うん。奴と話すトキの乙女はカオが引きつっテいた。シカシ、かく言うワタシとハナス時はどウだ……その表情は満面に綻ンで(LOVE)をヒョウゲんしてイタ」

「いつまで言ってんのよこの変態、さっさと燃え溶けてしまえ!」


 頭上より迫る脅威よりも、何やら記憶の中で他の事に執心していた様子のジル・ド・レ。噛み付くように吠えたセイルの炎が彼へと降り注いだ。


「――っこれでもダメっ!?」


 ジル・ド・レは自らを含む周囲を渦の様に捻ったまま、炎の雨の中を闊歩(かっぽ)していた。捻れた大気に炎は逸れて、周囲を焦土に変えていく。


「こレからわたシ達は(LOVE)を伝エ合い、シアワセになる筈であったのだ……婚姻の契リを交ワし、子を儲ケ、仲睦まジく余生を暮らシテ……しかし、シカシ」


 だが攻防一体とした渦巻きのベールに守られたジル・ド・レに影響は及ばず、踏み込んだ先の炎の海は空へと捻り上がって消えていく。


「シカシ――ッキサマたちガそれをウバッタッ!!」

「ゥ――ッ!!?」


 何処かボンヤリと空を仰いでいたジル・ド・レの視線が、突如として激昂する様にセイルを捉えた。

 ――そして振り放たれるは、とぐろとなったショーテルの斬撃。


「キモいのよ、思い上がりのストーカー野郎!」

「ストーカー……? あヒッヒ、ソレではワタシが一方的に好意ヲ寄セテいた様では無イか、どチラかといえば、(LOVE)を寄せてイタのは乙女の方だと言ウのに」


 歪んだ刀身より放たれる斬撃は、もはや宙に輪を描くかの様な軌道を残してセイルへと迫る。

 ――しかし避けられぬ程の範囲と速度では無い。炎の翼を噴き上げて空を旋回したセイルが、斬撃を後にしてジル・ド・レへと迫る。


「可哀想な人ね……アハっ」

「カワイソウ? 私ヲ疑ってィるのか……アヒ、なれば教えテやろう……“目”だ、あのメ……アノ目がワタしニ好きだと言ってイタ、痛い程にその身を捩られていた。あれヲ見れば明白、ジャンヌがわたしに好意を寄セているのはキット周知の事実デアッタに違いない」


 空を駆けるセイルの背後、過ぎ去った筈の斬撃がキラリと輝いた。


「ん――――!?」

「『捻れ(ツイスト)』『ねジれ(ッイスト)』『ネジれ(つイすと)』『ネじれ(つイスト)』『ネジレ(ついすと)』『ねじレ(ついすト)』!!!」


 強烈なるうねりが大気を満たし、ジル・ド・レの斬撃を加速、変形させながら銀の軌道を飛び交わし始めた。


「太刀筋が全く見えな――ッアァ!!」

「ヤベェッ嬢ちゃん、高度下げろッ!」


 見る間に目に負えなくなった斬撃がセイルを切り刻んだ。思わず中空で天を向いたセイルを挟み込む様にして、更には大気の“捻れ”が彼女を呑み込もうと大口を開く――


「『ねじれ(ツイすト)』――っ!!」

「嬢ちゃん!!」


 すっかりとセイルを包囲していた捻れが、空を歪ませてセイルを巻き込んだ――


「乙女はコノワタシに燃え上がる程の(LOVE)をしてイタ……オマエタちにナニが分かる……私タチの事ナド何も知らナいくせに……片腹イタぃ」

「てめぇええオカッパぁぁあ!!」

 

 怒号を上げたシクス。しかし彼は次の瞬間に、歪んだ大気より辛うじて脱出して来た少女の姿を目撃した。


「ごめん……シクス」

「――ジャクラ飛べっ!!」


 シクスの前方よりジャクラが飛び上がって、墜落して来るセイルを掬い上げた。


「う……っ……!」


 ジャクラの掌の中で、痛みに身を捩ったセイルが血を吐いた。身体中を切り刻まれながら、捻れに呑まれた炎の翼がグチャグチャに砕けている。翼は魔力によって組み上げられた物質であるから整形は可能であるが、直ぐには飛び上がれないであろう。

 ただの一瞬、僅かに触れただけでこんな有り様なのだ。シクスは同時に、あの“捻れ”に肉体が巻き込まれた事を思うとゾッとせざるを得なかった。


「アイツ強いよ……シクス……えほっ!」

「分かってるよ……分かってるが」


 地に着地したジャクラが、やや離れた場所にセイルを寝かせてシクスの前に舞い戻った。

 無数のロチアートと魔物達に守護され始めたセイルに向かって、シクスの赤目が振り返る。


「やるっきゃねぇだろ?」

「……うん」


 舌を突き出しダガーを手元で遊ばせたシクスに、セイルは微笑みながら頷いた。


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