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【悪逆の翼】  作者: 渦目のらりく
第三十三章 死灰、未だ猛火に焼かれ精錬と
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第280話 神罰代行人の目的


 腹部を巨大な杭で穿(うが)たれた様相となったダルフは、逆十字を腹に突き立てて血を吐いた。

 潰した臓器をネチャリと付着させたまま、血塗れの十字架がヘルヴィムの肩に担ぎ上げられていく。


「それでは何も叶えられん……ましてや()に対抗しようなどぉ」


 ――()……?


 掠れ行く意識の中で、ダルフは仰向けになった格好のまま、神罰代行人の口走った言葉に疑問を持つ。


「未だ悪夢に(うな)される軟弱なガキィ……それでロードシャインを名乗るとは片腹痛いわぁぁ」


 血に濡れた髪を逆立てる男を見上げ、ダルフはその瞳に驚愕を貼り付けて思考する。


 ――この男はなんだ……どうしてロードシャインにこだわる? なんでこんなに強い? (おびただ)しい傷跡……それでもこの男は立ち上がって来る。

 そもそもヘルヴィムの目的はなんだ? 俺を侵入者(異物)と呼んで追い回した挙げ句、一方的に処刑するのかと思いきや、まるで何かを試しているかの様でもある。加えて魔物騒ぎの元凶であるラァムを最優先で処理しようとする訳でも無く、狂信者の魔の手も一度退かせている。

 先程から言う――()とは何の事だ……鴉紋の事を言っているのか? だとすればこの男の、神罰代行人の使命とは、()()()()()()()なのか?

 だとしても――


「お前、の……目的が……見え、ない」


 ダルフの結んだ唇は震え、ヘルヴィムへと語り掛けていく。


「目的……」


 するとダルフに背を向けていたヘルヴィムは勢い良く振り返って、その目尻にビキビキと血管を浮き上がらせていった。


「あろう事か、ロードシャインから出ちまった欠陥品! 汚物を! 俺は滅却するぅう!!」

「随分と、ロードシャインの血筋を愛しているんだなぁ……っ」

「ああ好きさぁ、愛しているぅぅ! ロードシャインと名の付いた以上、それは俺の()()だからなぁぁ」


 嫌味のつもりの一言であったが、ヘルヴィムは堂々としてそれを受け入れて語気を荒げている。


「血の繋がっていない……俺には、情けも容赦も無用って訳か……」

「ケッ……!!」


 そこらに血を吐き捨てたヘルヴィムは、横たわったダルフの元を離れると、聖十字をガラガラと引き摺って、魔力のコントロールに集中するラァムの元へと歩み始める。


「どちらにせよ、力なき者には用は無いぃ……」

「待て……何を、する気だ……っ」

「お前の様にぃ、理想だけは立派な凡骨がどの様な結末を追うかを、今見せてくれるぅ」

「……!」


 周囲に立ち上る魔物を蹴散らしていきながら、神罰代行人は掌を組んで俯いている少女へと向かう。


「止まれ……止まれヘルヴィム!」

「お前が弱いからこうなるのだぁ……お前が軟弱だから、薄弱だから、ひ弱だからぁあ〜」


 ダルフの押し潰れた内臓が、空いた風穴が修復していく。強烈な肉芽の超速再生によって、胸を高く跳ね上げて悶える。


「世界に反逆するかの如き無謀な野望ぅぅ……しかし蛇を打倒するというのならばぁ……それ位の逆境を跳ね除けられねぇでどうするぅ」

「……ゴっ……ぁ、ガァアアっ!!」

「心意気や良しぃ……しかし何よりも肝心な力がぁ……何を犠牲にしてでも敵を殲滅しようという、情炎にも似た飽くなき闘争心がぁ、お前には足り――」

「ヘルヴィムッッ!!!」


 突如跳ね上がり、獣の様な気迫でヘルヴィムへと迫ったダルフを――


「――――()イィッッ!!!!」

「ァッごぁ――!!?」


 振り向きざまのデカイ拳が、顔面を捉えて砕き飛ばしていた。


「――――ッ!」


 鼻もろとも陥没して、ダルフはうつ伏せに地に落ちる。

 血に汚れた拳を払ったヘルヴィムは、踵を返してまたラァムへと歩もうとした。


「――――待てっ……!」

「ぬぅう?」


 歩み出そうとした足が止まり、神罰代行人はまたその男へと振り返っていた。

 俯かせた顔面から、滝の様に流血しているダルフ。苛烈な視線だけを寄越しているその下で、ボタボタと流れていた血液が止まる。


「ほう……」


 そこに立ち上り始めた狂鬼の相を認め、ヘルヴィムはやや不気味な声を漏らして口角を上げ始めた。


「うふぅフゥフゥフっ……守るべき者の為とあらば、その力を増す……かぁぁ」


 ダルフの背から四枚の白雷が伸びていく。やがて瞬く雷光は、バリバリと音を立てて強烈なエネルギーを四散させ始めた。


「なんだ……あれは……っ」

「あれが、あんなのが。あの腰抜けの力だって言うのかよ……っ」


 それを横目に見た信者達は、何か信じられないものでも目の当たりにしているかの様な顔付きで凍り付いていくが、ヘルヴィムは一人、愉快そうに肩を揺すりながら、ゆったりと聖十字架を掲げていった。


「ならば守ってみせろ。さもなくばぁ、お前の守りたい者はぁ……すぐにこの十字架の重みで肉片と変わるであろうぅ」


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