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【悪逆の翼】  作者: 渦目のらりく
第三十三章 死灰、未だ猛火に焼かれ精錬と
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第277話 楽園に仇なす侵入者


 風荒ぶ夕刻の大通り。ダルフに向かい合う形から、激しい眼光が差し向けられている。


「お前は、何故俺を付け狙う……」


 するとヘルヴィムは、ガラガラと巨大な聖十字を引き摺りながら答えていった。


「……お前がぁぁ、侵入者だからだぁ」

「侵入者とは何の事なんだ……俺の『不死』と関係があるのか?」


 ひしゃげたままの左腕を抑え、前屈みになったダルフは表情を歪めている。


「『不死』……その能力を持った奴は、全員が侵入者だったぁ」

「……!」

「だがぁ……お前は違う。お前はイレギュラーだ。奴等と違い、後にその力を宿したぁ……メロニアスと共にお前が産まれ落ちた時、ロザリオは反応を示さなかった事を覚えているぅ」


 自らの出生に立ち会ったと覚しき発言をする男に、ダルフは眉間を寄せて訴え掛け始める。


「ならば俺が侵入者で無い事は分かっているのだろう!」

(しか)りぃ……お前が異界より()()()()()で無いという事は分かっているぅ」


 ヘルヴィムは奇怪な事に、散々ダルフを侵入者などと呼びつけて来たにも関わらず、彼が異界から来た者では無いという事を理解している様子であった。しかし彼の心火は、未だ逆巻く烈火の如く燃えている。


「ならば……!」


 足を止めたヘルヴィムが、聖十字を地に突き立てる。そして逆十字になった墓標を前に、彼は怒号に近い声音で答えていった。


「しかし、ロザリオが反応しているぅ! 遥かなる先祖より相伝して来たぁ、奇跡の聖遺物がぁあ!」

「『不死』という力を持った者を、無条件に駆逐するとでも言うつもりか?」

「違うなぁこのロザリオはぁ、恐らくはお前の『不死』に反応している訳では無い」

「……?」


 ダルフは今にも食って掛かって来そうな気迫に気圧されながら、ヘルヴィムの眼を見つめ返していた。


「聖遺物は時に時間軸をも超えるぅ……それは故にお前が、近い未来に人の領分を超える可能性を示唆しているぅ」

「人の領分……?」

「つまり、()()()()()()やも知れぬという訳だぁ」

「は、はぁ? さっきから何を言っているんだお前は?」


 ヘルヴィムはダルフを、()()()()()()()では無いというのに、()()()に成る、という妙な言い回しをする。ダルフはその違和感に小首を傾げたが、理由は次に語られた、至極単純なものであった。


「俺にとっては“侵入者”と“異物”は同義語であるというだけの話しだぁ。つまりはお前は異物に成るやも知れぬと言っているのだぁ」

「異界からの者では無いというのに、侵入者であり、異物だと……?」

「本来は(イコール)であるものが、お前という唯一無二の例外にだけは、そうでなくなるというだけの事……」


 次第に難解になって来た眉唾話にダルフは溜息をつくが、ヘルヴィムは神父として教示をするかの様に、饒舌(じょうぜつ)に語り続けた。


「我等が神罰を下すのはぁ――“赦されざる生命”……園への滞在を赦されていない()()。原初に存在し得ない筈の()()()! 何処から来たかは重要では無い、要は異物かどうかというだけの事ぉぉ……!」

「園だとか侵入者だとか、そもそも一体何の話しをしているんだ」


 このオカルトチックな話しに何時まで付き合うのか、ともダルフは思ったが、今現実に、神罰代行人という狂鬼は彼の前で道を阻んでいた。


「例外はただ一人――()()()()のみぃ……」

「ミハイル様だと……?」


 ヘルヴィムはダルフの問いにも答えずに、胸を激しく上下させながら、狂乱するかの様に声を荒げ始めた。


「……故に、故に、故に、故にゆえにゆえにユエニィイイイ――ッ!!!」

「……!?」


 突如弾ける様に憤激した男は、地に突き立てた大槌を引き抜いて、眼前で十字架を示す。


「貴様の正体を見極めるぅ。やがて楽園(エデン)に仇なす侵入者(異物)かどうか……」


 傷が開いて出血するのも構わずに、ヘルヴィムは全開で力み上げ、空に声を張り上げた。


「チィイツジョノタメニィィィイイイイ――ッッ!!!!」

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