言い分と処分。その1
「宰相以下、名前を挙げたものたちにはこの罪についての申し開きを聞こう」
側妃が全てを任せる、と言ったので国王と正妃は使用人たちからの話によって名前を聞いていた者たちを謁見の間に呼んでいた。
王城に仕えている者たちで、休日以外は毎日登城して仕事をしているとはいえ、忙しい彼らではある。だから普段であれば、彼らと国王とでスケジュールを調整して報告を聞くなどをしていたのに、本日はスケジュール調整も無く、国王の勅命で、今日この時間に謁見の間に来るように。と呼び出されたことで、宰相以下皆が嫌な予感に囚われた。
そして集まった顔ぶれを見ることなく、国王は使用人たちに確認済みだとして、側妃と第二王子・ノクティスへの仕打ちを「罪」だとして咎めた。その罪に対する申し開きを聞くと言われたが、「申し開き」と言った時点で「罪」だと確定されている、と皆が思う。
申し開き。つまり言い訳。
言い訳。つまりこの「罪」が罪では無い、と言えるのか。己の正当性を口に出来るのであれば口にしてみよ、聞いてやるから、と国王は言っている。
「その、元々陛下方の間に子が中々出来ず、それゆえに側妃を娶られたわけですが、側妃が懐妊した頃に正妃様にも懐妊の兆しがございましたから、側妃より正妃様を優遇したことは有ったかもしれませんが。それは正妃様と側妃という立場で考えれば、当然のことだとは思いますが」
申し開きを聞く、と国王が言ったのなら、自分の正当性を主張しておかねばなるまい、と宰相は口火を切った。
「それはそうである」
宰相の始まりは頷いたので宰相はそこからスルスルと言い訳を口にしていく。それは正に言い訳で「罪」を罪では無いとの主張では無いもの。
「ですから、正妃様を慮るのであれば男児を産むことは良しとはされません。故に女児であれば良いと言ったことはございます。それに男児を産むことは継承争いにも発展してしまうこともあるやもしれません。それは好ましく無い事態ですから、女児が生まれれば良い、とも思いました」
ここで宰相は愚かなことを口にした。スルスルと出てきた言葉は最早取り消せない。
それに追従するように大臣たちも頷き「その通り」などと口にする。大臣たちもかなり愚かであることを国王も正妃も悟り、ため息を溢すわけにはいかないことは分かりつつも出来ればため息を溢したかった。
だが、それをしている場合ではない。
「そうか。それはそなた達の総意か」
国王の確認に宰相たちが首肯する。
「それを使用人たちに聞かれたことも何とも思わないくらい、己の意見が正しいと思っているのだな」
これは確認というより国王の独り言のようなものだったが、宰相たちはまた首肯する。
「陛下も側妃を遠ざけておられたようですし、正妃様を優遇することは主君としても当然のこと。きちんと身分を弁えさせていたと愚考致します。であれば、我々臣下も正妃様を慮るのは当然でございます」
これは宰相ではなく大臣の一人。
国王が大切にしているのは正妃。それは臣下としても正しいことだと思うし、だから自分たちも正妃を優遇する。身分制度を重んじるこの国では当然の在り方だと胸さえ張っているが、国王もそして正妃もその身分制度を蔑ろにしているのはお前たちだ、と嘆息したかった。
「愚かな」
国王が低い声音で強く発する。
側妃やノクティスに対しての対応は不味かったものの、それでも十年以上は国王としての座に君臨してきた。貫禄も威厳もその身についている。その威厳を持って国王は宰相以下を威圧した。
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