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側妃と伯爵夫人。その6

「そのまさか、です。私もこの話は反対ですけれど。そうしないと終わりが来ない、と言われてしまえば納得するしか無いですから。父親だとは思ったこともない人ですが、正妃殿下を死なせてしまったという始まりのときの気持ちだけは、嘘じゃなかったのでしょう。だから終わらないのでしょうから。なぜ、そのことを巻き戻り現象が始まってからは忘れているのか、その辺りはさっぱり理解出来ませんけれどね」


 側妃の推測を肯定しつつ、自身の父親を冷たく評価するアイノの話は、まぁそうね、と頷くしかない。というか、父親だとは思ったこともない、とか口にしてしまう辺り、何か闇がありそうだが、尋ねるのは止めておこう、と側妃は考えた。


「でも、ロミエル嬢に記憶があって、それを皆さまご存知なのでしょう? ということは、ルナベル嬢も嫌なのでは?」


 ルナベルの気持ちを慮る側妃にアイノは告げる。


「ルナベルは承知しましたよ。記憶が無いから物語のような気持ちであることと、巻き戻り現象を終わりにしたい、というレシー国の正妃殿下や本当の祖母の気持ちを尊重したいから、と。それに婚約破棄宣言の後に婚約取り消しを宣言してもらい、でも結局は婚約解消に持ち込めるのだから、気にならない、と」


 なんて健気な、と側妃は思いつつ、最後の婚約解消に持ち込む発言に、ん? と疑問を抱いた。


「婚約解消に持ち込む?」


「レシー国のノジ公爵家の跡取りとして向こうの国に行かせますから」


 どうやら元々、アイノが公爵家の跡取りだったのにバゼル伯爵に嫁いできてしまった。それ故に生まれた子を跡取りにする、という話であったらしい。


「前回も、そんな話があったのかしら……?」


 側妃は大国の公爵家の跡取りだったかもしれない令嬢を、国外追放処分にしていた……などと知って顔を青褪めさせた。


「前回が結局のところどうだったのか、分かりませんわ。ルナベルかロミエルが跡取りの予定だったのに、ルナベルは第二王子の婚約者でロミエルも長いことこちらの国に居たようですし。でも、今回はどちらかに必ず後を継いでもらわなくてはなりません。最終的にはロミエルが跡取りの可能性もありますが、二人どちらを跡取りにしてもらっても良いように、どちらも跡取り教育を始めてもらっています」


 ということは、ルナベルが跡取りだと決まったわけでは無いのでは? という側妃の疑問が口から出るより早く。


「どちらが跡取りになるのか分からない以上、簡単に、そして勝手に、ルナベルとロミエルに婚約者を作るわけにはいかないので。ルナベルにも公爵家の跡取りの権利がある以上、ノクティス殿下と婚約しても解消されなくてはなりません。ですが、話したように婚破棄宣言してもらい、それから婚約破棄を取り消してもらう発言をしてもらうことも、また確定。婚約破棄を取り消されたら続行ということになってしまうので、婚約解消に持ち込むのです。ノジ公爵家の意向無くして婚約者は作れない。そしてこの国からノジ公爵家に婿入りする者を選出することは、ノジ公爵家が許可してない限り、あり得ないのです」


 側妃は説明をされて、ああそれもそうか、と深く納得してしまった。


「分かりました。ノクティスも記憶があります。婚約は受け入れるでしょう。破棄宣言も取り消し宣言も大丈夫だと思います。その後婚約が解消される予定も伝えておきましょう。巻き戻りを終わらせるために」


 側妃は同意し協力を受け入れる。あとは、婚約してから直ぐに破棄宣言して取り消すなどという芝居を、いつ頃行うかという話になって。


「そういえば、ロミエルが話していましたが、ジゼルという男爵令嬢と親しくなったようですが、その娘はどうしますか。関わらせれば婚約破棄の理由がスムーズに行きますが、そのような愚かなことはさせたくないでしょう? 関わらせなければ、何か婚約破棄を宣言するような事由を作る必要がありますし」


 アイノからそのように尋ねられ、側妃は少し考えてから決断した。


「ノクティスは前回の記憶があるから愚かな自分を反省しているでしょう。ですからノクティスに決めさせます。前回と全く同じ事由での婚約破棄宣言とするのか、違う理由での婚約破棄宣言とするのか。その辺りは構いませんでしょう」


 少し王族としての威厳で発言する側妃に、アイノは逆らうこともせずに任せることにした。それと時期は、側妃が王籍から除籍される予定の五年後ということになった。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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