表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/107

側妃と伯爵夫人。その2

 側妃主催のお茶会には、養母である前侯爵夫人と、その息子の妻である侯爵夫人もいた。ふとアイノは養母の話を思い出した。側妃が元々養母の家の嫡男と婚約していたことを。つまり、現在の侯爵夫人は、側妃が元婚約者だと知っているはずで、その心境はアイノでは計り知れないものなのだろうということに思い至る。とはいえ、アイノが口出すことではないし、養母は嫁である侯爵夫人を大切にしているようだから、それが表面上で有ろうとも、気にすることではないのだろう。

 その他、例の子爵夫人も居る。夫が側妃と幼馴染だといい、アイノをレシー国の公爵令嬢だったことを知っていながら、そして現在は伯爵夫人だということを知っていながら、喧嘩を売って来たあの子爵夫人。

 アイノの存在に気づいたらしく、複雑そうな表情を浮かべたが、アイノは放置した。側妃から頼まれごとをされたからといって、身分差を弁えずにやらかしたのは、あちらである。アイノが気遣う必要は無い。

 その他にも社交場で見かけ挨拶くらいは交わしたことのある夫人も何人か居る。おそらく側妃の派閥といったところか。

 アイノは派閥などには属さず中立派と言えば聞こえは良い、という程度。大体正妃と側妃が歪みあっているわけでもないから、側妃の親しい人たちと言う方が正しいのかもしれない、などと自分で自分の思考に修正をしつつ、主催者である側妃がまだ見えないので養母に挨拶をする。

 というか、こういう茶会でも身分から考えれば伯爵夫人のアイノより養母である前侯爵夫人の方が後から来るのではないだろうか。開始時刻から考えると、養母たちが到着するのが早かったということか。


「お養母様、先日ぶりですね」


 アイノが声をかけると養母が頷く。隣の養兄の妻にも挨拶をして当たり障りの無い会話を交わす。それから他の夫人方に挨拶をして。もちろん、例の子爵夫人にも挨拶だけはしておく。そうして主催である側妃がその場に見えた。


 白に近い白茶色の髪と夜空色の目をしたその人に直接会うのは初めてだということに気づいたアイノ。その目の色に合わせた濃紺のドレスに、髪色と同じ白茶色の大輪の花の刺繍が目を惹く。

 こうして直接会うまでは、子爵夫人の話の断片や手紙の文字から察するに、大人しく控えめな人を想像していた。

 だが、実際はどうだろうか。

 自分色のデイドレスを着ている側妃は、控えめというより芯の強い人に見える。その大輪の花の刺繍が、もしかしたらそう思わせるのかもしれないが、ドレスに負けないだけの品格が漂っているのだから、さすが高位貴族の令嬢だっただけのことはある。

 また、側妃という立場であることで、さらにその品格が現れたのかもしれないが。

 何にせよ、アイノが想像していた側妃像とは違う、凛とした一人の王族がそこにいた。

 出生だけなら王女であるアイノよりも余程王族らしい雰囲気を漂わせている。その側妃がアイノと目を合わせたとき、一種の緊張が二人の間に走った。


 やっぱり、側妃殿下も前回の記憶が有りそうだわ。私への手紙の内容からも察していたけれど、私を見てこんなにも緊張している。記憶が無ければ、たかが伯爵夫人にこんなにも緊張するとは思えないし、自分の息子がやらかした記憶があるからこそ、の態度にも思えるわ。


 アイノは漂った緊張を視線を逸らすことで断った側妃を見て、これからどうなるのか、と茶会を楽しみに思えた。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ