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なにか違う……?その1

 父と子としての時間である朝食時。それは毎日というわけにはいかなかったが、予知夢の時は全くそんな時間を持たなかったことを思えば、周期はバラバラでも現実の方が格段に機会が増えた。

 機会が増えて気づいた。

 これまでは、やはりこんな時間は無かったということに。

 ということは、国王は無理に自分との時間を捻出しているのだろうか。それとも今までは、こんな時間を持てていても、持つ気は無かったのだろうか。いや、その辺りのことを尋ねても答えは無いだろうな。なんとなくだが、ノクティスはそう思ってしまった。


「ノクティス。先日の兄と弟との交流の件だが、明日の午後なら機会が持てる。どうする」


「ぜひお願いします」


「余は同席出来ないが、兄弟同士の交流だ。構わないな」


 もちろんです、とノクティスが頷けば、満足そうに父は頷いた。


 そして迎えた今。


「はぁ、なんだよ、兄弟同士の交流茶会とかさぁ。今まで通りお互い付き合い無しで良いだろう」


 ノクティスと同い年の異母兄・ニルギスと、一歳下の異母弟・アイヴィスがノクティスの部屋で開かれる茶会にやって来て早々に、アイヴィスがため息と拒否を露わにした。

 ノクティスは反応が遅れる。


「付き合いが無かったから、交流するのだが」


「だから、要らないって言ってんの。なんなの、いきなり。今まで無視をしてきておいて急に仲良くしましょうって出来るわけない」


 アイヴィスはこんなあからさまに感情を剥き出しにして、自分を見ていただろうか、と夢の中のアイヴィスとの違いに目を瞬かせてしまう。

 というか、今まで無視をしてきて、とはなんだ。


「アイビー、ちょっと落ち着こうか。確かにいきなり仲良くしましょうと言われても、私もどんな企みがあるのか、と疑ってしまうけれども。それは、こんなことを言いながらも素直にやって来るアイビーにも言えることだ。君も一体何を考えているのか、私は知りたいね。私は知りたいからここに居る」


 アイヴィスをアイビーと愛称で呼びかける同い年の異母兄・ニルギスが、アイヴィスとノクティスに本音を話せ、と口にする。


「企みなんて、そんなのは無いです」


 ノクティスは、喉がカラカラになって絞り出すような声で否定する。


「だが私もアイビーも無視をしてきただろう」


 ノクティスの否定を信じられない、と目に圧を込めてニルギスが続ける。


「その、無視をしてきた、ということが既に分からないのですが」


 ニルギスの視線の圧に、言葉が喉に張り付いたように出てこないのでゆっくりと紡ぐ。

 ノクティスのその言葉に反応したのは、アイヴィスだ。


「は? 母上が側妃の子であるお前に気を遣って、何度も茶会に誘ったり兄上が気を遣って、私と共に勉強会を開くから一緒にやらないかと誘ったりしていたのを無視していただろう」


 アイヴィスの話に目を丸くしてノクティスは固まってしまう。

 側から見て驚いた顔になっているだろうノクティスに、今度は不審そうな顔をしてニルギスが話を補う。


「母上の侍女や私の侍従を、そちらの侍女や侍従を通して遣わせたはずだが」


 なんだ、それは。そんな話は知らない。


「い、いえ、知りません」


「知らない?」


「この期に及んでそんな嘘をつくなよ」


 ノクティスの否定に、怪訝な顔をするニルギスと、嘘だと決めつけるアイヴィス。


「いえ、本当に知らない。そんな話は一切聞いたことが無くて。侍従も侍女も。……あ」


 ノクティスは聞いたことがない、と言ってから不意に思い当たった。


「なんだよ、やっぱり聞いているんじゃないか。それを知らないとか嘘をついて。自分で拒否しておいて、人のせいにするなよ」


 ノクティスが思い当たったことに反応して、アイヴィスが呆れた声を出す。

 この場はノクティスの部屋だが、ノクティス付きの侍女は今回新しく配置され、侍従は部屋の片隅に立っている。ノクティス付きの護衛も。そして、二人の侍女や護衛も。

 ノクティスは、三歳から側に居た侍従に視線を向けると、侍従は顔を青褪めさせた。


「ガイ。私は知らない。どういうことだ」


 静かにノクティスが問いかければ、ニルギスもアイヴィスもノクティスの視線を追って、控えている侍従に視線を向けた。


「いえ、あの、その」


 侍従・ガイが狼狽える姿を見てニルギスが命じる。


「ジン、捕えろ」


 命じられたのはニルギス付きの護衛で、直ぐにノクティス付きの侍従であるガイを捕らえた。


「な、なにを」


 ガイは全身を床に伏せられ、その背中にジンが乗った形だったので、狼狽えたまま顔だけニルギスに向けて「なにをするのですか」と訴えたが、黙殺される。


「もしかして、ミクだけでなくガイも私を裏切っていたのか」


 ミクとは、ガイと共にノクティスが三歳の時から侍女として側におり、配置換えになった前の侍女の名前である。

 ノクティスに、父である国王の失言を直接耳に吹き込んだ、例の侍女のことだった。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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