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三年後。その8

 国王はアイノにそのように言われ些か機嫌を損ねる。息子が信用出来ないのか、と父親としての顔が現れているから。だが、一呼吸置いて冷静になれば、信用出来ないことをノクティスは仕出かしている、ということ。


「ノクティスが悪い、のであったな」


 国王は溜め息も呑み込み、ふむ、とだけ頷いた。無理に再度婚約を結ぼうとしてバゼル伯爵位を返上し、レシー国へ去られてしまうことを考えれば、レシー国との繋がりが薄くても存在する現状で良い、と判断した。

 国王がそのように判断して何も言わないことにしたこととは対照的に、正妃がルナベルに問う。


「バゼル伯爵令嬢、そなた自身はどう思っておりますか。王命として婚約を結ぼうとは思っておりません。ただ、そなたの率直な気持ちを知りたいだけ。私がこの場に居るのは、ノクティス殿の母代わりと思うてのことゆえ」


 イオノもアイノも、まさか直接ルナベルに声をかけるとは思っていなかったために、反応が遅れた。

 だがもう、正妃から問われてしまっている以上、親とはいえ王族とのやり取りに許可無く口を挟むことは出来ない。先程までの国王とのやり取りはあくまでも国王が許可を出したので、口を挟むことが出来たのだから。

 アイノが正妃に許可を得ようと口を開く間もなく、親の口出しは不可。但し、バゼル伯爵令嬢が不敬にあたるようなことを発言したとしても不問とす、と正妃が言ったため、口出しすることも叶わず、娘を見守るしかない。


「正妃殿下の尋ねごとにお返事させてもらいます」


 ルナベルはそのように前置きして頭を下げてから、正妃の質問に答える。


「私自身に記憶が残っているわけでは有りません。ですが、ロミエルから聞かされた話を信じると、ノクティス殿下に歩み寄っても、何年も先に別れを選択するような方だ、と。そのような方に改めて私が寄り添う気は有りませんでした。

ですが、ノクティス殿下が謝ってくださいました。口先だけでは無く寄り添う姿勢を見せてくださいました。ロミエルから聞いた殿下は、私の好きなものも知ることなく、話も大して盛り上がらなかった、そのような方でしたが、今は私の好きなものを存じてくださいますし、話も弾むとはいかないのかもしれませんが、それなりに楽しめております」


 ノクティスはルナベルの本心を耳にしてとても驚いた。まさか、仮の婚約期間中の自分に対して概ね好評価をもらえるとは思っていなかったので。今の自分を見てルナベルが判断してくれていることが嬉しく思った。


「そう。そう思っておるのね。では、こういう提案はどうでしょう。婚約続行ではなく、友人としてこれからの二人の関係性を築く、というのは」


 正妃の提案は、国王含め皆が呆気に取られた。だがルナベルは、それは悪くないとも思った。


「両親からは、私とロミエルのどちらがノジ公爵家の跡取りとして迎えられるか分からない。けれど、跡取りとして迎えられた方はおそらく、レシー国の貴族との婚約が調うはず、と聞かされています。元々母が一人っ子であったけれども父と結婚したので、後継は母が産んだ子を迎え入れることになる、と約束をしていたそうです。

これはあちらの祖父母から聞いた話ですが、母がこの国の父の元に嫁いできたことで、やはり公爵家の跡取りが他国へ嫁いで行ったことをアレコレと口出しする貴族が多かったそうでございます。それ故に、私かロミエルにはレシー国の貴族家との婚約を締結する形になってしまう、と。やはり大国といえども貴族間のバランスはあるようですので、これについては私たちは何も言えません。

ですので、そのことをご承知置きくださるのであれば、友人としての付き合いは承知いたします」


 実際、今のルナベルから見たノクティスは、誠実そうに見えているので、友人として付き合うのは問題無いと思ってのことだった。もし、ルナベルがあちらの家の跡取りに迎え入れられたとしたら、あちらが決めた婚約者に余計な不安を与える気はないので、その時点でノクティスとの友人付き合いは終わるだろう、ということも付け加えたが、それでも構わない、とノクティスが存外乗り気だったので、婚約者改め友人として、ノクティスとルナベルの関係性が新たに始まった。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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