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三年後。その3

「陛下方、ご無事で!」


 入室許可を受けた護衛が二人、血相を変えて入ってくる。国王が頷くと護衛たちは安堵したように息を吐き出してから、状況報告を行った。


「突如聞こえた異音はどこから聞こえてきたのか不明のため、陛下付きの侍従長が他の使用人たちに声をかけて調査に向かわれました」


 その報告の間に護衛騎士の団長がやって来て、国王と正妃の無事を確認してから、同じ場所に居たノクティスの無事も確認し、ニルギスとアイヴィスの無事の確認へと下がって行った。

 原因が分からないうちは、護衛たちも人払いをしていた侍従や侍女たち使用人も室内に居ることを進言してきたため、国王と正妃は互いに視線を交わした後でノクティスをチラリと見る。

 ノクティスが微かに頷きつつも部屋の隅に視線を向けたので、どうやら室内に入れるのは構わないが、話は聞かれたくないということのようだ、と国王は理解して、使用人たちや護衛たちに声の届かない範囲まで下がるように指示をしてから、入室を許可した。


 暫く室内も室外も騒がしいままではあったが、やがて宰相が現れ、異音の原因が不明であり、同時に城内というよりも城外の天空から聞こえてきたようだ、と城中の使用人たちや護衛たちや文官たちの意見から、おそらく雨が降っていないが雷鳴だったと思われる、という結論に達したという報告をした。

 国王も正妃も、降雨の無い雷鳴というものがある、というのは知識として知っているが、以前の王城で開催した茶会での荒天のような場合ならば分かるが、降雨も無く雷鳴が聞こえるということが本当にあるとは思っていなかったため、宰相の報告に些か納得いかないものの、それ以外の原因は無さそうだ、と受け入れた。

 宰相が下がり、使用人たちも護衛たちも雷鳴ならばどうしようもない、と判断して各々の仕事へ戻る。

 そうして先程までと同じく、国王と正妃、ノクティスとルナベル、バゼル伯爵夫妻だけが室内に残ったところで、ノクティスが国王に発言許可を求めた。


「陛下、あの音の正体に心当たりがございます」


 三年前までは、父と息子としての交流もよく行い、異母兄弟との交流も継母である正妃との交流もそれなりに行ってきていたノクティスだったが、いつからか家族としての交流を望まず、主君と臣下のような交流へと変わっていた息子の発言に、父としてではなく、国王としての顔でノクティスを見た。


「それはどういうことだ」


「バゼル伯爵夫人、私の考えは当たっていると思って良いでしょうか」


 国王の問いかけに直ぐに答えず、ノクティスはアイノに顔を向けた。アイノは「おそらく間違いないでしょう」と肯定する。その肯定を受けてから、ノクティスは五年の月日、婚約者として穏やかな関係を紡いできたルナベルを見てから、告げた。


「婚約破棄撤回の了承をありがとう。だが、改めて君との婚約を解消する」


「承りました。殿下、長い間お疲れ様でした。ありがとうございました」


 婚約破棄を突き付け、それを撤回し、さらに改めて婚約解消を申し出るノクティスの行動の意図が全く分からず、国王も正妃も説明を求めようとしたが、それより早く真剣な目をしたノクティスが、二人を見てから二人の足元に膝をついて、臣下としての礼を見せてから口を開いた。


「これから話すことは荒唐無稽な話、と一蹴されるようなものではございますが、何とぞ最後まで耳を傾けていただきましてから、ご裁可くださいますよう、よろしくお願いいたします」


 つまり、夢物語のようなことを話すが、最後まで聞いてから判断して欲しい、とのノクティスの申し出。国王は鷹揚に頷いた。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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