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元ヤン、マジギレする

 私はまだ考え続けていた。

 そういえば変態オネエもベニータ様も赤い髪だ。しかも二人ともすごく綺麗だし……。もしや親戚? でもベニータ様はゲーム版とはいえヒロインのはずでしょう? コレットさんが言ってたから。おとなしくって上品な主役級が変態と組んで嫌がらせ……ああ、やっぱ違うわ。あり得ない。

それとももしかしたら、『ラノベ』とか『ゲーム』ってみんなそんな感じなのかな?



 パンを片手に考え事をしていたら、すぐ傍で悲しそうな声がする。


「ああ、もうダメだわ! ミーシェ様がいらした」

「今日もまたムチで言う事を聞かされるのかしら……」


はあぁ!?

変態オネエとムチってどう考えても似合い過ぎだろ! 見たくねーけど。でも、他のみんなは固まって震えている。『ねぇねぇおじさん』も急に元気になったようだ。嫌な顔して嬉しそうにこちらを見ている。くっそムカつく。あいついつか締め落とす!


赤毛オネエが黒いブーツとパンツの上にフリフリの白いブラウスみたいなものを着て、手下を3人引き連れこちらに向かってやって来た。手に細い棒のような何かを持って。

ああ、ムチってそういうことね? どっちかっつーと競馬用の。怪しいコスプレなんかで出てくる長くてロープみたいな方かと思っちゃったよ。これなら届く範囲が狭いから、もしかしたら勝てるかも! 近くにあった飼葉フォークを右手でしっかり握り締めて、彼らの到着を待つ。




「ああ~ら、あたしの睡眠の邪魔をした青い子ブタちゃんは、何だか元気そうじゃな~い? まあまだ来たばかりだし、(しつけ)もなっていないようだから直々に教えてあげなくちゃね?」


何だと。変態に教わる事なんて何にも無いぞ!


「なあに? その反抗的な目は。私はあんたみたいなタイプが一番嫌い。おとなしそうな顔して直ぐに男をタラし込んで……。女ってだけで優遇されると思ったら大間違い。特に身体を武器にするようなのはね!」


 なぜか変態オネエにすんごい目で睨まれる。

失礼な! セリーナは確かに顔の割にはナイスバディだけど、中身は私だ。直ぐにタラし込めるなら誰も苦労はしてないぞ? 誰かととっくにイチャこらして『殺される』っていう運命を回避しとるわい! まあ身体を使うっていうのは恥ずかしくって当分できそうにないけれど……。


 飼葉フォークを握る手に力をこめる。得意の木刀や鉄パイプよりは長いけれど、柄の所は木でできているし刃先は鉄製だ。密かに腕立てしてたし、振り回すぐらいわけはない……はず。

 ムチをぴしぴしと反対の掌にわざとらしく打ち付けながら、オネエがこちらに向かってくる。いいよ、来な。正当防衛なら沈めちゃっても誰も文句は言わないよね?


「まあぁ、この期に及んであたしを睨むってどういうつもり? 聞き分けのないメスブタには、お仕置きが必要なようね!」


「「「ヒッッ」」」


 何人かが息を呑むけれど、私はとても冷静だ。

 振り上げられたオネエのムチが座り込んでいる私に向かって振り下ろされる! なぜかスローモーションのように感じた。




 ビシッッ


 あ、やべ。つい……。


 反射的に腕を上げて、柄の部分でムチを受け止めてしまっていた。久々の条件反射ってやつ? だって、どう見ても痛そうだもん。いくら正当防衛で倒す口実を待っているとはいえ、避けられるのがわかっていて自ら当たりに行くバカはいない。


「キーーッッ! 何なのあんた。メスブタの癖に! あたしの言う事が聞けないってどういうつもり?」



 ぶっちーん!


 やっぱダメだわ。

 こんなバカ相手におとなしくなんてしてらんない!

 すっくと立ちあがると飼葉フォークをオネエに突き出す。


「な……何よその格好は! その細腕であたし達とやるつもり?」


 のけ反って刃先を避けるオネエ。その前にザザッっと飛び出し、オネエを庇う手下達。見た所丸腰のようだけど……いけるか? この距離だとあまりわからない。でも少なくとも彼らからジュール様やグイード様のような威圧感は感じられ無い。


「この人数に歯向かうってあんた相当バカね。ブタよりも脳みそ少ないんじゃない? 何とか言ったらどうなのっっ!」


 いいよ、言ってやろうじゃないのさ!




「さっきからガタガタガタガタうっせーな! 何なんだよお前は。ブタをバカにすんなよ?……じゃなかった。この扱いは何なんだ? どうしてこんなバカな事をしている?」


 オネエが私の言葉に目を丸くしている。

 イケね、頭にきてたから猫被るの忘れてた。


「……あんた何者! 本当に貴族? 王太子をタラし込んで婚約にこぎつけそうなのは、とんだアバズレだったってわけね? そんな下品でよくもまあ! 身体だけっていうのはどうやら本当みたいね」 


「はあぁ? 婚約? 何でアタシが。違げーよ、王太子にはちゃんと立派な婚約者候補が他にいるんだよ。それに身体だけって何だ? 誰かと(ねんご)ろになった覚えはねーよ!」


 わざと難しい言葉を使ってみた。

 なのにオネエは不思議そうな顔をしている。

 それに婚約って? そんな話出た事も聞いた事も無いぞ?


「まあいいわ。綺麗な女は敵よ! アンタたち、構わないから痛めつけておしまい!」


 何だ? オネエ自分で来ねーのかよ。

 まあ、ある意味正しい判断かもな。


 ――いいよ。それなら誰から()きますか?




 私は両手で武器(もちろん飼葉フォーク)を握り直すと、正面に構えた。

 1人目の茶色い髪の細目の男がためらいがちに近づいてくる。どーしよう。こっちから行っても良いのかな? でも、私を捕まえようとわざとらしく飛び掛かってくるから、すぐに蹴とばして転ばした。武器を使うまでもない。

 あれ、でも怒った? 立ち上がるなり凄い勢いで向かって来た。


 ドスッッ


 ごめん、つい……。

 柄の部分の一番後ろでお腹をまともに突きました。

 痛くてのたうち回っているようです。

 ちなみに私、木刀でも鉄パイプでも同じことができます。



「てんめぇ!!」


 すぐさま2人目ですか。もちろん覚悟の上です。

 金髪青い目のそこそこイケメン。

 1人目と同じ位の力量なら楽勝! 

 どんとこい、でございます。


 短剣を取り出した男は敵にもならない。だって私の武器(だから飼葉フォーク)の方が長くて便利だから。あっさり払い落して柄の部分でわき腹を殴る。

 あ、もちろん木刀でも鉄パイプでも同じことができます。

 結構良い音したから、あばらが折れたかもね?



「くそっ、この(あま)!」


 まあ、お下品な。

 3人目は長い黒髪を一つに結んだやっぱりちょいイケメン。

 というより私はあんまり顔にゃあ興味がないけれど、普段凄いのを見慣れているからかみんなが普通に見えてくる。結構イケメンに免疫付いてきたのかな?

 まあいいや、今の私は体力無いから遊んでないでさっさと片付けるとしますか。


 ちょっとは学習したのか3人目の男は、その辺にあった木の棒を掴んで振り回している。いいなあ、そっちの方が木刀っぽくて使いやすそう。チェンジで……って、やっぱダメ?

 どうやらオネエは私を舐めていて顔だけのやつを引き連れて来ていたようだから、いくら木の棒を振り回されてもすんなり避けてしまえる。転生前の近所の族の方がもうちょっと手応えがあったような……。こんなに簡単に潰しちゃって良いのかな? 良いよね? そいじゃあ、遠慮なく。

 


 私が武器をそいつに振り下ろそうとした瞬間――。


「そこまでよ!」


 オネエの冷たい声が聞こえた。

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